祭り、新月、安息日 - 来たるべきものの影

2025/01/16 0

王国の子たち 主の晩餐 預言

t f B! P L
16 ですからあなた方は,食べることや飲むことで,また祭りや新月の習わしや安息日に関して,だれからも裁かれるべきではありません。17 それらの事は来たるべきもののであって,その実体はキリストに属しているのです。 (コロサイ 2:16-17)

イエスが律法契約の要求をすべて果たして罪のない死を遂げたとき、実体の到来で影が消え去るように、完了した律法は西暦33年に廃止されました。

律法契約が有効であった時代、神はイスラエル国民だけを扱っていました。その後、イスラエルと異邦人を隔てていた壁のような律法が取り除かれ、キリストによる実体の時代には、全ての国民、アダムの全ての子供たちを扱っておられます。(エフェソス 2:11-18)

律法の終わりとともに、契約違反者であるイスラエル人たちは、国を失い、西暦70年にローマ帝国により滅ぼされました。(ルカ 13:34-35, 19:41-44)
その時以来、キリストの罪のない血による新しい契約が世界中のすべての人たちに提供されてきました。(マタイ 26:27, ルカ 22:20, ヨハネ 1:29, 6:33, ヘブライ 8:7-9)

わたしたちは、キリストのもたらした実体の時代に生きていますので、だれも、キリストによって完了した影に関して裁かれるべきではありません。

ニサンの14日 (キリストの死の記念式) - ニサンの15日 (イスラエルの過ぎ越しの食事)

■ 過ぎ越しはニサンの14日とニサンの15日の2日間にわたる出来事です。
  • ニサンの14日の夕方近くにイスラエル人たちは過ぎ越しの子羊を屠り、その血を戸の周りの柱に跳ねかけ、そのあと日没後(ニサンの15日の始まり)に焼いた過ぎ越しの子羊を食べました。
  • 世の罪を取り去る神の子羊であるイエスは、ニサンの14日の午後3時くらいに刑柱上で亡くなりました。その死はニサンの14日の過ぎ越しの犠牲の子羊によって予示されていました。

■ 聖書の1日は、18:00くらいの日没から始まりますが、現在普及しているグレゴリオ暦では真夜中の0:00に1日が始まります。

こうして夕となり,朝となった。一日目である。(創世記 1:5)

聖書の日 18:00 - 夜間 - 06:00 06:00 - 日中 - 18:00
グレゴリオ暦 0:00 - 06:00 06:00 - 日中 - 18:00 18:00 - 0:00

聖書の日では、その日の夕方は、日が落ちると次の日の始まりとなります。日の変わり目は夕方ということです。ニサンの14日の夕方は、日が落ちるとニサンの15日の夜となります。

過ぎ越しは、ニサンの14日の夕方に過ぎ越しの子羊を屠り、その血を戸柱に跳ねかけ、日が沈んでニサンの15日の始めに屠った子羊を焼き、その晩に過ぎ越しの食事をしますので、ニサンの14-15日に行うイベントとなります。

西暦33年 ニサンの14日

ニサンの15日は、季節ごとの安息日で、聖なる大会が開かれます。
ニサンの21日は、季節ごとの安息日で、聖なる大会が開かれます。
無酵母パンを食べる
1415161718192021
 主の晩餐  キリストの死 過ぎ越しの食事 イスラエル出エジプト 夜間 キリストの復活 夜間 日中 夜間 日中 夜間 日中 夜間 日中 夜間 日中
ニサン 14-15
過ぎ越し
ニサン 15-21
無酵母パンの祭り

レビ 23:5-8
5 第一の月,その月の十四日,その二つの夕方の間は,YHWHに対する過ぎ越しである。 6 「『そして,この月の十五日は,YHWHに対する無酵母パンの祭りである。七日の間あなた方は無酵母パンを食べるべきである。7 その最初の日 (ニサン 15) にあなた方は聖なる大会を催す。どんな労働の仕事も行なってはいけない。8 しかしあなた方は,七日の間YHWHへの火による捧げ物をささげなければならない。七日目 (ニサン 21) には聖なる大会がなされる。どんな労働の仕事も行なってはいけない』」。
cf. 出エジプト 12:1-50, 民数記 9:1-5

過ぎ越しの子羊がニサンの14日に屠られたことは、神のメシアが、その日につまりニサンの14日に罪のない死を遂げられることの予表でした。

ニサンの14日の夜、つまりニサンの14日が始まったときにイエスが「キリストの晩餐」を制定なさった時は、過ぎ越しの子羊はまだ屠られていませんでした。ですから、「キリストの晩餐」は、無酵母パンの祭りの開始としてニサンの15日の始めに催される、無酵母パンと焼いた子羊の過ぎ越しの食事ではありません。

ニサンユダヤ人の日は日没から始まります。
1318:00-6:00 夜間6:00-18:00 日中
イエス過ぎ越しの準備に弟子たちを派遣 (マタイ 26:17-19, マルコ 14:12-16, ルカ 22:1-13), ギリシャ人たちイエスに面会を求める。(ヨハネ 12:20-50)
1418:00-6:00 夜間
イエス食事のとき弟子たちの足を洗う (ヨハネ 12:1-11), 無酵母パンとぶどう酒の主の晩餐 (マタイ 26:20-30, マルコ 14:17-26, ルカ 22:14-20, ヨハネ 13:1-14:31), 宗教権威による夜通し裁判。(マタイ 26:57-27:10, マルコ 14:27-72, ルカ 22:39-71 ヨハネ 18:1-27)
6:00-18:00 日中
YHWHに対する過ぎ越し (レビ 23:5), 過ぎ越しの準備, 子羊の屠殺, 過ぎ越しの犠牲 (Ex 12:6), 戸柱への子羊の血を跳ねかける。(出エジプト 12:21-22), 神の子羊, 過ぎ越しの犠牲, イエス刑柱上で死亡。(マタイ 27:11-57, マルコ 15:1-47, ルカ 23:1-56, ヨハネ 18:28-19:42)
1518:00-6:00 夜間
週ごと季節ごとの二重安息日
過ぎ越しの食事 (出エジプト 12:8), 無酵母パンと焼かれた子羊を食べる, 7日間の無酵母パンの祭りの始まり。(レビ 23:6)
6:00-18:00 日中
週ごと季節ごとの二重安息日
聖なる大会, イスラエル人ラメセスを出発。(出エジプト 12:21-42)
1618:00-6:00 夜間6:00-18:00 日中
イエスの復活 (マタイ 27:62-28:20, マルコ 16:1-8, ヨハネ 20:1-21:25),
神殿で大麦の束が捧げられる。
(レビ 23:9-11)


ニサンの14日のキリストの晩餐は、ニサンの15日の過ぎ越しの食事の対型ではありませんし、過ぎ越しの食事によって予表されたものでもありません。これらは、意味の異なる出来事です。

ニサンの14日の過ぎ越しの出来事が予表していたものは、ニサンの14日に起きるメシアの犠牲の死と、罪の許し、罪のない血による新し契約の発効です。

イエスは、同じニサンの14日にまもなく生じる、メシアの犠牲の死の記念式を無酵母パンとぶどう酒を用いて行いました。弟子たちのためのニサンの14日のキリストの晩餐は、生来のイスラエル人たちのためのニサンの15日の過ぎ越しの晩餐とその意義において異なります。

西暦33年 ニサン 14-15 過ぎ越し, 15-21 無酵母パンの祭り
春分に一番近い新月 (月齢 1) がニサンの1日です。
1週間は7日周期なので安息日は7日目に整列します。
1st day
2nd day
3rd day
4th day
5th day
6th day
7th day

週の安息日
3月 15 16 17 18 19 20 21
月齢 1
ニサン 1
新月
週の安息日
3月 22
月齢 2
ニサン 2
23
月齢 3
ニサン 3
24
月齢 4
ニサン 4
25
月齢 5
ニサン 5
26
月齢 6
ニサン 6
27
月齢 7
ニサン 7
28
月齢 8
ニサン 8
週の安息日
29
月齢 9
ニサン 9
30
月齢 10
ニサン 10
31
月齢 11
ニサン 11
4月 1
月齢 12
ニサン 12
2
月齢 13
ニサン 13
3
月齢 14
ニサン 14
満月
4
月齢 15
ニサン 15
週・季節
二重安息日
4月 5
月齢 16
ニサン 16
6
月齢 17
ニサン 17
7
月齢 18
ニサン 18
8
月齢 19
ニサン 19
9
月齢 20
ニサン 20
10
月齢 21
ニサン 21
季節の安息日
11
月齢 22
ニサン 22
週の安息日
4月 12
月齢 23
ニサン 23
13
月齢 24
ニサン 24
14
月齢 25
ニサン 25
15
月齢 26
ニサン 26
16
月齢 27
ニサン 27
17
月齢 28
ニサン 28
18
月齢 29
ニサン 29
週の安息日
4月 19
月齢 0
ニサン 30
20
月齢 1
イャール 1
新月
21
月齢 2
イャール 2
22
月齢 3
イャール 3
23
月齢 4
イャール 4
24
月齢 5
イャール 5
25
月齢 6
イャール 6
週の安息日
cf. A33 April lunar calendar, Hebrew year 33

ニサン
8 18:00-6:00 夜間
6:00-18:00 日中
過ぎ越しの6日前べタニアに到着。
(マタイ 26:6-7, マルコ 14:3, ヨハネ 12:1)
9 18:00-6:00 夜間
6:00-18:00 日中
10 18:00-6:00 夜間
6:00-18:00 日中
イスラエル人過ぎ越しの羊を確保する。(出エジプト 12:3-6),
ロバに乗ってエルサレムにキリストの勝利の入場。
(マタイ 21:1-17, マルコ 11:1-11 ルカ 19:28-44, ヨハネ 12:12-19)
11 18:00-6:00 夜間
6:00-18:00 日中
不毛のイチジク呪われ枯れる, 神殿を清める。
(マタイ 21:18-22, マルコ 11:12-25, ルカ 19:45-48)
12 18:00-6:00 夜間
6:00-18:00 日中
べタニア, ニサン14日に過ぎ越しの犠牲として死ぬことを表明する, ラザロの姉妹マリア、イエスの埋葬のために高価な香油をイエスに油注ぐ。
(マタイ 26:1-11, マルコ 14:1-9, ヨハネ 12:2-3)
13 18:00-6:00 夜間
6:00-18:00 日中
ニサン14日の過ぎ越し、ニサン15日の無酵母パンのお祭りの直前, 過ぎ越しの準備のため弟子たちを派遣する。(マタイ 26:17-19, マルコ 14:12-16, ルカ 22:1-13), ギリシャ人たちイエスとの面会を求める。(ヨハネ 12:20-50)
14 18:00-6:00 夜間,
晩餐のときイエス弟子たちの足を洗う。(ヨハネ 12:1-11),
無酵母パンとぶどう酒による主の晩餐
(マタイ 26:20-30, マルコ 14:17-26, ルカ 22:14-20, ヨハネ 13:1-14:31),
宗教権威による一晩中のイエスの裁判。
(マタイ 26:57-27:10, マルコ 14:27-72, ルカ 22:39-71 ヨハネ 18:1-27)
6:00-18:00 日中,
YHWHへの過ぎ越し (レビ23:5), 過ぎ越しの準備, 子羊の屠殺, 過ぎ越しの犠牲 (出エジプト 12:6), 戸柱に血を跳ねかける (出エジプト 12:21-22),
神の子羊, 過ぎ越しの犠牲, イエス刑柱上で殺害される
(マタイ 27:11-57, マルコ 15:1-47, ルカ 23:1-56, ヨハネ 18:28-19:42)
無酵母パンの祭り (レビ 23:6),
7日間無酵母パンを食べる。(出エジプト 12:15-20)
15 18:00-6:00 夜間, 週・季節-二重安息日
過ぎ越しの食事 (Ex 12:8), 無酵母パンと焼いた子羊を食べる, 7日間の無酵母パンの祭りが始まる。(レビ 23:6)
6:00-18:00 日中, 週・季節-二重安息日
聖なる大会, イスラエル人ラメセスを出発。
(出エジプト 12:21-42, レビ 23:7-8)
16 18:00-6:00 夜間
6:00-18:00 日中
イエスの復活 (マタイ 27:62-28:20, マルコ 16:1-8, ヨハネ 20:1-21:25),
大麦の束の献納 (ルカ 23:9-11)
17 18:00-6:00 夜間
6:00-18:00 日中
18 18:00-6:00 夜間
6:00-18:00 日中
19 18:00-6:00 夜間
6:00-18:00 日中
20 18:00-6:00 夜間
6:00-18:00 日中
21 18:00-6:00 夜間, 季節の安息日
6:00-18:00 日中, 季節の安息日
聖なる大会 (レビ 23:7-8)


2025年ニサン14日

2025年 ニサン, 14-15 過ぎ越し, 15-21 無酵母パンの祭り
春分に最も近い新月 (月齢 1) がニサン 1.
1st day
2nd day
3rd day
4th day
5th day
6th day
7th day

週の安息日
3月 30
月齢 0.7
ニサン 1
新月
31
月齢 1.7
ニサン 2
4月 1
月齢 2.7
ニサン 3
2
月齢 3.7
ニサン 4
3
月齢 4.7
ニサン 5
4
月齢 5.7
ニサン 6
5
月齢 6.7
ニサン 7
週の安息日
4月 6
月齢 7.7
ニサン 8
7
月齢 8.7
ニサン 10
8
月齢 9.7
ニサン 9
9
月齢 10.7
ニサン 11
10
月齢 11.7
ニサン 12
11
月齢 12.7
ニサン 13
12
月齢 13.7
ニサン 14
週の安息日
4月 13
月齢 14.7
ニサン 15
満月
季節の安息日
14
月齢 15.7
ニサン 16
15
月齢 16.7
ニサン 17
16
月齢 17.7
ニサン 18
17
月齢 18.7
ニサン 19
18
月齢 19.7
ニサン 20
19
月齢 20.7
ニサン 21
週・季節
二重安息日
4月 20
月齢 21.7
ニサン 22
21
月齢 22.7
ニサン 23
22
月齢 23.7
ニサン 24
23
月齢 24.7
ニサン 25
24
月齢 25.7
ニサン 26
25
月齢 26.7
ニサン 27
26
月齢 27.7
ニサン 28
週の安息日
4月 27
月齢 28.7
ニサン 29
28
月齢 0.3
ニサン 30
29
月齢 1.3
イャール 1
新月
30
月齢 2.3
イャール 2
cf. Moon Phases April 2025, 2025年4月 満月カレンダー

ひと月は、新月から次の新月までの朔望周期の日を数えます。平均で29日12時間44分 (29.5 日) かかります。聖書では、ひと月を29日か30日と数えて、通例30日としています。

月齢による12の月の1年は、太陽周期の1年365 1⁄4日より11日くらい短くなります。季節の巡りは太陽周期年によりますから、月齢カレンダーを季節の巡りに合わせる必要が生じます。それで月と太陽の相互関係年 (lunisolar, or bound solar, years) と呼ばれる方式が用いられて、月は月齢で、年は太陽周期を用い、月齢による12の月の一年を季節とリンクした太陽周期に合わせるようにしています。その方法は、2-3年ごどに月齢の12の月の1年の短さを補うため不足分の日数を追加することによって行われています。 cf. ➡ うるう年

月齢は 0 から 29。 月齢 0 は月はありません。 月は全く見えません。
月齢 1 は、最初に見える薄い三日月で、新月です。
新月が週の1日目 (the 1st day) になると、ニサンの14日は7日目 (the 7th day) の週の安息日となります。

2025年3月 - 4月 月齢と月相
満月は必ずニサン14-15日に生じます。
1st day
2nd day
3rd day
4th day
5th day
6th day
7th day

安息日
3月 23
月齢 23.1
アダル 23
24
月齢 24.1
アダル 24
25
月齢 25.1
アダル 25
26
月齢 26.1
アダル 26
27
月齢 27.1
アダル 27
28
月齢 28.1
アダル 28
29
月齢 29.1
アダル 29
不可視
週の安息日
3月 30
月齢 0.7
ニサン 1
新月
31
月齢 1.7
ニサン 2
4月 1
月齢 2.7
ニサン 3
2
月齢 3.7
ニサン 4
3
月齢 4.7
ニサン 5
4
月齢 5.7
ニサン 6
5
月齢 6.7
ニサン 7
週の安息日
6 4月
月齢 7.7
ニサン 8
7
月齢 8.7
ニサン 9
8
月齢 9.7
ニサン 10
9
月齢 10.7
ニサン 11
10
月齢 11.7
ニサン 12
11
月齢 12.7
ニサン 13
12
月齢 13.7
ニサン 14
週の安息日
4月 13
月齢 14.7
ニサン 15
満月
季節の安息日
14
月齢 15.7
ニサン 16
15
月齢 16.7
ニサン 17
16
月齢 17.7
ニサン 18
17
月齢 18.7
ニサン 19
18
月齢 19.7
ニサン 20
19
月齢 20.7
ニサン 21
週・季節
二重安息日
4月 20
月齢 21.7
ニサン 22
21
月齢 22.7
ニサン 23
22
月齢 23.7
ニサン 24
23
月齢 24.7
ニサン 25
24
月齢 25.7
ニサン 26
25
月齢 26.7
ニサン 27
26
月齢 27.7
ニサン 28
週の安息日
4月 27
月齢 28.7
ニサン 29
28
月齢 0.3
ニサン 30
不可視
29
月齢 1.3
イャール 1
新月
30
月齢 2.3
イャール 2
cf. Moon Phases April 2025, 満月カレンダー2025年4月

新月は月齢の月の始まりとなります。新月の日は祭日で安息日のような行事ですが、安息日ではありません。週の安息日の周期は月が替わるごとに新月の日によって中断することはありません。

月が替わるたびに新月の日が7日周期の週の最初の日になるのではありません。 ですから週の最初の日は、月の最初の日の新月の日によってリセットされることなく月は替わって行きます。

もともとイスラエルにおいて週の日は1日から7日まで数で呼ばれていました。昔から世界中の人々は週7日の周期で暮らしていました。異教の国では週の日は、神々の名前の名前で呼ばれていました。
Names of the days of the week

イスラエルの祭り

もともとイスラエルにおいて年の月は1月から12月まで数で呼ばれていました。
(ヨシュア 4:19; 民数 9:11; 2Ch 15:10; エレミヤ 52:6; 民数 33:38; エゼキエル 8:1; レビ 16:29; 1列王 12:32; エズラ 10:9; 2列王 25:1; 申命 1:3; エレミヤ 52:31)

バビロン捕囚前、以下の4つの月だけに名前が付けられていました。
アビブ (Abib) 1月 (出エジプト 13:4), ジブ (Ziv) 2月 (1列王 6:37), エタニム (Ethanim) 7月 (1列王 8:2), ブール (Bul) 8月 (1列王 6:38)

イスラエル人たちは2つのカレンダーを使っています。ひとつはアダムからの非祝祭用の農事カレンダーで、他の一つは出エジプト以降の祝祭用の祭事カレンダーです。両方とも神により認められています。

春の季節のアビブの月に起きた出エジプトのとき、神はアビブの月を1月としましたが、これまで使われてきた秋から秋の農事カレンダーを無効にしませんでした。

祭事カレンダーにおいて春のアビブの月は宗教的な行事の第1の月と見なされています。他方、農事カレンダーでは秋のエタニムの月が1年の最初の月と見なされています。それぞれの1月は他の7月となっています。(祭事の1月は農事の7月、農事の1月は祭事の7月です。)

バビロン捕囚の後、背教のイスラエル人たちは、バビロニア人の月の名前を受け入れるようになりました。バビロン捕囚以降の月の名前のほどんどは聖書中には見られずタルムードやユダヤ人史家ヨセハスやその他の作品に見られます。

イスラエル人の3大祭り
  1. 無酵母パンの祭り (出エジプト 23:15)
  2. 後にペンテコステの祭りと呼ばれる7週の祭り (出エジプト 23:16, 34:22)
  3. 仮小屋 (booths), 天幕 (Tabernacles) または 取り入れ (Ingathering) の祭り
    (レビ 23:34-36)
律法契約は、すべての男子に毎年の3大祭りの間 YHWH の前に出るように求めていました。
(申命 16:16)

祭事と農事 成就
1月 (祭事)
7月 (農事)
アビブ Abiv (ヘブル)
ニサン (バビロン)
3-4月 (今日)
14 過ぎ越し
15-21 無酵母パンの祭り
16 大麦の束の献納
キリストの犠牲の死と復活
2月 (祭事)
8月 (農事)
ジブ Ziv (ヘブル)
イャール (バビロン)
4-5月 (今日)
小麦
3月 (祭事)
9月 (農事)
シバン (バビロン)
5-6月 (今日)
6 7週の祭り (ペンテコステ)
ニサン16日から50日目
早生イチジク
クリスチャン会衆の誕生
天にあるものの取入れ開始
4月 (祭事)
10月 (農事)
タンムズ (バビロン)
6-7月 (今日)
ぶどうの初成り
5月 (祭事)
11月 (農事)
アブ (バビロン)
7-8月 (今日)
夏の果物
6月 (祭事)
12月 (農事)
エルール (バビロン)
8-9月 (今日)
ナツメ, ぶどう, イチジク
7月 (祭事)
1月 (農事)
エタニム Ethanim (Heb)
ティシュリー (バビロン)
9-10月 (今日)
1 トランペット吹奏
10 贖罪の日
15-21 仮小屋の祭り (取入れ)
22 聖会 Solemn assembly
土地を耕す
キリストの1000年期
大いなるヨベルの開始
地にあるものの取入れ開始
8月 (祭事)
2月 (農事)
ブール Bul (ヘブル)
ヘシュバン (バビロン)
10-11月 (今日)
オリーブ
9月 (祭事)
3月 (農事)
キスレーブ (バビロン)
11-12月 (今日)
家畜の群れ避寒
10月 (祭事)
4月 (secular)
テベット (バビロン)
12-1月 (今日)
野菜の成長
11月 (祭事)
5月 (農事)
シュバット (バビロン)
1-2月 (今日)
アーモンド開花
12月 (祭事)
6月 (農事)
アダル (バビロン)
2-3月 (今日)
柑橘類
挿入月
13月 (祭事)
アダルⅡ (バビロン)
3月 (今日)
第二アダル 2-3年に一度、月暦を季節に合わせるため挿入される。


アビブ, ジブ, シバン, エタニム, ブール

関係する出来事と特徴
アビブ
3-4月
祭事カレンダーの第1の月
農事カレンダーの第7の月
出エジプトの時、YHWH神により出エジプトが起きた月が祭事カレンダーの第1の月に定められました。(出エジプト 12:1, 2; 13:4)
バビロン捕囚の後、月名アビブはニサンに置き換えられました。
毎年3月21の春分の日にいちばん近い新月(月齢1の最初に見える三日月)がニサンの1日です。

後期、つまり春の雨が降り始め、ヨルダン川が氾濫する。 (ヨシュア 3:15)
この月に大麦の収穫が行われ、その数週間後に小麦の収穫が行われます。

ニサンの月の最初の祭りは過ぎ越しです。最初にエジプトで行われました。その月の14日の過ぎ越しの子羊の犠牲を含む行事です。(出エジプト 12:2-14; レビ 23:5; 申命 16:1)
イスラエル人は14日の午後遅く過ぎ越しの子羊を屠り、夕方その子羊の血を戸柱に振りかけ、それから1時間くらいあと日が沈んで15日に入り、過ぎ越しの食事を食べました。それはニサンの15日から21日まで1週間つづく無酵母パンの祭りの始まりです。
■ 過ぎ越しの子羊は、世の罪を取り除く神の子羊であるキリストの犠牲を予表しています。イエスはニサンの14日に刑柱上で犠牲の死を遂げました。
■ 無酵母パンの祭りは、クリスチャンのパン種のない生き方を表しています。
1コリント 5:6-8
6 あなた方が誇りにしている事柄は良くありません。あなた方は,少しのパン種が固まり全体を発酵させることを知らないのですか。7 古いパン種を除き去りなさい。あなた方は酵母を持たない者なのですから,それにふさわしく新しい固まりとなるためです。実際,わたしたちの過ぎ越しであるキリストは犠牲にされたのです。8 ですから,古いパン種や悪と邪悪のパン種を用いず,誠実さと真実さの無酵母パンを用いて祭りを行なおうではありませんか。


16日には、大麦の初穂の捧げものがなされました。
(出エジプト 12:15-20; 23:15; 34:18; レビ 23:6-11)
大麦の初穂の捧げものは、ニサンの16日のキリストの復活を予表しています。
ジブ
4-5月
祭事カレンダーの第2の月
農事カレンダーの第8の月
大地が開花と花で「明るく」なる時期にあたることから、「ジブ(輝き)」と呼ばれるようになりました。
大麦の収穫は丘陵地帯にまで達し、低地では小麦の収穫が進行中です。

ガリラヤの丘は花盛りとなり、この月に乾季が始まり、早朝の雲はやがて日中の暑さで消えていきます。 植物は夜露に依存し、乾季は10月までつづきます。
(ホセア 6:4; イザヤ 18:4)

ソロモンが神殿の建設に着手したのはジブの月で、約500年後の同じ月にゼルバベルが神殿再建の作業に着手しています。 (1列王 6:1; エズラ 3:8)
シバン
5-6月
祭事カレンダーの第3の月
農事カレンダーの第9の月
この月には、年間 3 つの祭りのうちの 1 つが開催されます。シバンの6日には、ペンテコステの祭りが行われます。
ペンテコステはギリシャ語で「50日目」を意味します。
取り入れの祭または七週の祭とも呼ばれます。
(出エジプト 23:16, 34:22)

ペンテコステの祭りは、大麦の束が捧げられたニサン16日から7週間が経過した50日目に祝われることになっていました。(レビ 23:15, 16)
それは大麦の収穫が終わって、大麦よりも遅く実る小麦の収穫が始まった頃でした。(出エジプト 9:31, 32)
イスラエル人は、ニサン16日に大麦の初穂が主に捧げられるまで、小麦の収穫を始めることは許されませんでした。

ニサン16日には、大麦の収穫の初穂の束が捧げられました。
小麦の収穫の初穂の場合、ニサン16日から50日後のシバン6日に、2つの発酵させた焼いたパンの形で捧げられました。
これらは、ニサン16日のキリストの復活と、ペンテコステの日であるシバン6日のクリスチャン会衆の誕生を予表していました。
まず、キリストの罪のない犠牲がニサン16日に捧げられます。
そのニサン16日にイエスは復活しました。これは、イエスの罪のない犠牲の死をYHWH神が承認したことの有形の証拠です。

その後、罪深い人類の初穂は、ニサン16日から50日後のシヴァン6日に受け入れられることになります。
二つの発酵パンは、キリストを信じる生来のユダヤ人と異邦人という二つの罪人グループを表しています。
西暦33年のペンテコステの日に、エルサレムの階上の部屋に集まったイエスの弟子120人に聖霊が注がれました。このようにして、王国の子たちの会衆が誕生しました。 (使徒 1:13-15)


イスラエル人がシナイ山に集まり、律法を受け取ったのは、3月 (シバン) の初めでした。 (出エジプト 19:1)
このシバンの月に、彼らは律法契約を結び、一日のうちに一つの国家が誕生しました。

同様に、キリストの弟子たちはこの月のペンテコステの日に新しい契約に入りました。
人類の初穂として地上から買い取られた王国の子たちの会衆は、シワンのこの月にシナイ山で形成されたイスラエルの場合のように、一日で生み出されました。

彼らは人類の初穂と呼ばれています。なぜなら、彼らは新契約の恩恵を最初に受ける者たちだからです。ペンテコステは、古代イスラエル国家の場合のように、新しい国家が一日で誕生した日です。

王国の子たちはガラテヤ6:16で「神のイスラエル」と呼ばれています。
(ヘブライ 12:18-24, 啓示 14:1-5, ガラテア 6:15-16)
エタニム
9-10月
祭事カレンダーの第7の月 (1列王 8:2)
農事カレンダーの第1の月
バビロン捕囚後の名前はティシュリーで意味は年の始まり。ティシュリー1日は、今でもユダヤ人にとって新年の日、またはロシュ ハシャナ 「年の始まり」として祝われています。

毎月の第1日トラペット吹奏の日でした。(レビ 23:24; 民数 29:1) 各月の新月はトランペットの吹奏で布告されましたので、このエタニム月の新月の日は増し加わえられた、あるいは広範なトランペットによる布告の日であったようです。(民数 10:10)
広範なトランペットによる布告は、キリストの帰還を連想させます。
(マタイ 24:31, 1コリント 15:52, 1テサロニケ 4:16)



エタニム10日は、年ごとの贖罪の日でした。(レビ 16:29, 30; 23:27; 民数 29:7)
エタニムで行われる仮小屋祭り(取り入れの祭)は、「年が去って行くころ」または「年の変わり目」に行われると言われています。
(出エジプト 23:16; 34:22)
この月で年の収穫はほぼ完了し、農事年度が終了しました。
このエタニムの月に、年の変わり目が起こります。 新年は前年の取り入れの祭から始まります。収穫を祝う楽しい新年祭は15日から21日まで1週間続きます。
その後、22日に聖会 (solemn assembly) が開かれます。(レビ 23:34-36) このように、エタニム月の大部分はこれらの祭事で占められています。
これは「地上にあるもの」、すなわち地上で永遠の命を回復する者たちの取り入れを予示しています。(エフェソス 1:10, コロサイ 1:20)


このエタニムの月の10日、贖罪の日に、50年に1度のヨベルの年が始まりました。(レビ 25:8-12)
キリストの1000年統治の大ヨベルは、エタニムの月に始まるように見えます。


古代人はエタニムと呼ばれる月を年の最初の月として使っていたようです。ですから、アダムの人生の始まりはこの月だったようです。

箱舟の中ですでに10か月以上を過ごした後、ノアは第1の月(後にエタニムと呼ばれる)の最初の日に箱舟の覆いを外し、洪水の水が地面から引いているのを見ました。 (創世記 8:13)

それから1300年以上後、ソロモンはエルサレムの完成した神殿をエタニムの月に落成しました。 (1列王 8:2; 2歴代 5:3)
紀元前587年にエルサレムが破壊された後、エタニムの月にユダは完全に荒廃しました。
それから70年後、まさにこの同じ月に、解放されたイスラエルの捕囚者たちはバビロンから帰還し、エルサレム神殿の再建を開始しました。 (エズラ 3:1, 6)

証拠はまた、イエスの誕生、バプテスマ、油注ぎがこの月に起こったことを示しています。
ブール
10-11月
祭事カレンダーの第8の月
農事カレンダーの第2の月
ブールは秋の雨季が始まる頃にやって来ました。
(ダニエル 11:14; ヨエル 2:23; ヤコブ 5:7)
この月に大麦と小麦の種まきがなされ、北ガリラヤではオリーブの収穫が行われました。
羊飼いたちは、寒くて雨の多い冬の間、羊の群れを野原から家へ連れ戻し、屋根のある場所に避難させました。

創世記第7章11節と第8章14節によれば、ノアの時代の大洪水は「第2の月(ブール)」の17日に始まり、太陰暦の同月27日、つまり1年と10日後には地球は乾いていました。
これに関して、ヨセフス(ユダヤ古代誌、I、80 [iii、3])は次のようにコメントしています。「この大惨事は、ノアの統治の第600年(600年)、エジプトで彼らが従っていた暦の規則に従って、マケドニア人によってディウス、ヘブライ人によってマルスアンと呼ばれていた第2の月に起こりました。"
したがって、ヨセフスによれば、ノアの時代の第2の月はブール、またはマルヘシュワン(ヘシュバン)月に対応していました。

ソロモンがエルサレムの神殿の建設を完了したのはこの月でした。
(1列王 6:38)


例年の祭事
  • 過ぎ越し, アビブ (ニサン) 14, キリストの罪のない犠牲の死
  • 無酵母パンの祭り, アビブ (ニサン) 15-21, パンだねのないクリスチャンの生き方
  • 7週の祭り, ペンテコステ, シバン 6, 新しい契約の発効,
    王国の子たちの会衆の発足, 人類の初穂, 神のイスラエル
  • トランペット布告, エタニム (ティシュリー) 1, キリストの帰還
  • 贖罪の日, エタニム (ティシュリー) 10
  •  50年ごとのヨベルの年の開始 (大いなるヨベルの開始を示唆)
  • 仮小屋の祭り (取り入れの祭り), エタニム (ティシュリー) 15-21, 地にあるものの取り入れ, キリストの1000年期の祝福

定期的な祭事
  • 新月
  • 週の安息日
  • 安息年 (7年ごと)
  • ヨベルの年 (50年ごと)


参照聖句

実体が到来したとき、影は終わりました。
新しい契約は世に救いをもたらします。
ユダヤ人の祭事 - 過ぎ越し、無酵母パンの祭り、ペンテコステ、仮小屋の祭り
エルサレムでのイエスの最後の宣教

実体が到来したとき、影は終わりました。

ルカ 13:34-35
34 エルサレム,エルサレム,預言者たちを殺し,自分に遣わされた人々を石打ちにする者よ―めんどりが一かえりのひなをその翼の下に集めるように,わたしは幾たびあなたの子供たちを集めたいと思ったことでしょう。それなのに,あなた方は[それを]望みませんでした。35 見よ,あなた方の家はあなた方のもとに見捨てられています。あなた方に言いますが,『YHWHのみ名によって来るのは祝福された者』と言うときまで,あなた方は決してわたしを見ないでしょう」。

ルカ 19:41-44
41 そして市の近くに来た時,[イエス]はそれを眺め,それのために涙を流して,42 こう言われた。「もしあなたが,そうですあなたが,この日に,平和にかかわる事を見分けていたなら―しかし今,それはあなたの目から隠されているのです。43 あなたの敵が,先のとがった杭でまわりに城塞を築き,取り巻いて四方からあなたを攻めたてる日が来るからであり,44 彼らは,あなたとあなたの中にいるあなたの子らを地面にたたきつけ,あなたの中で石を石の上に残したままにはしておかないでしょう。あなたが自分の検分されている時を見分けなかったからです」。

ヘブライ 8:7-9
7 もしその最初の契約がとがめるところのないものであったなら,第二のもののための余地が求められることはなかったでしょう。8 ところが,こう述べて民をとがめておられるのです。「『見よ,[その]日が来ようとしている』と,YHWHは言われる。『そしてわたしは,イスラエルの家およびユダの家と新しい契約を結ぶ。9 それは,わたしがその手を取って[彼らの父祖たち]をエジプトの地から連れ出した日にその父祖たちと立てた契約によるのではない。彼らはわたしの契約のうちにとどまらなかったからである。そのためわたしは彼らを顧みることをやめた』と,YHWHは言われる」


コロサイ 2:16-17
16 ですからあなた方は,食べることや飲むことで,また祭りや新月の習わしや安息日に関して,だれからも裁かれるべきではありません。17 それらの事は来たるべきもののであって,その実体はキリストに属しているのです。


ローマ 14:5-9
5 ある人は,ある日がほかの日に勝ると判断し,別の人は,どの日もほかのすべての日と同じであると判断します。おのおの自分の思いの中で得心していなさい。6 日を守る者は,それを主に対して守ります。また,食べる者は,主に対して食べます。その人は神に感謝をささげるからです。そして,食べない者は,主に対して食べません。それでもその人は神に感謝をささげます。7 事実,わたしたちはだれ一人,ただ自分に関してのみ生きるのではありません。また,だれ一人,ただ自分に関してのみ死ぬのでもありません。8 わたしたちは,生きるなら主に対して生き,死ぬなら主に対して死ぬからです。それゆえ,生きるにしても死ぬにしても,わたしたちは主のものです。9 死んだ者にも生きている者にも主となること,このためにキリストは死に,そして生き返ったからです。

新しい契約は世に救いをもたらします。

マタイ 26:27-28
27 また,杯を取り,感謝をささげてからそれを彼らに与え,こう言われた。「あなた方はみな,それから飲みなさい。28 これはわたしの『契約の血』を表わしており,それは,罪の許しのため,多くの人のために注ぎ出されることになっているのです。

ルカ 22:20
20 また,晩さんがすんでから,杯をも同じようにして,こう言われた。「この杯は,わたしの血による新しい契約を表わしています。それはあなた方のために注ぎ出されることになっています。

ヨハネ 1:29
29 次の日,彼は,イエスが自分のほうに来るのに目を留めて,こう言った。「見なさい,世の罪を取り去る,神の子羊です!

ヨハネ 6:33
33 天から下って来てに命を与える者,それが神のパンだからです」。

エフェソス 2:11-18
11 それゆえあなた方は,肉について言えば,自分たちが以前は諸国民の者であったことを覚えておきなさい。あなた方は,手で肉になされた「割礼」と呼ばれるものによって,「無割礼」と呼ばれていました― 12 そのころあなた方はキリストを持たず,イスラエルの国家から疎外され,約束にかかわる[数々の]契約に対してはよそ者であり,希望もなく,世にあって神を持たない者だったのです。13 しかし,かつては遠く離れていたあなた方が,今やキリスト・イエスと結ばれ,キリストの血によって近い者となりました。14 [キリスト]はわたしたちの平和であり,二者を一つにし,その間にあって隔てていた壁を取り壊した方なのです。15 この方は自分の肉によって敵意を,すなわち[数々の]定めから成るおきての律法を廃棄されました。それは,二つの民をご自身との結びつきのもとに一人の新しい人に創造し,平和を作り出すためでした。16 またそれは,両方の民を一つの体とし,苦しみの杭を通して神と十分に和解させるためでした。彼は自分自身によってその敵意を抹殺したからです。17 そして彼は来て,遠く離れた者であったあなた方に平和の良いたよりを,また近い者たちにも平和を宣明したのです。18 この方を通してわたしたち両方の民は,一つの霊のもとに父に近づくことができるからです。

ユダヤ人の祭事 - 過ぎ越し、無酵母パンの祭り、7週の祭り (ペンテコステ)、仮小屋の祭り

出エジプト記 12章, 23章, 34章
レビ記 23章, 24章, 25章
民数記 9:1-5
申命記 16章

出エジプト記12章
1 次いでYHWHはエジプトの地でモーセとアロンにこう言われた。2 「この月はあなた方にとって始めの月となる。これはあなた方にとって一年の最初の月となる。

3 イスラエルの全集会に話してこう言いなさい。『この月の十日に,彼らは各々自分のため,父祖の家のために一頭の羊,家ごとに一頭の羊を取る。4 しかし,もし一家がその羊に対しては小さすぎるのであれば,その者とそのすぐ近くの隣り人とは,魂の数に応じてそれを自分の家に持って行くように。その羊を,各自の食べるところに応じて割り振るべきである。5 あなた方のために,その羊はきずのない一歳の雄であるべきである。若い雄羊から,あるいはやぎの中から選んでもよい。6 そして,この月の十四日までそれをあなた方の下に守っておき,その後イスラエルの集会の者たちの全会衆は二つの夕方の間にそれをほふらねばならない。7 また彼らはその血を幾らか取り,自分がそれを食べる家の二本の戸柱とその戸口の上部にそれを掛けねばならない。

8 「『そして彼らはその夜 (ニサン15) にその肉を食べなければならない。それを火で焼いて無酵母パンと共に,また苦菜を添えて食べる。9 その幾らかにせよ生で,あるいはゆでて,つまり水で煮て食べてはいけない。火で焼く,その頭もすねや内臓も共に。10 また,その幾らかでも朝 (ニサン15) まで残しておいてはならない。朝まで残るものは火に入れて焼き捨てるべきである。11 そしてこのようにしてそれを食べる。あなた方の腰に帯をし,足にサンダルをはき,手に杖を持つ。それを急いで食べなければならない。それはYHWHの過ぎ越しである。

12 そしてわたしはこの夜 (ニサン15) にエジプトの地を通り,人から獣に至るエジプトの地のすべての初子を必ず打つ。エジプトのすべての神々に対してわたしは裁きを執行する。わたしはYHWHである。13 そして,その血はあなた方のいる家の上にあってあなた方のしるしとなるのである。わたしは必ずその血を見てあなた方を過ぎ越す。それで,わたしがエジプトの地を打つ時,その災厄があなた方に臨んで滅びをもたらすことはない。

14 「『そして,この日はあなた方のための記念となり,あなた方はYHWHに対する祭りとしてこれを代々祝わなければならない。定めのない時に至る法令としてこれを祝うように。15 七日の間あなた方は無酵母パンだけを食べる。初めの日にあなた方の家から酸い練り粉を取り除く。初めの日から七日目までの間にパン種の入った物を食べる者がいれば,その魂はイスラエルのうちから断たれなければならないからである。16 そして,初めの日 (ニサン15) にはあなた方のために聖なる大会が開かれ,七日目 (ニサン21) にも聖なる大会が[開かれる]。それら[の日]には何の仕事もしてはいけない。ただしすべての魂が食べるべきもの,それに関してだけは自分のために行なってよい。

17 「『こうしてあなた方は無酵母パンの祭り (ニサン15-21) を守らねばならない。実にその日にわたしはあなた方の軍隊をエジプトの地から携え出すからである。そしてあなた方は定めのない時に至る法令としてこの日を代々守らなければならない。18 第一の月,その月の十四日,その夕方 (ニサン15) にあなた方は無酵母パンを食べ,月の二十一日,その夕方にまで及ぶ。19 七日の間あなた方の家に酸い練り粉があってはならない。パン種の入った物を味わう者がいれば,外人居留者であってもその地に生まれた者であっても,その魂はイスラエルの集会の中から断たれなければならないのである。20 パン種の入った物はいっさい食べてはいけない。あなた方はその住むすべての所で無酵母パンを食べる』」。

21 直ちにモーセはイスラエルのすべての年長者を呼んで,こう言った。「あなた方のために,その家族に応じて小さな家畜を選んで取り,過ぎ越しのいけにえをほふりなさい。22 また,ヒソプの束を取って水盤に入れた血に浸し,その水盤の血の幾らかを戸口の上部と二本の戸柱にはたき付けなければならない。(ニサンの14) そして,朝になるまであなた方のだれも自分の家の入口から出てはならない。(ニサンの15) 23 そうすれば,YHWHがエジプト人に災厄を下すために通られて戸口の上部と二本の戸柱に付いた血をご覧になる時,YHWHは必ずその入口を過ぎ越し,滅びがあなた方の家に入ってあなた方に災厄をもたらすことがないようにされるであろう。

24 「それであなた方はこの事を,自分と自分の子らのための,定めのない時に至る規定として守らなければならない。25 そして,YHWHの与えてくださる地に,その述べられたとおりに入るときにも,あなた方はこの務めを守らなければならないのである。26 また,あなた方の子らが,『この務めにはどういう意味があるのですか』と言うとき,27 あなた方は,『これはYHWHに対する過ぎ越しの犠牲であって,[神]はエジプト人に災厄を下された際,エジプトにいたイスラエルの子らの家々を過ぎ越して,わたしたちの家々を救い出してくださったのだ』と言わなければならない」。

すると,民は身を低くかがめて平伏した。28 その後イスラエルの子らは行って,YHWHがモーセとアロンに命じたとおりに行なった。まさにそのとおりに行なった。

29 そして,真夜中 (ニサン15) のこと,YHWHは,王座に座するファラオの初子から獄の穴にいる捕らわれ人の初子まで,エジプトの地のすべての初子を打ち,また獣の初子をもことごとく[打たれた]。30 それでファラオは,すなわち彼もそのすべての僕や[他の]すべてのエジプト人も夜中に起き上がった。そしてエジプト人の間に大きな叫びが起こりはじめた。死人の出ない家はなかったからである。31 すぐ,夜のうちに,彼はモーセとアロンを呼んで,こう言った。「立て,お前たちもイスラエルの[他の]子らもわたしの民の中から出て行け。行って,お前たちの言うとおりYHWHに仕えるがよい。32 お前たちの言ったとおり,羊も牛も連れて行け。そして,わたしのことも祝福するのだ」。

33 そして,エジプト人はこの民をその地から急いで去らせようとしてせき立てるようになった。「我々はみな死んだも同然なのだ!」と言うのであった。34 そのため民はパン種を入れる前の練り粉を抱え,こね鉢をマントにくるんで肩に負った。35 そしてイスラエルの子らはモーセの言葉どおりに行ない,エジプト人に銀の品や金の品やマントを求めるのであった。36 そしてYHWHはその民がエジプト人の目に好意を得るようにされたので,彼らはその求められる物をこれに与えた。こうして[民]はエジプト人からはぎ取った。

37 それからイスラエルの子らはラメセスをたってスコトに向かうことになったが,幼い者たちを別にして,徒歩で行く強健な男子は六十万人に上った。38 そして入り混じった大集団も彼らと共に上って行き,加えて羊の群れと牛の群れ,おびただしい数の家畜が一緒であった。39 そして彼らはエジプトから携えて来た練り粉を焼いて丸い菓子,つまり無酵母パンにした。それはパン種を入れてなかったからである。エジプトから追い立てられてゆっくりひまを取ることができず,また自分たちのための食糧を用意してもいなかったのである。

40 そして,エジプトに住んだイスラエルの子らのその居住[の期間]は四百三十年であった。41 そして,四百三十年の終わったちょうどその日に,YHWHの全軍はエジプトの地を出たのであった。42 それは,彼らをエジプトの地から携え出されたゆえにYHWHに対して守るべき (ニサン14-15) である。この夜はイスラエルのすべての子らが代々YHWHに対して守るべきものである。

43 次いでYHWHはモーセとアロンにこう言われた。「これが過ぎ越しに関する法令である。すなわち,異国の者はだれもそれを食べてはいけない。44 しかし,金で買い取られた奴隷の男がいる場合,あなたはこれに割礼を施さねばならない。こうして後に,その者はそれにあずかってよい。45 移住者と雇い入れられた労働者とはそれを食べてはいけない。46 それを一軒の家の中で食べる。その肉の幾らかにせよ家から外のどこかへ持ち出してはならない。また,あなた方はその骨を折ってはならない。47 イスラエルの集会のすべての者がこれを執り行なう。48 そして,外人居留者があなたのもとに外国人としてとどまっていて,その者がYHWHへの過ぎ越しを執り行なうという場合には,その者に属するすべての男子に割礼が施されるように。こうして後に,その者は近くに来てそれを行なってよい。その者はその地で生まれた者のようにならなければならない。しかし,割礼を受けていない者はだれもそれを食べてはならない。49 そこで生まれた者にもあなた方の中に外国人としてとどまる外人居留者にも,同一の律法が存在することになる」。

50 それで,イスラエルのすべての子らは,YHWHがモーセとアロンに命じたとおりに行なった。まさにそのとおりに行なった。51 そして,ちょうどこの日 (ニサン14-15) に,YHWHはイスラエルの子らをその軍隊と共にエジプトの地から携え出されたのであった。

出エジプト記23章
1 「あなたは真実でない報告を取り上げてはならない。邪悪な者に荷担して暴虐をたくらむ証人となってはいけない。2 よこしまな事柄のために群衆に従ってはならない。論争に関する証言に際し,群衆と共にそれて行って公正を曲げようとしてはならない。3 立場の低い者に関しては,その者の論争のさいに偏った好意を示してはならない。

4 「あなたに敵する者の牛やろばが迷っているのに出会うことがあれば,必ずこれをその者のもとに帰らせるように。5 あなたを憎む者のろばが荷の下でうずくまっているのを見ることがあれば,その者を見捨てるようなことをしてはならない。彼と共になって必ずそれを解いてやるように。

6 「あなたの貧しい者の論争において,その者に対する司法上の決定を曲げてはいけない。 7 「偽りの言葉からは遠く離れているように。そして,潔白な者や義なる者を殺してはならない。わたしは邪悪な者を義と宣することはしないからである。

8 「わいろを受け取ってはいけない。わいろは視力のさえた者を盲目にし,義人の言葉をゆがめさせるからである。

9 「また,外人居留者を虐げてはならない。あなた方自身,外人居留者の魂を知っており,エジプトの地で外人居留者となったからである。

10 「また,六年の間あなたの土地に種をまいてその産物を取り入れるように。11 しかし,七年目には,それを耕作しないでおく。それを休閑させておかなければならない。そして,あなたの民のうちの貧しい人々がそこから食べることになる。また,彼らの残したものは野の野獣が食べる。あなたのぶどう園やオリーブ畑についてもそのようにする。

12 「六日の間あなたは自分の仕事をする。しかし七日目にはそれを行なわない。あなたの牛やろばが休み,あなたの女奴隷の子や外人居留者が身をさわやかにするためである。

13 「そして,わたしがあなた方に述べたすべてのことについて注意しているように。あなた方は他の神々の名を唱えてはならない。それがあなたの口から聞かれることがあってはならない。

14 「年に三回,あなたはわたしに対して祭りを行なうように。15 あなたは無酵母パンの祭り (ニサン15-21) を守る。わたしが命じたとおり,アビブの月の定めの時に七日のあいだ無酵母パンを食べる。その[月]にあなたはエジプトを出たからである。そして,[民]はむなし手でわたしの前に出てはならない。16 また,あなたの勤労すなわちあなたが畑にまいたものの熟した初物の収穫の祭り (シバン6, ペンテコステ),さらに,年が去って行くころ,あなたの勤労を畑から取り入れる時期に行なわれる取り入れの祭り (エタニム15-21)。17 年に三度,あなたのすべての男子は[まことの]主であるYHWHの顔の前に出る

18 「あなたはわたしへの犠牲の血を,パン種の入った物と共にささげてはならない。また,わたしの祭りの脂肪を朝まで夜通しとどめておいてはいけない。 19 「あなたの土地の熟した初物のうちその最良のものを,あなたの神YHWHの家に携えて来るように。 「あなたは子やぎをその母の乳で煮てはならない。

20 「今わたしはあなたの前に使いを送ってその道であなたを守らせ,わたしが備えた場所にあなたを導き入れさせる。21 その者のゆえに自らに注意し,その声に従うように。彼に対して反逆の行為をしてはならない。彼はあなた方の違犯を容赦しないからである。それは,わたしの名が彼の内にあるからである。22 しかし,あなたがその声に固く従って,わたしの話すすべてのことを真に行なうならば,わたしは必ず,あなたに敵する者に敵対し,あなたを悩ます者を悩ませる。23 わたしの使いはあなたに先立って行き,まさしくあなたを,アモリ人,ヒッタイト人,ペリジ人,カナン人,ヒビ人とエブス人のところに至らせるからである。わたしは彼らを必ずぬぐい去る。

24 彼らの神々に身をかがめたり,さそわれてそれに仕えたりしてはならない。また,彼らが作るものと似たものを作ってはならない。むしろ,必ずそれを打ち倒し,必ずその聖柱を打ち崩すように。25 こうしてあなた方は,あなた方の神YHWHに仕えなければならない。そうすれば,あなたのパンと水を必ず祝福するであろう。そしてわたしはまさに,あなたの中から疾病を離れさせる。26 あなたの地には流産をする女もうまずめもいないであろう。わたしはあなたの日数を満ちさせる。

27 「またわたしは,わたしに対する恐怖をあなたの前方に送り,あなたが入って行く民のすべてを必ず混乱に陥れる。そして,あなたに敵するすべての者のうなじを必ずあなたに与えるであろう。28 またわたしは,失意の気持ちをあなたの前方に送り,それがまさに,ヒビ人,カナン人,ヒッタイト人をあなたの前から追い立てるであろう。29 わたしは彼らをあなたの前から一年のうちに追い立てることはしない。その地が荒れ果てた所となり,野の野獣がまさに殖えてあなたを害することのないためである。30 わたしは彼らをあなたの前から少しずつ追い立ててゆき,ついにあなたは子を多く生んでその地を全く所有することになるであろう。

31 「そしてわたしは,あなたの境界を,紅海からフィリスティア人の海まで,荒野から川までとする。わたしはその地に住む民をあなた方の手に与えるからである。あなたは彼らを自分の顔の前から必ず追い立てるであろう。32 あなたは彼らまた彼らの神々と契約を結んではならない。33 彼らはあなたの土地に住んではならない。彼らがあなたに,わたしに対する罪をおかさせることのないためである。あなたが彼らの神々に仕えることになれば,それはあなたにとってわなとなるであろう」。

出エジプト記34章
1 次いでYHWHはモーセにこう言われた。「あなたのために初めのものと同じような石の書き板二枚を切り出しなさい。わたしはその書き板に,あなたがみじんに砕いた初めの書き板にあった言葉を書き記さねばならない。2 それで,朝のために用意をしなさい。あなたは朝,シナイ山に上り,そこの山の頂でわたしの傍らに立つことになるからである。3 しかし,だれもあなたと共に上って来てはならない。また,ほかのだれも,山のどこにいてもいけない。さらに,羊も牛もその山の前で草をはんでいることのないように」。

4 そこでモーセは初めのものと同じような石の書き板二枚を切り出し,朝早く起きて,YHWHが命じたとおりシナイ山に上って行った。その手に石の書き板二枚を携えていた。5 するとYHWHは雲のうちにあって下って来られ,彼と共にそこに立ち,YHWHの名を宣明された。6 そしてYHWHは彼の顔の前を過ぎ行きつつ,こう宣明された。「YHWH,YHWH,憐れみと慈しみに富み,怒ることに遅く,愛ある親切と真実とに満ちる神,7 愛ある親切を幾千[代]までも保ち,とがと違犯と罪とを赦す者。しかし,処罰を免れさせることは決してせず,父のとがに対する処罰を子や孫にもたらして,三代,四代に及ぼす」。

8 モーセは直ちに身を地に低くかがめて平伏した。9 そしてこう言った。「もしいま私があなたの目に恵みを得ておりましたら,ああYHWH,どうかYHWHがわたしたちのうちにあって共に進んでくださいますように。これはうなじのこわい民なのです。あなたはどうしてもわたしたちのとがと罪を許し,わたしたちをご自分の所有物としてくださらなければなりません」。10 するとこう言われた。「いまわたしは契約を結ぶ。すなわち,あなたの民すべての前で,わたしは,全地においてまたあらゆる国民の中でいまだ造り出されたことのない,驚嘆すべき事柄を行なう。あなたがその中にいる民は皆,まさしくYHWHの業を見るであろう。畏怖の念を抱かせる事柄を,わたしはあなたと共に行なうからである。

11 「あなたとしては,わたしが今日命じる事柄を守りなさい。いまわたしは,アモリ人,カナン人,ヒッタイト人,ペリジ人,ヒビ人,エブス人をあなたの前から追い立てる。12 あなたの行く地に住む民と契約を結ぶことのないように注意しなさい。それがあなた方の中にあってわなとなることのないためである。13 むしろ,あなた方は彼らの祭壇を取り壊し,聖柱をみじんに砕き,聖木を切り倒すように。14 あなたはほかの神に平伏してはならないからである。YHWHは,その名をねたむといい,ねたむ神だからである。15 あなたはその地に住む民と契約を結んではいけないのである。彼らはきまってその神々と不倫な交わりを持ち,その神々に犠牲をささげ,必ずだれかがあなたを招き,きっとあなたはその犠牲の一部を食べることになるであろう。16 そのときあなたは自分の息子らのために彼らの娘たちの中からめとることになり,その娘たちはきっと自分の神々と不倫な交わりを持ち,あなたの息子らにもその神々と不倫な交わりを持たせることであろう。

17 「あなたは自分のために鋳物の偶像の神々を作ってはならない。

18 「無酵母パンの祭り (ニサン15-21) をあなたは守るように。無酵母のパンを,わたしが命じたとおり,アビブの月の定めの時に七日のあいだ食べる。アビブの月にあなたはエジプトを出たからである。

19 「胎を最初に開くものはすべてわたしのものである。あなたのすべての畜類については,牛と羊の雄の初子が[わたしのもの]である。20 また,ろばの初子は羊をもって請け戻す。しかし請け戻さないのであれば,その首を折らなければならない。あなたの息子のうちの初子はすべて請け戻すように。そして,彼らはむなし手でわたしの前に出てはならない。

21 「六日の間あなたは働き,七日目には安息を守る。すき返す時にも収穫の時にもあなたは安息を守る。

22 「また,あなたは小麦の収穫の熟した初物をもって[七]週の祭り (シバン6, ペンテコステ) を行なう。そして,取り入れの祭り (エタニム15-21) を年の変わり目に[行なう]。 23 「年に三回,あなたのすべての男子は,[まことの]主であるイスラエルの神YHWHの前に出るように。24 わたしは諸国民をあなたの前から打ち払い,あなたの領地を広くするからである。年に三回あなたが自分の神YHWHの顔を見るために上っている間は,だれもあなたの土地を欲することはないであろう。

25 「あなたはわたしへの犠牲の血を,パン種の入った物と共にほふってはならない。また,過ぎ越しの祭りの犠牲を朝まで夜通しとどめておいてはいけない。

26 「あなたの土地の熟した初物のうちその最良のものを,あなたの神YHWHの家に携えて来るように。 「あなたは子やぎをその母の乳で煮てはならない」。

27 YHWHは続いてモーセに言われた,「あなたのためにこれらの言葉を書き記しなさい。これらの言葉のとおりに,わたしはあなたおよびイスラエルと契約を結ぶからである」。28 そして彼はYHWHと共に四十日四十夜そこにとどまった。パンを食べることも,水を飲むこともしなかった。そして[神]は,契約の言葉,すなわち十の言葉を書き板に記してゆかれた。

29 さて,モーセがシナイ山から下りて来た時,山から下りて来るそのモーセの手には証の書き板二枚があった。そしてモーセは,[神]と話したために自分の顔の皮膚が光を放っていることを知らなかった。30 アロンおよびイスラエルのすべての子らがモーセを見ると,見よ,その顔の皮膚は光を放っており,そのため彼に近づくことを恐れるのであった。

31 そこでモーセは彼らを呼んだ。それでアロンおよび集会の中のすべての長たちは彼のもとに戻って来た。そしてモーセは彼らに話しはじめた。32 そののち初めてイスラエルのすべての子らも彼に近づいて来た。それで彼は,YHWHがシナイ山で話されたすべてのことを彼らに命じていった。33 彼らと話し終えると,モーセは自分の顔にベールを掛けるのであった。34 しかしモーセは,YHWHの前に入って話す時には,そこから出るまでベールを外しているのであった。そののち彼は出て行って,自分の命じられたことをイスラエルの子らに話した。35 そしてイスラエルの子らはモーセの顔を見たが,モーセの顔の皮膚は光を放っているのであった。その後モーセは,入って行って[神]と話すまで自分の顔に再びベールを掛けた。


レビ記23章
1 YHWHは続けてモーセに話してこう言われた。2 「イスラエルの子らに話しなさい。彼らにこう言うように。『あなた方がふれ告げるべき,YHWHの季節ごとの祭り聖なる大会となる。これらはわたしの季節ごとの祭りである。

3 「『六日のあいだ仕事を行なってよいが,七日目は全き休みの安息,聖なる大会となる。あなた方はどんな仕事も行なってはいけない。それは,あなた方の住むすべての場所においてYHWHに対する安息となる。

4 「『これらはYHWHの季節ごとの祭り,聖なる大会であり,あなた方がその定めの時にふれ告げるべきものである。5 第一の月 (アビブ、ニサン),その月の十四日,その二つの夕方の間は,YHWHに対する過ぎ越しである。

6 「『そして,この月の十五日は,YHWHに対する無酵母パンの祭りである。七日の間あなた方は無酵母パンを食べるべきである。7 その最初の日 (ニサン15) にあなた方は聖なる大会を催す。どんな労働の仕事も行なってはいけない。8 しかしあなた方は,七日の間YHWHへの火による捧げ物をささげなければならない。七日目 (ニサン21) には聖なる大会がなされる。どんな労働の仕事も行なってはいけない』」。

9 YHWHは引き続きモーセに話してこう言われた。10 「イスラエルの子らに話しなさい。彼らにこう言うように。『あなた方がわたしの与える土地についに入り,その収穫物を刈り取ったなら,あなた方は自分たちの収穫 (大麦) の初穂の束を祭司のもとに携えて来なければならない。11 そして彼は,あなた方が是認を得るために,その束をYHWHの前に揺り動かさねばならない。安息日のすぐ翌日 (ニサン16) に祭司はそれを揺り動かすべきである。

12 そして,その束が揺り動かされる日に,あなた方はきずのない若い雄羊の一年目のものをYHWHへの焼燔の捧げ物としてささげるように。13 また,それに伴う穀物の捧げ物として,油で湿らせた上等の麦粉十分の二エファを,YHWHへの火による捧げ物,安らぎの香りとする。また,その飲み物の捧げ物として,四分の一ヒンのぶどう酒を。14 そして,その日になるまで,すなわちあなた方の神への捧げ物を携えて来るその時までは,パンも,炒った穀物も,新しい穀物も食べてはならない。これは,あなた方の住むすべての所において代々定めのない時に至る法令となる。

15 「『また,あなた方は自分たちのため,安息日の後の日 (ニサン16),すなわちあなた方が振揺の捧げ物の束を携えて来る日から,安息日を七つ数えなければならない。それは満[七週]となる。16 七番目の安息日の後の日まで五十日を数えるべきである (ペンテコステ, 第3の月 シバン6)。そしてあなた方は新しい穀物 (小麦) の捧げ物をYHWHにささげなければならない。17 あなた方の住む所からパン二つを振揺の捧げ物として携えて来るように。それは上等の麦粉十分の二エファでこしらえたものとすべきである。それはパン種を入れて焼き,YHWHへの熟した初物とする

18 またあなた方は,そのパンと共に,きずのない雄の子羊七頭,それぞれ一歳のものを,さらに若い雄牛一頭と雄羊二頭をささげなければならない。それらはそれに伴う穀物の捧げ物および飲み物の捧げ物と共に,YHWHへの焼燔の捧げ物,YHWHへの火による安らぎの香りの捧げ物とされるべきである。19 またあなた方は罪の捧げ物として子やぎ一頭,さらに共与の犠牲として雄の子羊二頭,それぞれ一歳のものをささげるように。

20 そして祭司はそれを熟した初物のパンと共に揺り動かして,二頭の雄の子羊と共にYHWHの前で振揺の捧げ物とするように。それらはYHWHに対して聖なるもの,祭司のためのものとされるべきである。

21 そしてあなたはこの日に布告を行なわねばならない。あなた方のために聖なる大会がなされる。どんな労働の仕事も行なってはいけない。これはあなた方の住むすべての所において代々定めのない時に至る法令となる。

22 「『そして,あなた方は自分の土地の収穫を刈り取るとき,それを刈り取るさいに畑の端を[刈り]尽くしてはならない。あなたの収穫の落ち穂を拾ってはならない。苦しむ者や外人居留者のためにそれを残しておくべきである。わたしはあなた方の神YHWHである』」。

23 YHWHは続けてモーセに話して言われた,24 「イスラエルの子らに話してこう言いなさい。『第七の月 (エタニム),その月の一日には,あなた方のために全き休みが設けられるべきである。それはラッパの吹奏による記念,聖なる大会である。25 どんな労働の仕事も行なってはいけない。そしてあなた方はYHWHへの火による捧げ物をささげるように』」。

26 YHWHはさらにモーセに話してこう言われた。27 「しかし,この第七の月 (エタニム) の十日贖罪の日である。あなた方のために聖なる大会が催されるべきである。そしてあなた方は自分の魂を苦しめ,YHWHへの火による捧げ物をささげなければならない。28 またあなた方はこの日にどんな仕事も行なってはならない。それは,あなた方の神YHWHの前であなた方のために贖罪を行なう贖罪の日だからである。29 この日に苦しめられることのない魂はすべて必ずその民の中から断たれるのである。30 この日に何か仕事を行なう魂がいれば,わたしはその魂を民の中から滅ぼさねばならない。31 あなた方はどんな仕事も行なってはならない。これはあなた方の住むすべての場所において,代々定めのない時に至る法令となる。

32 これはあなた方のための全き休みの安息であり,あなた方はこの月の九日の夕方 (エタニム10) に自分の魂を苦しめなければならない。夕方から夕方まで (エタニム10中) あなた方の安息を守るべきである」。

33 YHWHは引き続きモーセに話して言われた,34 「イスラエルの子らに話してこう言いなさい。『この第七の月 (エタニム) の十五日仮小屋の祭りであり,YHWHに対して七日のあいだ[行なわれる]。35 その最初の日 (エタニム15) は聖なる大会 (holy convention) である。あなた方はどんな労働の仕事も行なってはいけない。36 あなた方は七日の間YHWHへの火による捧げ物をささげるべきである。八日目 (エタニム22) にはあなた方のために聖なる大会 (holy convention) がなされるべきである。そしてあなた方はYHWHへの火による捧げ物をささげるように。それは聖会 (solemn assembly) である。どんな労働の仕事も行なってはいけない。

37 「『これらは,あなた方が聖なる大会としてふれ告げるべきYHWHの季節ごとの祭りである。それはYHWHへの火による捧げ物をささげるときである。すなわち,犠牲としての焼燔の捧げ物と穀物の捧げ物および飲み物の捧げ物を日ごとの予定にしたがって[ささげるの]であり,38 それはYHWHの安息日 (週の安息日) とは別,またあなた方の供え物,すべての誓約の捧げ物,すべての自発的な捧げ物,すなわちあなた方がYHWHに供えるべきものとは別のものである。

39 しかし,第七の月 (エタニム) の十五日,その地の産物を集め入れた時には,あなた方は七日の間YHWHの祭り (仮小屋, 取り入れの祭り, エタニム 15-21)を祝うべきである。その最初の日 (エタニム15) は全き休みであり,八日目 (エタニム22) も全き休みである。

40 そしてあなた方は,自分たちのため,最初の日 (エタニム15) に,壮麗な樹木の実,やしの木の葉,茂った木の大枝,奔流の谷のポプラを取るように。あなた方の神YHWHの前で七日のあいだ歓び楽しむのである。41 こうしてあなた方はYHWHに対する祭りとしてそれを年に七日祝うのである。代々定めのない時に至る法令として,あなた方はそれを第七の月に祝うべきである。42 仮小屋に七日のあいだ住むべきである。イスラエルに生まれたすべての者は仮小屋の中に住む。43 これは,わたしがイスラエルの子らをエジプトの地から携え出したさい仮小屋の中に彼らを住まわせたことを,あなた方の代々の民が知るためである。わたしはあなた方の神YHWHである』」。

44 そこでモーセは,YHWHの季節ごとの祭りについてイスラエルの子らに話した。

レビ記24章
1 それからYHWHはモーセに話してこう言われた。2 「イスラエルの子らに命じて,つぶして採った純粋のオリーブ油をあなたのもとに持って来させなさい。明かりのため,ともしびを絶えずともすためである。3 会見の天幕の中,証の垂れ幕の外側で,アロンはそれを夕方から朝までYHWHの前に絶えず整えるべきである。これはあなた方にとって代々定めのない時に至る法令である。4 そのともしびを絶えずYHWHの前で,純金の燭台の上に整えるべきである。

5 「またあなたは上等の麦粉を取り,それをもって輪型のパン十二個を焼くように。十分の二エファが一つの輪型のパンとなる。6 次いでそれを,一重ねに六つずつ二重ねにして純金の食卓の上,YHWHの前に置くように。7 また,純粋の乳香を各重ねの上に添えるように。それは覚えのパン,YHWHへの火による捧げ物となるのである。8 安息日が来るごとに彼はそれを整えて絶えずYHWHの前に置くべきである。これはイスラエルの子らとの定めのない時に至る契約である。9 そして,それはアロンおよびその子らのものとなるのである。彼らはそれを聖なる場所で食べるように。それは,定めのない時に至る規定として,YHWHへの火による捧げ物の中から彼のために[取られた]極めて聖なるものだからである」。

10 さて,イスラエル人の女の息子で,エジプト人の男の息子である者が,イスラエルの子らの中に出て行った。そして,そのイスラエル婦人の息子とあるイスラエル人の男とが宿営の中で格闘を始めた。11 そして,そのイスラエル人の女の息子がみ名をののしり,それの上に災いを呼び求めるようになった。それで人々はその者をモーセのもとに連れて来た。ところで,彼の母の名はシェロミトといって,ダンの部族のディブリの娘であった。12 次いで人々は,YHWHのことばにしたがってはっきりした宣告があるまで彼を拘禁することにした。

13 それからYHWHはモーセに話してこう言われた。14 「災いを呼び求めたその者を宿営の外に連れ出しなさい。その[言葉]を聞いたすべての者は手を彼の頭の上に置くように。そして,集会全体がこれを石撃ちにしなければならない。15 そして,あなたはイスラエルの子らに話してこう言うべきである。『だれでもその神の上に災いを呼び求める者がいれば,その者は自分の罪に対する責めを負わねばならない。16 ゆえに,YHWHの名をののしった者は必ず死に処せられるべきである。集会の全体がその者を必ず石撃ちにするように。外人居留者もその地で生まれた者と同じく,み名をののしるなら死に処せられるべきである。

17 「『また,人がだれかの魂を打って死に至らせた場合,その者は必ず死に処せられるべきである。18 また,家畜の魂を打って死に至らせた者は,その償いをすべきである。魂には魂である。19 また,人が自分の仲間に損傷を負わせた場合,その行なったとおりにその者に対してなされるべきである。20 骨折には骨折,目には目,歯には歯である。その者が人に負わせたと同様の損傷,それが彼に加えられるべきである。21 そして,獣を打って死に至らせた者はその償いをすべきであるが,人を打って死に至らせた者は死に処せられるべきである。

22 「『同一の司法上の定めがあなた方に当てはめられる。外人居留者もその地で生まれた者と同じにされるべきである。わたしはあなた方の神YHWHなのである』」。 23 その後モーセはイスラエルの子らに話し,彼らは災いを呼び求めた者を宿営の外に連れ出して,これを石撃ちにした。こうしてイスラエルの子らはYHWHがモーセに命じたとおりに行なった。

レビ記25章
1 YHWHはシナイ山でさらにモーセに話してこう言われた。2 「イスラエルの子らに話しなさい。彼らにこう言うように。『あなた方がわたしの与える土地についに入ったなら,その時,その地はYHWHに対して安息を守らねばならない。3 六年の間あなたは自分の畑に種をまき,六年の間自分のぶどう園の刈り込みを行なうべきである。こうしてあなたはその地の産物を取り集めるのである。4 しかし,七年目には,その地のために全き休みの安息,YHWHに対する安息が設けられるべきである。あなたの畑に種をまいてはならない。あなたのぶどう園の刈り込みを行なってはならない。5 あなたの収穫のこぼれ種から生えたものを刈り取ってはならず,刈り込みをしなかった木のぶどうを取り集めてもならない。その地のために全き休みの年が設けられるべきである。6 そして,土地の安息はあなた方にとって食物のためとなるのである。すなわち,あなたと,あなたの男奴隷や女奴隷,あなたのもとにいる雇われた労働者や移住者,外国人としてあなたのもとに住む者たちのため,7 またあなたの家畜のため,あなたの地にいる野獣のためである。その産出するものはすべて食用としてよい。

8 「『また,あなたは自分のために安息の年を七つ数えるように。七年の七倍である。年の安息七つの日数はあなたにとって四十九年となる。9 それからあなたは,第七の月,その月の十日 (エタニム10) に,高音の角笛を鳴り響かせるように。贖罪の日にあなた方の全土に角笛を鳴り響かせるべきである。10 こうしてあなた方は五十年目を神聖なものとし,その地においてそのすべての住民に自由をふれ告げなければならない。それはあなた方にとってヨベルとなる。あなた方は各々自分の所有地に帰るように。各々自分の家族のもとに帰る。11 その五十年目はあなた方にとって,ヨベルとなるのである。あなた方は種をまいてはならない。こぼれ種からその地に生えたものを刈り取ってはならない。刈り込みをしなかった木のぶどうを取り集めてもならない。12 それはヨベルだからである。それはあなた方にとって聖なるものとされるべきである。あなた方はその地の産出するものを,畑から食べてよい。

13 「『このヨベルの年にあなた方は各々自分の所有地に帰るべきである。14 それで,あなた方が売り物を自分の仲間に売ったり仲間の手から買ったりする場合,互いに不正を行なってはいけない。15 あなたはヨベル以後の年数にしたがって自分の仲間から買うべきである。収穫の年数にしたがって彼はあなたに売るべきである。16 年数が多ければその買い取りの価を増すべきであり,年数が少なければ買い取りの価を減らすべきである。収穫の数を彼はあなたに売るからである。

17 ゆえに,あなた方はだれも自分の仲間に不正を行なってはならない。あなたの神に恐れを持たねばならない。わたしはあなた方の神YHWHなのである。18 こうしてあなた方はわたしの法令を実行し,わたしの司法上の定めを守ってそれを遂行しなければならない。そうすればあなた方は必ずその地に安らかに住まうことになるであろう。19 そして,その地はまさにその実りを出し,あなた方は必ず満ち足りるまで食べて,そこに安らかに住まうであろう。

20 「『しかし,もしあなた方が,「種をまいたり収穫物を取り集めたりしてはいけないならその七年目には何を食べるのか」と言うのであれば,21 そのときわたしは,あなた方のため六年目に必ずわたしの祝福を命じ,それは三年分の収穫を産出することになる。22 そしてあなた方は八年目に種をまき,九年目まで古い収穫物から食べるのである。その収穫物が入って来るまで,あなた方は古いものを食べる。

23 「『それで,土地は恒久的に売り渡されるべきではない。土地はわたしのものだからである。あなた方はわたしから見れば外人居留者また移住者なのである。24 そして,あなた方の所有するすべての土地において,あなた方はその地に対する買い戻しの権利を認めるべきである。

25 「『あなたの兄弟が貧しくなってその所有地の幾らかを売らねばならない場合,その者の近親の買い戻し人は来て,自分の兄弟の売ったものを買い戻さねばならない。26 そして,ある人に買い戻し人がいないが,その者自身の手が収益を上げてその買い戻しに足りる分を得た場合,27 その者はそれを売ってからの年数を計算し,残りの金を自分がその売却を行なった相手に返さねばならない。こうしてその者は自分の所有地に戻ることになる。

28 「『しかし,もしその者の手に彼に返すだけの分が見いだされないのであれば,彼が売ったものはそれを買い取った者の手にヨベルの年までとどまることになる。そしてそれはヨベルの時に手放され,こうして彼は自分の所有地に戻るのである。

29 「『さて,人が城壁に囲まれた都市の中にある住家を売る場合,その人の買い戻しの権利は売却の時から一年が切れるまでは保たれねばならない。その買い戻しの権利は満一年間保たれるべきである。

30 しかし,もしそれがその者にとってまる一年の満ちる以前に買い戻されないのであれば,城壁を持つ都市の中にあるその家は,代々恒久的にその買い取り人の財産とされることになる。それはヨベルの時に手放されるべきではない。

31 しかし,周囲に城壁を持たない集落の家はその地方の田野の一部とみなされるべきである。買い戻しの権利はそれのために保たれ,またヨベルの時にそれは手放されるべきである。

32 「『レビ人の都市の場合,その所有する都市の家があれば,買い戻しの権利は定めのない時までレビ人のために保たれるべきである。33 そして,レビ人の財産が買い戻されない場合でも,その所有する都市にある売られた家はヨベルの時にはやはり手放されなければならない。レビ人の都市の家はイスラエルの子らの中における彼らの所有物だからである。34 さらに,彼らの都市の牧草地としての野は売ってはいけない。それは定めのない時に至るまで彼らの所有地だからである。

35 「『また,あなたの兄弟が貧しくなり,あなたの傍らにあって財政的に弱くなる場合,あなたはこれを支えなければならない。その者は外人居留者また移住者のようにしてあなたのもとで生きつづけるのである。36 その者から利息や高利を取ってはいけない。あなたの神に恐れを持たねばならない。あなたの兄弟はあなたと共に生きつづけるのである。37 あなたはその者に利息を付けて金を渡してはならず,高利を付けて食物を与えてもならない。38 わたしはあなた方の神YHWH,あなた方をエジプトの地から携え出してカナンの地を与え,あなた方の神たることを示す者である。

39 「『また,あなたの兄弟があなたの傍らで貧しくなってその身をあなたに売らねばならない場合,あなたはこれを奴隷の奉仕に就いた働き人のように使ってはならない。40 その者はあなたのもとにあって,雇われた労働者のように,移住者のようになるべきである。彼はあなたのもとでヨベルの年まで仕えるべきである。41 それから彼は,すなわち彼およびそれと共なるその子らは,あなたのもとから出て行き,彼は自分の家族のもとに戻るのである。彼はその父祖たちの所有地に戻るべきである。42 彼らはわたしがエジプトの地から携え出した,わたしの奴隷だからである。彼らは奴隷が売られるときのようにして自分の身を売ってはならない。43 あなたは暴虐をもってこれを踏みつけてはならない。あなたの神を恐れるように。

44 あなた方の周囲の諸国民の中からあなたのものとなる男奴隷や女奴隷についてであるが,あなた方はその中から男奴隷や女奴隷を買ってよい。45 また,あなた方のもとに外国人として住む移住者の子らの中から,その中からも買ってよい。さらに,あなた方と共にいる,彼らがあなた方の土地で生んだ彼らの家族の中からも[買ってよい]。その人々はあなた方の所有となるのである。

46 そしてあなた方は彼らを相続財産として後の子らに譲り渡し,定めのない時に至る所有として相続させるように。あなた方はこれを働き人として用いてよいが,イスラエルの子らであるあなた方の兄弟を,一方が他方を暴虐をもって踏みつけてはならない。

47 「『しかし,あなたと共にいる外人居留者もしくは移住者の手が富裕になり,あなたの兄弟がその傍らで貧しくなって,あなたと共にいる外人居留者や移住者あるいは外人居留者の家族の一員に身を売らねばならない場合,48 その身を売った後にも,彼についてはその買い戻しの権利が保たれる。その兄弟の一人が彼を買い戻すかもしれない。49 あるいはそのおじもしくはおじの子が買い戻してもよい。さらには,その肉親である血縁のだれか,その家族のひとりがこれを買い戻してもよい。 「『あるいは,その者自身の手が富裕になったなら,その者は自らを買い戻すように。50 そのとき彼は,自分の買い主と共に,自分が身を売った年からヨベルの年までを数えなければならない。彼の売り渡しの金はその年数に応じたものとなるのである。雇われた労働者の作業日数と同じ数え方によって彼はその者のもとにとどまるべきである。51 もしまだ幾年もあるなら,それに応じて自分が買い取られたときの金の中から買い戻しの価を支払うべきである。

52 しかし,ヨベルの年までの年数のうちそのわずかが残るだけであれば,彼は自分で計算をするように。その年数に応じて自分の買い戻しの価を支払うべきである。53 彼は年ごとに雇われる労働者のようにしてその者のもとにとどまるべきである。その者はあなたの目の前で暴虐をもってこれを踏みつけてはいけない。54 しかし,もし彼がこうした条件で自分を買い戻すことができなければ,ヨベルの年に出て行くことになる。彼もそれと共なるその子らもである。

55 「『イスラエルの子らはわたしにとって奴隷なのである。彼らはわたしがエジプトの地から携え出した奴隷である。わたしはあなた方の神YHWHである。


民数記 9:1-5
1 そしてYHWHは,彼らがエジプトの地を出て二年目,その第一の月に,シナイの荒野でモーセに話してこう言われた。

2 「さて,イスラエルの子らは過ぎ越しの犠牲その定めの時に調えるべきである。3 この月の十四日,二つの夕方の間に (ニサン14-15),あなた方はそれをその定めの時に調えるべきである。そのすべての法令と定められた手順のすべてとにしたがってこれを調えるように」。

4 それでモーセは,過ぎ越しの犠牲を調えるようにイスラエルの子らに話した。5 そこで彼らは,第一の月 (アビブ, ニサン),その月の十四日,二つの夕方の間に (ニサン14-15),シナイの荒野で過ぎ越しの犠牲を調えた。すべてYHWHがモーセに命じたところにしたがい,イスラエルの子らはそのとおりに行なった。


申命記16章
1 「アビブの月を守るように。あなたは,あなたの神YHWHに対して過ぎ越し (ニサン 14-15) を執り行なわなければならない。アビブの月に,あなたの神YHWHは,あなたを (ニサン15) にエジプトから携え出されたからである。2 そしてあなたは,YHWHが選んでそのみ名をとどまらせる場所で,羊の群れと牛の群れの中からあなたの神YHWHに過ぎ越しの犠牲をささげなければならない。 (ニサン14)

3 七日の間,パン種の入った物をそれと共に食べてはならない。無酵母のパン,苦悩のパンをそれと共に食べるべきである。これはあなたがエジプトの地を急いで出たからであり,あなたの命の日の限りエジプトの地を出た日のことを覚えているためである。 4 そして,七日の間,あなたの領地のどこにおいても,酸い練り粉があなたのもとに見いだされてはいけない。また,最初の日の夕方 (ニサン14) にあなたが犠牲にしたものの肉が多少といえ (ニサン15) まで夜通しとどまっていてもいけない。

5 あなたの神YHWHが与えてくださる都市のどこででも過ぎ越しの犠牲をささげる,ということは許されないであろう。6 むしろ,あなたの神YHWHが選んでそのみ名をとどまらせる場所において,あなたがエジプトを出たその定めの時に,夕方,日が沈んですぐ,過ぎ越しの犠牲をささげるべきである

7 そして,煮ることも食べることもあなたの神YHWHが選ばれた場所で行ない,朝には身を巡らして自分の天幕に戻るように。8 六日の間あなたは無酵母パンを食べる。そして七日目 (ニサン21) にはあなたの神YHWHに対する聖会 (solemn assembly) が行なわれる。あなたは何の仕事も行なってはならない。

9 「あなたは自分のために七週を数えるべきである。刈り取っていない穀物に最初に鎌を入れる時から七週を数え始める。10 こうしてあなたの神YHWHに対して[七]週の祭り (ペンテコステ, シバン6) を行なわなければならない。あなたの献じる,あなたの手の自発的な捧げ物に応じ,あなたの神YHWHが祝福してくださるところにしたがって[それを行なう]。11 そしてあなたは,すなわちあなたも,あなたの息子や娘も,男奴隷や女奴隷も,あなたの門の内にいるレビ人も,またあなたの中にいる外人居留者や父なし子ややもめも,あなたの神YHWHの前,あなたの神YHWHが選んでそのみ名をとどまらせる場所で歓び楽しむように。12 こうしてあなたは,自分がエジプトで奴隷となったことを覚え,これらの規定を守ってそれを履行しなければならない。

13 「あなたの脱穀場また油やぶどうの搾り場からの取り入れを行なう時,あなたは自分のために七日のあいだ仮小屋の祭り (エタニム15-21) を行なうべきである。14 そしてあなたは,すなわちあなたも,あなたの息子や娘も,男奴隷や女奴隷も,あなたの門の内にいるレビ人,外人居留者,父なし子,やもめも,その祭りのあいだ歓び楽しむように。15 七日の間,YHWHの選ばれる場所で,あなたの神YHWHに対して祭りを行なう。あなたの神YHWHは,あなたのすべての産物,またあなたの手のすべての業を祝福されるからである。あなたはただ喜びに満ちるように。

16 「年に三度,あなたに属するすべての男子は,あなたの神YHWHの選ばれる場所でそのみ前に出るべきである。すなわち,無酵母パンの祭り (ニサン15-21),[七]週の祭り (ペンテコステ, シバン6),そして仮小屋の祭り (エタニム15-16) の時である。だれもむなし手でYHWHの前に出てはいけない。17 各人の手の供え物は,あなたの神YHWHが与えてくださった祝福に応じたものであるべきである。

18 「あなたは自分のため,あなたの神YHWHが部族ごとに与えてくださるすべての門の内に裁き人とつかさたちを立てるべきである。それらの者が義の裁きをもって民を裁くように。19 あなたは裁きを曲げてはならない。不公平であったり,わいろを受け取ったりしてはならない。わいろは賢い者の目を盲目にならせ,義なる者の言葉をゆがめさせるからである。20 公正,公正こそあなたの追い求めるべきものである。それはあなたが生きつづけるため,あなたの神YHWHが与えてくださる土地を実際に取得するためである。

21 「あなたは,自分のために造るあなたの神YHWHの祭壇の近くに,自分の聖木としての木をいっさい植えてはならない。 22 「また,自分のために聖柱を立ててもいけない。それは,あなたの神YHWHがまさに憎まれるものである。

エルサレムでのイエスの最後の宣教

マタイ 26章, 27章, 28章
マルコ 14章, 15章, 16章
ルカ 22章, 23章, 24章
ヨハネ 12章, 13章, 14章, 15章, 16章, 17章, 18章, 19章, 20章, 21章


マタイ26章 (西暦33年 過ぎ越し)
1 さて,これらすべてを語り終えてから,イエスは弟子たちにこう言われた。2 「あなた方の知っているとおり,今 (ニサン12日) から二日後には過ぎ越し (ニサン14日, 過ぎ越しの子羊の犠牲) が行なわれます。そして,人の子は杭につけられるために引き渡されるのです」。

3 その時,祭司長および民の年長者たちは,カヤファと呼ばれる大祭司[の家]の中庭に集まり,4 うまく仕組んでイエスを捕らえ,これを殺そうと相談した。5 しかし彼らは,「祭りの時 (ニサン15-21日, 無酵母パンの祭り, ニサン15日の祭りの初日は、無発酵パンと焼いた子羊の肉を食べる過越の食事から始まります。) はいけない。民の間に騒動が起きないようにするためだ」と言い合っていた。

6 イエスがちょうどベタニヤでらい病人シモンの家におられた時のことであったが,7 雪花石こうの容器に入った高価な香油を携えた女が近づき,食卓について横になっておられた[イエス]の頭にそれを注ぎはじめた。

8 これを見て弟子たちは憤慨し,「なぜこんな無駄なことを。9 これは高く売れたし,そうすれば貧しい人たちに施すこともできたのに」と言った。10 イエスはこれに気づいて彼らに言われた,「なぜあなた方はこの女を困らせようとするのですか。彼女はわたしに対してりっぱな行ないをしたのです。

11 あなた方にとって,貧しい人たちは常にいますが,わたしは常にいるわけではないからです。12 この女が,この香油をわたしの体に付けたのは,わたしの埋葬のための準備としてそうしたのです。13 あなた方に真実に言いますが,世界中どこでもこの良いたよりが宣べ伝えられる所では,この女のしたことも,彼女の記念として語られるでしょう」。

14 その時,十二人の一人で,ユダ・イスカリオテと呼ばれる者が,祭司長たちのところに行って,15 こう言った。「彼を裏切ってあなた方に渡せば,わたしに何をくれますか」。彼らは銀三十枚を彼に[与えることを]定めた。16 それで,その時以後,彼は[イエス]を裏切って渡す良い機会をうかがいつづけた。

17 無酵母パンの最初の日 (無酵母パンの祭りはニサン15-21日で、ニサン15日の祭りの初日は、無発酵パンと焼いた子羊の肉を食べる過越の食事から始まります。),弟子たちがイエスのところに来て,こう言った。「過ぎ越しの食事 (ニサン15日) をなさるため,わたしたちがどこに準備するようお望みですか」。18 [イエス]は言われた,「市内に入ってこれこれの人のところに行き,こう言いなさい。師が,『わたしの定めの時が近づきました。わたしは弟子たちと共にあなたの家で過ぎ越し (ニサン14-15日) を祝います』と言っておられますと」。19 それで弟子たちはイエスが命じたとおりに行なって,過ぎ越しの用意を整えた。(イエスは主の夕食をニサン14日の日没後に弟子たちと行いましたので、ニサン13日に弟子たちを派遣して準備を整えたことになります。)

20 さて,夕方になってから (ニサン14日),[イエス]は十二弟子と共に食卓について横になっておられた。21 彼らが食べている間に,[イエス]はこう言われた。「あなた方に真実に言いますが,あなた方のうちの一人がわたしを裏切るでしょう」。22 そこで彼らはひどく悲嘆し,それぞれみんなが,「主よ,まさかわたしではありませんね」と言い始めた。

23 [イエス]は答えて言われた,「わたしと一緒に手を鉢に浸す者,それがわたしを裏切る者です。24 確かに人の子は,自分について書かれているとおりに去って行きますが,人の子を裏切るその人は災いです! その人にとっては,むしろ生まれてこなかったほうが良かったでしょう」。(キリストの死は、モーセの律法の祭りによって予表されていました。)

25 彼をまさに裏切ろうとしていたユダが答えて言った,「ラビ,まさかわたしのことではありませんね」。[イエス]は彼に言われた,「あなた自身が[そう]言いました」。

26 彼らが食事を続けていると,イエスはパンを取り,祝とうを述べてからそれを割き,弟子たちに与えて,こう言われた。「取って,食べなさい。これはわたしの体を表わしています」。

27 また,杯を取り,感謝をささげてからそれを彼らに与え,こう言われた。「あなた方はみな,それから飲みなさい。28 これはわたしの『契約の血』を表わしており,それは,罪の許しのため,多くの人のために注ぎ出されることになっているのです。(主の晩餐は、日付において、またその意味のおいてもニサン15日に始まる無酵母パンの祭りの過ぎ越しの食事ではありません。)

29 しかしあなた方に言いますが,わたしの父の王国であなた方と共にそれの新しいものを飲むその日まで,わたしは今後決してぶどうの木のこの産物を飲みません」。

30 最後に,賛美を歌ってから,彼らはオリーブ山に出て行った。(主の晩餐はニサン14日に行われました。)

31 それからイエスは彼らにこう言われた。「今夜 (ニサン14日),あなた方は皆わたしに関してつまずくでしょう。『わたしは牧者を打つ。すると,群れの羊は散り散りになるであろう』と書いてあるからです。32 しかしわたしは,よみがえらされた後 (ニサン16日),あなた方に先立ってガリラヤに行きます」。

33 しかしペテロは答えて言った,「ほかのみんながあなたに関してつまずいても,わたしは決してつまずきません!」

34 イエスは彼に言われた,「あなたに真実に言っておきますが,今夜 (ニサン14日),おんどりが鳴く前に,あなたは三度わたしのことを否認するでしょう」。35 ペテロは言った,「たとえ共に死なねばならないとしても,わたしは決してあなたのことを否認したりはしません」。ほかの弟子たちもみな同じことを言った。

36 それから,イエスは彼らと共にゲッセマネと呼ばれる所に来て,弟子たちにこう言われた。「わたしがあちらへ行って祈りをする間,ここに座っていなさい」。37 そして,ペテロとゼベダイの二人の子を連れて行かれたが,ご自分は非常に悲しみ,かつひどく苦悩し始められた。38 それから彼らにこう言われた。「わたしの魂は深く憂え悲しみ,死なんばかりです。ここにとどまって,わたしと共にずっと見張っていなさい」。

39 そして少し進んで行き,うつ伏してこう祈られた。「わたしの父よ,もしできることでしたら,この杯をわたしから過ぎ去らせてください。それでも,わたしの望むとおりにではなく,あなたの望まれるとおりに」。

40 それから弟子たちのところに来られたが,彼らが眠っているのを見て,ペテロにこう言われた。「あなた方は,わたしと共に一時間見張っていることもできなかったのですか。41 ずっと見張っていて絶えず祈り,誘惑に陥らないようにしていなさい。もとより,霊ははやっても,肉体は弱いのです」。

42 [イエス]は再び,二度目に離れて行って,こう祈られた。「わたしの父よ,これが,わたしが飲まないでは過ぎ去ることのできないものでしたら,あなたのご意志が成るようにしてください」。

43 それから再び来て,彼らが眠っているのをご覧になった。彼らの目は重くなっていたのである。44 それで彼らを残してまた離れて行き,三度目の祈りをして,もう一度同じ言葉を語られた。45 それから弟子たちのところに来て,こう言われた。「このような時に,あなた方は眠って休んでいる! 見よ,人の子が裏切られて罪人たちの手に渡される時刻が近づきました。46 立ちなさい。行きましょう。見よ,わたしを裏切る者が近づいて来ました」。47 すると,[イエス]がまだ話しておられるうちに,見よ,十二人の一人であるユダがやって来た。そして,剣やこん棒を持ち,祭司長および民の年長者たちのもとから来た大群衆が彼と一緒であった。

48 さて,[イエス]を裏切る者は,「だれであれわたしが口づけするのがその人だ。それを拘引せよ」と言って,彼らと合図を決めてあった。49 それで彼はまっすぐイエスのところに寄って行き,「ラビ,こんにちは」と言って,いとも優しく口づけした。

50 しかしイエスは,「君,何のためにここにいるのか」と言われた。その時,彼らが進み出,イエスに手をかけて拘引した。

51 ところが,見よ,イエスと共にいた者の一人が,手を伸ばして自分の剣を抜き,大祭司の奴隷に撃ちかかってその耳を切り落とした。52 その時イエスは彼に言われた,「あなたの剣を元の所に納めなさい。すべて剣を取る者は剣によって滅びるのです。

53 それともあなたは,わたしが父に訴えて,この瞬間に十二軍団以上のみ使いを備えていただくことができないとでも考えるのですか。54 そのようにしたなら,必ずこうなると[述べる]聖書はどうして成就するでしょうか」。55 その折,イエスは群衆にこう言われた。「あなた方は,わたしを捕縛するのに,強盗に対するように剣やこん棒を持って出て来たのですか。日々わたしは神殿の中に座って教えていたのに,あなた方はわたしを拘引しませんでした。56 しかし,このすべては,預言者たちの[記した]聖句が成就するために起きたのです」。その時,弟子たちはみな彼を捨てて逃げて行った。(実体であるイエスは、律法と預言者たちが予表したすべてを成就しました。)

57 イエスを拘引した者たちは,彼を大祭司カヤファのところに引いて行った。そこに書士や年長者たちが集まっていた。58 しかしペテロは,かなり離れてあとに付いて行き,大祭司[の家]の中庭まで来た。そして中に入ったのち,成り行きを見ようとしてその家の従者たちと一緒に座っていた。

59 一方,祭司長たちおよびサンヘドリン全体は,イエスを死に処するため,彼に対する偽証を探し求めていた。60 だが,偽りの証人が大ぜい進み出たにもかかわらず,彼らは何一つ見いだせなかった。後に二人の者が進み出て,61 こう言った。「この人は,『神の神殿を壊して,それを三日で建て直せる』と言いました」。

62 すると,大祭司が立ち上がって彼に言った,「何も答えはないのか。これらの者があなたに不利な証言をしていることはどうなのか」。63 しかしイエスは黙っておられた。それで大祭司は言った,「生ける神にかけて誓って言え,あなたは神の子キリストなのかどうか」。64 イエスは言われた,「あなた自身が[そう]言いました。それでも,あなた方に言っておきますが,今後あなた方は,人の子が力の右に座り,また天の雲に乗って来るのを見るでしょう」。

65 すると,大祭司は自分の外衣を引き裂いて言った,「この者は冒とくした! このうえ証人が必要だろうか。見てください,あなた方は今,冒とくの言葉を聞いたのです。66 あなた方の意見はどうでしょうか」。「彼は死に服すべきだ」と彼らは返答した。67 それから彼らは[イエス]の顔につばをかけ,こぶしで殴りつけた。ほかの者たちは顔を平手で打って,68 こう言った。「キリストよ,わたしたちに預言せよ。お前を打ったのはだれか」。

69 さて,ペテロは外で中庭に座っていた。すると,ひとりの下女がやって来て,「あなたも,ガリラヤ人のイエスと一緒にいました!」と言った。70 しかし彼はみんなの前でそれを否定し,「あなたが何のことを話しているのか,わたしには分からない」と言った。71 彼が門舎のところに出て行くと,別の女が彼に気づき,そこにいる者たちに,「この人はナザレ人のイエスと一緒にいました」と言った。72 すると,彼は再びそれを否定し,「わたしはその人を知らない!」と誓って[言った]。73 しばらくのち,周りに立っていた者たちが寄って来て,ペテロに言った,「確かにあなたも彼らの一人だ。現に,あなたのなまりがあなたのことを明かしているではないか」。74 その時,彼は,「わたしはその人を知らないのだ!」と[言って],のろったり誓ったりし始めた。するとすぐにおんどりが鳴いた。75 それでペテロは,「おんどりが鳴く前に,あなたは三度わたしのことを否認するでしょう」と言われたイエスのことばを思い出した。そして,外に出て,激しく泣いた。(ニサン14日の夜明けごろ)

マタイ27章
1 朝になってから (ニサン14日の明け方, マルコ 15:1),祭司長と民の年長者たち全員は,イエスを死刑にしようと協議した。2 そして,彼を縛ってから,引いて行って,総督ピラトに引き渡した。

3 その時,[イエス]を裏切ったユダは,彼が罪に定められたのを見て悔恨の情を感じ,銀三十枚を祭司長と年長者たちに返して,4 「わたしは義の血を売り渡して罪をおかした」と言った。彼らは,「それがわたしたちにどうしたというのか。あなたが処置すべきことだ!」と言った。5 それで彼はその銀を神殿に投げ込んで引き下がり,去って行って首をつって死んだ。6 しかし祭司長たちはその銀を取り,「これを聖なる宝物庫に入れることは許されない。これは血の代価だから」と言った。7 相談したのち,彼らは,見知らぬ人の埋葬のためにそれで陶器師の畑を買った。8 それゆえ,その畑は今日この日に至るまで,「血の畑」と呼ばれている。9 この時,預言者エレミヤを通して語られたことが成就した。こう言われていた。「そして彼らは,値をつけられた人,つまりイスラエルの子らのある者たちが値を定めた者の代価である銀三十枚を取り,10 YHWHがわたしに命令されたところに従い,陶器師の畑のためにそれを与えた」。

11 さて,イエスは総督の前に立った。(ニサン14日の 6:00 am ごろ, マルコ 15:1) すると総督は彼にこう質問した。「あなたはユダヤ人の王なのか」。イエスは,「あなた自身が[そう]言っています」とお答えになった。12 しかし,祭司長と年長者たちから訴えられている間,何の答えもされなかった。13 そこでピラトは言った,「彼らがあなたに不利な証言をいかに多く行なっているか,あなたには聞こえないのか」。14 それでも彼に答えず,一言も[お答えにならなかった]。そのため総督はたいへん不思議に思った。

15 さて,祭りの度に,群衆の望む囚人ひとりを釈放するのが総督の習慣であった。16 ちょうどその時,彼らにはバラバと呼ばれる名うての囚人がいた。17 ゆえに,彼らが集まった時,ピラトはこう言った。「あなた方はどちらの者を釈放して欲しいのか。バラバか,それともキリストと言われるイエスか」。18 彼らがそねみのために[イエス]を引き渡したことに気づいていたのである。

19 さらに,彼が裁きの座に座っている間に,その妻が[人を]遣わして,こう言った。「その義人にかかわらないでください。わたしは今日,その人のために夢の中でとても苦しんだのです」。20 しかし,祭司長と年長者たちは,群衆がバラバを求め,イエスのほうを滅ぼさせるように説きつけた。

21 さて,総督は彼らにこたえて言った,「あなた方は,二人のうちどちらを釈放して欲しいのか」。彼らは,「バラバを」と言った。22 ピラトは言った,「では,キリストと言われるイエスはどうするのか」。彼らは皆,「杭につけろ!」と言った。23 [ピラト]は言った,「彼がどんな悪事をしたというのか」。それでも彼らは,「杭につけろ!」と,いよいよ叫びつづけた。

24 それが無駄であり,むしろ騒動になってくるのを見たピラトは,水を取って群衆の前で手を洗い,「わたしはこの[人の]血について潔白である。あなた方自身が処置をとらねばならない」と言った。25 すると,民はみな答えて言った,「彼の血はわたしたちとわたしたちの子供とに臨んでもよい」。

26 そこで[ピラト]はバラバを彼らに釈放し,イエスのほうは,むちで打たせてから,杭につけるために渡した。

27 それから,総督の兵士たちはイエスを総督の官邸内に連れて行き,全部隊を彼のところに集めた。28 そして,彼の衣をはいで緋色の外とうを掛け,29 いばらで冠を編んでその頭に載せ,葦をその右手に[持たせた]。そして彼の前にひざまずき,「こんにちは,ユダヤ人の王よ!」と言って愚弄した。30 それから,彼につばをかけ,その葦を取って頭をたたきはじめた。31 最後に,[イエス]を愚弄し終えた彼らは,外とうを取りのけて彼の外衣を着せ,杭につけるために引いて行った。

32 彼らは,出て行く際に,シモンという名のキレネ生まれの人を見つけた。彼らはこの男を奉仕に徴用して[イエス]の苦しみの杭を持たせた。33 そして,ゴルゴタ,すなわち“どくろの場所”と呼ばれる所に来た時,34 彼らは胆汁を混ぜたぶどう酒を[イエス]に与えて飲ませようとした。しかし,その味を見たのち,飲もうとはされなかった。35 [イエス]を杭につけてから (ニサン14日 9:00 am, マルコ 15:25),彼らはくじを引いてその外衣を分配し,36 それから,座ったまま,そこで彼を見守っていた。37 また彼らは,「これはユダヤ人の王イエス」と記した罪状を彼の頭上に掲げた。

38 この時,二人の強盗が彼と一緒に杭につけられ,一人はその右に一人はその左に[置かれた]。39 それで,通行人たちは彼のことをあしざまに言いはじめ,頭を振って 40 こう言った。「神殿を壊して三日でそれを建てると称する者よ,自分を救ってみろ! 神の子なら,苦しみの杭から下りて来い!」

41 同じように祭司長たちも,書士や年長者たちと一緒に彼を愚弄しはじめて,こう言った。42 「ほかの者は救ったが,自分は救えないのだ! 彼はイスラエルの王だ。今,苦しみの杭から下りて来てもらおうではないか。そうしたら我々も彼を信じよう。43 彼は神に頼ったのだ。[神]が彼を必要とされるのなら,いま[神]に救い出してもらうがよい。『わたしは神の子だ』と言ったのだから」。44 一緒に杭につけられた強盗たちまでが,同じようにして彼のことを非難しはじめた。

45 第六時 (ニサン14日 12:00 正午) 以後,闇が全土に垂れこめて,第九時 (ニサン14日 15:00 pm) にまで及んだ。46 第九時 (ニサン14日 15:00 pm) ごろ,イエスは大声で呼ばわって,「エリ, エリ, ラマ サバクタニ」,つまり,「わたしの神,わたしの神,なぜわたしをお見捨てになりましたか」と言われた。47 これを聞いて,そこに立っていた者の幾人かは,「この人はエリヤを呼んでいるのだ」と言いはじめた。

48 そして彼らの一人がすぐに走って行って海綿を取り,それに酸いぶどう酒を含ませ,葦の先に付けて彼に飲ませようとした。49 しかしほかの者たちは,「構わないでおけ! エリヤが救いに来るかどうかを見よう」と言った。

[[別の者は槍を取って彼のわき腹を突き刺した。すると,血と水が出た。]]

50 イエスは再び大声で叫び,それから[ご自分の]霊をゆだねられた。

51 すると,見よ,聖なる所の垂れ幕が上から下まで二つに裂け,地は震い動き,岩塊は割れた。52 そして,記念の墓が開け,眠りについていた聖なる者の体が数多く起こされ,53 (人々は,彼がよみがえらされた後に記念の墓の間から出て来て,聖都に入ったのである)多くの人に見えるようになった。54 しかし,士官および共にイエスを見守っていた者たちは,地震と起きている事柄とを見て非常に恐れ,「確かにこれは神の子であった」と言った。

55 なおまた,そこでは大勢の女たちがやや離れた所で見ていたが,それはイエスに仕えるためガリラヤから付いて来た者たちであった。56 その中にはマリア・マグダレネ,またヤコブとヨセの母マリア,およびゼベダイの子らの母がいた。

57 さて,午後遅くなってから (ニサン14日),ヨセフという名で,自らもイエスの弟子となっていたアリマタヤのある富んだ人がやって来た。58 この人はピラトのもとに行って,イエスの体を頂きたいと願い出た。そこでピラトはそれを渡すように命令した。59 それでヨセフは体を受け取り,それを清い上等の亜麻布に包み,60 自分の新しい記念の墓の中に横たえた。それは彼が岩塊にくりぬいたものであった。そして,その記念の墓の戸口のところに大きな石を転がしてから去って行った。61 しかし,マリア・マグダレネともう一方のマリアはそこにとどまって,墓の前に座っていた。

62 次の日 (ニサン15日の日中),それは準備[の日] (ニサン14日, 過ぎ越しの子羊を屠り、その血を戸柱に跳ねかける日) の翌日であったが,祭司長とパリサイ人たちがピラトの前に集まって,63 こう言った。「閣下,わたしどもは,あのかたり者が,まだ生きていた時分に,『三日後にわたしはよみがえらされる』と言ったのを思い出しました。64 それで,三日目 (ニサン16日) まで墓の守りを固めるように命令してください。弟子たちがやって来て彼を盗み出し,『彼は死人の中からよみがえらされたのだ!』などと民に言いふらすようなことのないためです。この最後のかたりは,最初のものより悪い結果になってしまうでしょう」。65 ピラトは言った,「あなた方には警備隊がある。行って,あなた方の知る限りの方法で守り固めるがよい」。66 それで彼らは出かけて行き,石に封印をし,また警備隊を置いて墓の守りを固めた。

Passover and The Lord’s Evening Meal

マタイ28章
1 安息日 (ニサン15日の無酵母パンの祭りの初日) ののち,週の最初の日 (ニサン16日) が明るくなりかけたころ,マリア・マグダレネともう一方のマリアが墓を見に来た。

2 すると,見よ,大きな地震が起きた後であった。YHWHのみ使いが天から下り,近づいて石を転がしのけ,その上に座っていたのである。3 その外見は稲妻のようであり,その衣服は雪のように白かった。4 そして,見張りの者たちは,彼に対する恐れのためにおののいて,死人のようになっていた。

5 しかしみ使いは答えて女たちに言った,「あなた方は恐れてはなりません。あなた方が杭につけられたイエスを捜していることを,わたしは知っているのです。6 彼はここにはいません。彼が言ったとおり,よみがえらされたのです。さあ,彼の横たわっていた場所を見なさい。7 それから,急いで行って,彼が死人の中からよみがえらされたことを,その弟子たちに告げなさい。そして,見よ,彼はあなた方に先立ってガリラヤに行きます。あなた方はそこで彼を見るでしょう。見よ,わたしはあなた方に告げました」。

8 それで,彼女たちは急いで記念の墓を去り,恐れと大きな喜びとを抱きつつ,弟子たちに報告するために走った。9 すると,見よ,イエスが彼女たちに出会って,「こんにちは!」と言われた。彼女たちは近づいてその足を抱き,彼に敬意をささげた。10 その時,イエスはこう言われた。「恐れることはありません! 行って,わたしの兄弟たちに報告し,彼らがガリラヤに行くようにしなさい。彼らはそこでわたしを見るでしょう」。

11 彼女たちがその道にある間に,見よ,警備隊のある者たちが市内に行き,起きたことすべてを祭司長たちに報告した。12 それでこれらの者は,年長者たちと集まって相談したのち,十分な数の銀をその兵士たちに与えて,13 こう言った。「『夜中 (ニサン15日) にその弟子たちが来て,自分たちが眠っている間に彼を盗んでいった』と言え。14 そして,もしこれが総督の耳に入るなら,我々が[彼に]説いて,あなた方には心配がないようにする」。15 そこで彼らはその銀を受け取り,諭されたとおりにした。それで,この話が今日この日に至るまでユダヤ人の間に広まっているのである。

16 しかしながら,十一人の弟子はガリラヤに赴き,イエスが彼らのために取り決めた山に行った。17 そして,[イエス]を見ると,彼らは敬意をささげた。しかし,ある者たちは疑った。18 すると,イエスは近づいて来て,彼らにこう話された。「わたしは天と地におけるすべての権威を与えられています。19 それゆえ,行って,すべての国の人々を弟子とし (キリストの罪のない死による新しい契約が発効して以来、神はすべての国の人々を扱っています。),わたしの名において彼らにバプテスマを施し,20 わたしがあなた方に命令した事柄すべてを守り行なうように教えなさい。そして,見よ,わたしは事物の体制の終結の時までいつの日もあなた方と共にいるのです」。


マルコ14章
1 さて,過ぎ越し (ニサン14日に過ぎ越しの子羊を屠る) と無酵母パン[の祭り] (ニサン15-21日, ニサン15日の祭りの初日は、無酵母パンと焼いた子羊の肉を食べる過ぎ越しの食事で始まる。) は二日後であった。そして祭司長と書士たちは,どうしたらうまく仕組んで彼を捕らえて殺せるかを探り求めていた。2 彼らは,「祭りの時 (ニサン15-21日) はいけない。もしかすると民の騒動があるかもしれない」と繰り返し言っていたのである。

3 そして,[イエス]がベタニヤでらい病人シモンの家にいて,横になって食事をしておられた時であったが,ひとりの女が,雪花石こうの容器に入った香油を携えてやって来た。本物のナルドであり,非常に高価なものであった。彼女は雪花石こうの容器を割って開け,それを彼の頭に注ぎはじめた。

4 すると,互いに憤慨した様子を示す者たちがいて,「どうしてこんな香油の無駄づかいをしたのか。5 この香油なら三百デナリ以上で売れたし,そうすれば貧しい人たちに施すこともできたのに!」と[言った]。そして,彼女のことを非常に不快に思っていた。

6 しかしイエスは言われた,「彼女をそのままにしておきなさい。なぜあなた方は彼女を困らせようとするのですか。彼女はわたしに対してりっぱな行ないをしたのです。7 あなた方にとって,貧しい人たちは常におり,あなた方はいつでも望む時に彼らに善を行なえますが,わたしは常に共にいるわけではないからです。8 彼女は自分にできることをしました。埋葬を見越してわたしの体に前もって香油を付けようとしたのです。9 あなた方に真実に言いますが,世界中どこでも良いたよりが宣べ伝えられる所では,この女のしたことも,彼女の記念として語られるでしょう」。

10 それから,十二人の一人,ユダ・イスカリオテは,[イエス]を裏切って渡すため,祭司長たちのところに行った。11 それを聞くと,彼らは歓び,彼に銀子を与えることを約束した。それで彼は,どうしたら[イエス]をうまく裏切って渡せるかを探るようになった。

12 さて,無酵母パンの最初の日, (ニサン14日の夕方からつづくニサン15日の夕方, その夜、ニサン15日の始めに、無酵母パンと焼いた子羊の肉を食べる過ぎ越しの食事がある。) それは慣例として過ぎ越し[のいけにえ]を犠牲にする時 (ニサン14日の夕方近く) であったが,弟子たちが彼にこう言った。「過ぎ越しの食事 (ニサン14日の夕方からつづくニサン15日の夕食) をなさるため,わたしたちがどこに行って準備をするようにお望みですか」。13 そこで彼は弟子の二人を遣わしてこう言われた。「市内に入りなさい。そうすれば,水を土器に入れて運んでいる男があなた方に出会うでしょう。そのあとに付いて行きなさい。14 そして,彼の入って行くのがどこであっても,そこの家あるじにこう言いなさい。『師が言われます,「弟子たちと一緒に過ぎ越しの食事ができる,わたしのための客室はどこでしょうか」と』。15 そうすると彼は準備の整った,大きな階上の部屋を見せてくれるでしょう。そこでわたしたちのために準備をしなさい」。16 それで弟子たちは出て行った。そして市に入ってみると,[イエス]が彼らに言われたとおりであった。こうして彼らは過ぎ越しの準備をした。(イエスは主の夕食をニサン14日の日没後に弟子たちと行いましたので、ニサン13日に弟子たちを派遣して準備を整えたことになります。)

17 夕方になってから (ニサン14日),[イエス]は十二人と共に来られた。18 そして,彼らが食卓の前に横になって食べていた時,イエスはこう言われた。「あなた方に真実に言いますが,あなた方の一人で,わたしと一緒に食事をしている者が,わたしを裏切るでしょう」。19 彼らは悲嘆し,一人ずつ,「まさかわたしではありませんね」と言い始めた。20 [イエス]は彼らに言われた,「それは十二人の一人で,わたしと一緒に共同の鉢に[手を]浸している者です。21 確かに人の子は,自分について書かれているとおりに去って行きますが,人の子を裏切るその人は災いです! その人にとっては,むしろ生まれてこなかったほうがよかったでしょう」。(キリストの死は律法によって予示されていました。)

22 そして,彼らが食事を続けていると,[イエス]はパンを取って祝とうを述べ,それを割いて彼らに与え,「取りなさい。これはわたしの体を表わしています」と言われた。23 また,杯を取り,感謝をささげてから,それを彼らにお与えになった。それで彼らは皆その[杯]から飲んだ。24 そうして[イエス]は彼らに言われた,「これはわたしの『契約の血』を表わしています。それは多くの人のために注ぎ出されることになっています。25 あなた方に真実に言いますが,神の王国でそれの新しいものを飲むその日まで,わたしはぶどうの木の産物をもう決して飲まないでしょう」。26 最後に,賛美を歌ってから,彼らはオリーブ山に出て行った。(主の晩餐はニサン14日に起きました。)

27 それからイエスは彼らにこう言われた。「あなた方はみなつまずくでしょう。『わたしは牧者を打つ。すると,羊は散り散りになるであろう』と書いてあるからです。28 しかしわたしは,よみがえらされた後,あなた方に先立ってガリラヤに行きます」。29 しかしペテロは言った,「たとえほかのみんながつまずいても,わたしは[つまずき]ません」。30 するとイエスは言われた,「あなたに真実に言っておきますが,あなたは今日,そうです,今夜 (ニサン14日),おんどりが二度鳴く前に,あなたでさえ三度わたしのことを否認するでしょう」。31 しかし彼はしきりにこう言うのであった。「あなたと一緒に死なねばならないとしても,わたしは決してあなたのことを否認したりはしません」。また,ほかの者たちもみな同じことを言いだした。

32 こうして彼らはゲッセマネという所に来た。そして[イエス]は弟子たちにこう言われた。「わたしが祈りをする間,ここに座っていなさい」。33 それから,ペテロとヤコブとヨハネを一緒に連れて行かれたが,ご自分はぼう然とされ,かつひどく苦悩し始められた。

34 そして彼らに言われた,「わたしの魂は深く憂え悲しみ,死なんばかりです。ここにとどまって,ずっと見張っていなさい」。35 そして,少し進んで行って地面に伏し,もしできることなら,その時が自分から過ぎ去るようにと祈りはじめられた。

36 そしてさらにこう言われた。「アバ,父よ,あなたにはすべてのことが可能です。この杯をわたしから取り除いてください。それでも,わたしの望むことではなく,あなたの望まれることを」。

37 それから来て,彼らが眠っているのを見て,ペテロにこう言われた。「シモンよ,あなたは眠っているのですか。一時間見張っている力もなかったのですか。38 あなた方は,ずっと見張っていていつも祈り,誘惑に陥らないようにしていなさい。もとより,霊ははやっても,肉体は弱いのです」。

39 それから[イエス]は再び離れて行き,同じ言葉で祈られた。40 そしてもう一度来て,彼らが眠っているのをご覧になった。彼らの目は重く垂れていたのである。そのため彼らは[イエス]に何と答えてよいか分からなかった。41 それから,[イエス]は三度目に来て,彼らに言われた,「このような時に,あなた方は眠って休んでいる! もう十分です! 時刻が来ました! 見よ,人の子は裏切られて罪人たちの手に渡されます。42 立ちなさい。行きましょう。見よ,わたしを裏切る者が近づいて来ました」。

43 するとすぐ,[イエス]がまだ話しておられるうちに,十二人の一人であるユダが現われた。そして,剣やこん棒を持ち,祭司長・書士・年長者たちのもとから来た群衆が一緒であった。44 さて,[イエス]を裏切る者は,「だれであれわたしが口づけするのがその人だ。それを拘引して,しっかりと引いて行け」と言って,彼らと合図を打ち合わせてあった。

45 そこで彼はまっすぐに寄って来て[イエス]に近づき,「ラビ!」と言って,いとも優しく口づけした。46 そこで彼らは[イエス]に手をかけて拘引した。

47 しかし,そばに立っていた者のひとりが剣を抜いて大祭司の奴隷に撃ちかかり,その耳を切り落とした。48 しかしイエスはこたえて彼らに言われた,「あなた方は,わたしを捕縛するのに,強盗に対するように剣やこん棒を持って出て来たのですか。49 日々わたしは神殿であなた方と共にいて教えていたのに,あなた方はわたしを拘引しませんでした。だが,これは聖書が成就するためなのです」。(律法と預言者に書かれてあるすべては、イエスに成就しました。)

50 すると,[弟子たち]はみな彼を捨てて逃げて行った。51 しかし,裸の[体]にりっぱな亜麻布の衣を着けたある若者が彼のすぐあとに付いて行った。それで彼らは[この若者]を捕まえようとしたが,52 彼は亜麻布の衣をあとに残して,裸のまま逃げてしまった。

53 さて,彼らはイエスを大祭司のところに引いて行った。そして,祭司長・年長者・書士たち全員が集合した。54 しかしペテロは,かなり離れたところから彼のあとに付いて行き,大祭司[の家]の中庭に入った。そして,その家の従者たちと一緒に座って,明るい火の前で身を暖めていた。

55 一方,祭司長たちおよびサンヘドリン全体は,イエスを死に処するため,彼に不利な証言を探し求めていたが,何も見いだせなかった。56 大勢の者が彼に不利な偽証をしていたのであるが,その証言は一致していなかったのである。57 また,ある者たちが立ち上がり,彼に不利な偽証をしてこう言うのであった。58 「わたしたちは,彼が,『わたしは手で作ったこの神殿を壊し,手で作ったのではない別のものを三日で建てる』と言うのを聞きました」。59 しかし,こうした点についても彼らの証言は一致していなかった。

60 最後に,大祭司が彼らの真ん中に立ち,イエスに質問して,こう言った。「何も返答しないのか。これらの者があなたに不利な証言をしていることはどうなのか」。61 しかし[イエス]は黙ったままで,少しも返答されなかった。大祭司が再び質問をはじめてこう言った。「あなたはほめたたえるべき方の子キリストか」。62 するとイエスは言われた,「わたしは[その者]です。そしてあなた方は,人の子が力の右に座り,また天の雲と共に来るのを見るでしょう」。

63 すると,大祭司は自分の内衣を引き裂いて,こう言った。「このうえ証人が必要だろうか。64 あなた方は,冒とくのことばを聞いたのです。あなた方には何がはっきりしていますか」。彼らは皆,[イエス]を死に服すべき者と断罪した。65 すると,ある者たちは彼につばをかけ,また彼の顔をすっぽり覆ってこぶしで殴り,「預言せよ!」などと言い始めた。そして,廷吏たちは彼の顔を平手で打ってから,彼を連れて行った。

66 さて,ペテロが下の中庭にいたところ,大祭司の下女の一人がやって来た。67 そして,ペテロが身を暖めているのを見ると,彼をまともに見て,「あなたも,ナザレ人のこのイエスと一緒にいました」と言った。68 しかし彼はそれを否定し,「わたしはあの人を知らないし,あなたの言っていることも理解できない」と言って,入口の間のほうに出て行った。69 その所で下女は彼を見つけ,そばに立っている者たちに,「この人は彼らの一人です」と,また言い始めた。70 彼は再びそれを否定するのであった。それからしばらくして,そばに立っていた者たちがまたもやペテロに向かって言いだした,「確かにあなたは彼らの一人だ。現に,あなたはガリラヤ人ではないか」。71 しかし彼は,「わたしはあなた方の話しているこの人を知らないのだ」と[言って],のろったり誓ったりし始めた。72 するとすぐにおんどりが二度目に鳴いた。それでペテロは,「おんどりが二度鳴く前に,あなたは三度わたしのことを否認するでしょう」と,イエスが自分に言ったことばを思い浮かべた。そして,くずおれて泣きだした。(この出来事はニサン14日の明け方に起きました。)

マルコ15章
1 こうして明け方 (ニサン14日) になるとすぐ,祭司長たちは,年長者や書士たちと共に,すなわち,サンヘドリン全体が協議をした。そして,イエスを縛って引いて行き,ピラトに引き渡した。2 そこで,ピラトは彼にこう質問した。「あなたはユダヤ人の王なのか」。[イエス]は答えて言われた,「あなた自身が[そう]言っています」。3 しかし,祭司長たちは多くの事についてさらに彼を訴えた。4 そこでピラトは再び質問をはじめて,こう言った。「何も答えることはないのか。彼らがあなたに対してどれほど多くの罪状を挙げているかを見なさい」。5 しかしイエスはそれ以上何もお答えにならなかった。そのためピラトは驚嘆するようになった。

6 ところで,[ピラト]は祭りの度に囚人一人,人々が請願するところの者を釈放するのが常であった。7 この時には,バラバと称する者が暴動を起こした者たちと一緒につながれていた。それは暴動のさいに殺人を犯した者たちであった。8 それで群衆がやって来て,[ピラト]が常々彼らに行なってきたところにしたがって請願を始めた。9 ピラトは彼らにこたえて言った,「あなた方はユダヤ人の王を釈放して欲しいのか」。10 祭司長たちがそねみのために[イエス]を引き渡したことに気づいていたのである。

11 しかし祭司長たちは,代わりにバラバを釈放させようとして群衆をあおった。12 ピラトは再び答えて彼らに言うのであった,「では,あなた方がユダヤ人の王と呼ぶ者はどうしたらよいのか」。13 彼らは再び叫んで,「杭につけろ!」と[言った]。14 しかしピラトはなおも彼らに言った,「彼がどんな悪事をしたというのか」。それでも彼らは,「杭につけろ!」といよいよ激しく叫んだ。15 そこでピラトは,群衆を満足させることを願ってバラバを彼らに釈放し,イエスをむちで打たせてから,杭につけるために渡した。

16 そこで,兵士たちは彼を中庭に,つまり総督の官邸内に引いて行った。そして,全部隊を呼び集めてから,17 彼に紫[の衣]をまとわせ,いばらの冠を編んでかぶらせた。18 そして,「こんにちは,ユダヤ人の王よ!」と[言って]あいさつを始めた。19 また彼らは,葦で彼の頭をたたいたり,つばをかけたり,ひざをかがめて敬意のしぐさをしたりするのであった。20 最後に,[イエス]を愚弄し終えた彼らは,紫[の衣]をはいで,彼の外衣を着せた。そして,杭につけるために連れ出した。

21 また,田舎から来た通行人で,アレクサンデルとルフォスの父である,キレネのシモンという者を奉仕に徴用して,彼の苦しみの杭を持たせた。

22 こうして彼らは[イエス]をゴルゴタ[という]場所に連れて来た。これは,訳せば,“どくろの場所”という意味である。23 ここで彼らは没薬を混ぜたぶどう酒を与えようとしたが,[イエス]はそれを受けようとされなかった。

24 それから,彼らは[イエス]を杭につけ,また,彼の外衣に関して,だれが何を取ろうかと,くじを引いてそれを分配した。25 時はすでに第三時 (ニサン14日 9:00 am) であり,彼らは[イエス]を杭につけたのである。

26 そして,彼の罪状を書き込んで「ユダヤ人の王」と記したものが上方に[掲げられた]。27 さらに,彼らは[イエス]と共に二人の強盗を杭につけ,一人をその右に,一人をその左に[置いた]。28 ―― 29 すると,そばを通る者たちは彼に向かってあしざまに言い,頭を振ってこう言うのであった。「ははあ,神殿を壊して,三日でそれを建てると称する者よ,30 苦しみの杭から下りて来て自分を救ってみろ」。31 同じように祭司長たちも,書士たちと一緒になって愚弄し,こう言い合った。「ほかの者は救ったが,自分は救えないのだ! 32 イスラエルの王たるキリストに,いま苦しみの杭から下りて来てもらおうではないか。我々がそれを見て信ずるためだ」。一緒に杭につけられた者たちまでが,彼を非難するのであった。

33 第六時 (ニサン14日 12:00 正午) になった時,闇が全土に垂れこめて,第九時 (ニサン14日 15:00 pm) にまで及んだ。

34 そして第九時 (ニサン14日 15:00 pm) に,イエスは,「エリ, エリ, ラマ サバクタニ」と大声で呼ばわられた。これは,訳せば,「わたしの神,わたしの神,なぜわたしをお見捨てになりましたか」という意味である。

35 すると,近くに立っていた者の幾人かは,それを聞いて,「見ろ,エリヤを呼んでいるのだ」と言いだした。36 しかし,ある者は走って行って海綿に酸いぶどう酒を含ませ,それを葦の先に付けて彼に飲ませようとし,「構わないでおけ! エリヤが下ろしに来るかどうかを見よう」と言った。

37 しかし,イエスは大きな叫び声を上げて,息を引き取られた。

38 すると,聖なる所の垂れ幕が上から下まで二つに裂けた。39 その時,そばで彼を前にして立っていた士官は,このようにして息を引き取られたのを見て,「確かにこの人は神の子であった」と言った。

40 やや離れたところでは女たちも見ていたが,その中には,マリア・マグダレネ,それに小ヤコブとヨセの母マリア,そしてサロメがいた。41 これらは,[イエス]がガリラヤにおられた時,彼に伴って仕えていた者たちであった。また,彼と一緒にエルサレムに来ていたほかの大勢の女たちがいた。

42 さて,すでに午後遅く (ニサン14日) なっており,しかもそれは準備[の日] (ニサン14日, 子羊をを屠り、その血を戸柱に跳ねかける日),つまり安息日 (ニサン15日, 過ぎ越しの食事で始まる無酵母パンの祭りの初日) の前日であったので,43 議会の聞こえのよい議員であるアリマタヤのヨセフがやって来た。自らも神の王国を待つ人であった。彼は勇気を出してピラトの前に行き,イエスの体を頂きたいと願い出た。44 しかしピラトは,彼がもう死んだのだろうかといぶかり,士官を呼び寄せて,彼がすでに死んだかどうかを尋ねた。45 こうして,士官から確かめた上で,遺体をヨセフに与えることにした。46 そこで[ヨセフ]は上等の亜麻布を買い,彼を下ろしてその上等の亜麻布に包み,岩塊をくりぬいた墓の中に横たえた。そして,その記念の墓の戸口のところに石を転がしておいた。47 しかし,マリア・マグダレネと,ヨセの母マリアは,彼の横たえられた所をずっと見つめていた。

マルコ16章
1 さて,安息日 (ニサン15日) が過ぎた時,マリア・マグダレネと,ヤコブの母マリア,それにサロメは,そこに来て彼に油を塗ろうとして香料を買った。2 そして,週の最初の日 (ニサン16日) の朝とても早く,記念の墓に来た。その時,太陽はすでに昇っていた。3 そして彼女たちは,「記念の墓の戸口から,だれがわたしたちのために石を転がしのけてくれるでしょうか」と言い合っていた。

4 ところが,見上げると,その石は,非常に大きなものであったのに,すでに転がしのけてあったのである。5 記念の墓の中に入ると,ひとりの若者が白の長い衣をまとって右側に座っているのが見え,彼女たちはぼう然とした。

6 その者は彼女たちに言った,「ぼう然とすることはありません。あなた方は,杭につけられたナザレ人のイエスを捜しています。彼はよみがえらされました。ここにはいません。見なさい,彼を横たえた場所です。7 しかし,行って,弟子たちとペテロに,『彼はあなた方に先立ってガリラヤに行きます。彼が話したとおり,あなた方はそこで彼を見るでしょう』と言いなさい」。8 それで,彼女たちは外に出ると,その記念の墓から逃げるようにして走った。おののきと強い感動とにとらわれていたからである。そして,だれにも,何も話さなかった。恐れに満たされていたのである。


ルカ22章
1 さて,無酵母パンの祭り (ニサン15-21日, 無酵母パンと焼いた子羊の肉の過ぎ越しの食事から始まる。),いわゆる過ぎ越し (ニサン14日, 過ぎ越しの子羊を屠る) が近づいていた。2 また,祭司長と書士たちは,[イエス]を除き去るためのうまい方法を探っていた。彼らは民を恐れていたのである。3 しかし,ユダに,つまりイスカリオテと呼ばれ,十二人の中に数えられていた者にサタンが入り込んだ。4 こうして彼は出かけて行き,祭司長および[神殿の]指揮官たちと,[イエス]を裏切って彼らに渡すうまい方法について話し合った。5 すると彼らは歓び,彼に銀子を与えることに同意した。6 それで彼は承諾し,まわりに群衆のいないときに[イエス]を裏切って彼らに渡す良い機会をうかがうようになった。

7 さて,無酵母パンの日 (ニサン15-21日, 無酵母パンと焼いた子羊の肉の過ぎ越しの食事から始まる。) が来た。それは過ぎ越し[のいけにえ]が犠牲にされねばならない[日] (ニサン14日, 過ぎ越しの子羊を屠る) であった。8 そこで[イエス]はペテロとヨハネを派遣して,こう言われた。「行って,わたしたちが食べる過ぎ越しを用意しなさい」。9 彼らは言った,「どこに用意するようにお望みですか」。10 [イエス]は彼らに言われた,「見よ,あなた方が市内に入ると,水を土器に入れて運んでいる男があなた方に会うでしょう。そのあとに付いて行って,彼の入る家に入りなさい。11 そして,その家のあるじにこう言わねばなりません。『師があなたに言っておられます,「わたしが弟子たちと一緒に過ぎ越しの食事をすることのできる客室はどこでしょうか」と』。12 するとその[人]は整えられた大きな階上の部屋を見せてくれるでしょう。そこに用意をしなさい」。13 それで彼らが出かけて行ってみると,[イエス]が言われたとおりであった。こうして彼らは過ぎ越しの用意をした。(イエスは主の夕食をニサン14日の日没後に弟子たちと行いましたので、ニサン13日に弟子たちを派遣して準備を整えたことになります。)

14 ようやくその時刻が来たとき,[イエス]は食卓について横になり,使徒たちも共に[食卓についた]。15 そして[イエス]は彼らに言われた,「わたしは,苦しみを受ける前にあなた方と一緒にこの過ぎ越しの食事をすることを大いに望んできました。(主の晩餐は、日付において、またその意味のおいてもニサン15日に始まる無酵母パンの祭りの過ぎ越しの食事ではありません。) 16 あなた方に言いますが,それが神の王国で成就するまで,わたしは二度とそれを食べないのです」。17 それから杯を受け取り,感謝をささげてからこう言われた。「これを取り,あなた方の間で順に回しなさい。18 あなた方に言いますが,今からのち,神の王国が到来するまで,わたしはぶどうの木の産物を二度と飲まないのです」。

19 また,[イエス]はパンを取り,感謝をささげてそれを割き,それを彼らに与えて,こう言われた。「これは,あなた方のために与えられるわたしの体を表わしています。わたしの記念としてこれを行ないつづけなさい」。20 また,晩さんがすんでから,杯をも同じようにして,こう言われた。「この杯は,わたしの血による新しい契約を表わしています。それはあなた方のために注ぎ出されることになっています。(主の晩餐は、ニサン14日に行われました。)

21 「しかし,見よ,わたしを裏切る者の手がわたしと共に食卓にあります。22 人の子は,定められたところにしたがってその道を行くからです。(キリストの死は、律法の祭りによって予示されていました。) しかしやはり,彼を裏切るその人は災いです!」23 そこで彼らは,自分たちのうちいったいだれがそのようなことを行なおうとしているのか,互いに論じ始めた。

24 ところが,彼らの間では,自分たちのうちでだれが一番偉いのだろうかということについても激しい論争が起こった。

25 しかし[イエス]は彼らにこう言われた。「諸国民の王たちは人々に対して威張り,人々の上に権威を持つ者たちは恩人と呼ばれています。26 ですが,あなた方はそうであってはなりません。むしろ,あなた方の間で一番偉い者は一番若い者のように,長として行動している者は奉仕する者のようになりなさい。27 というのは,食卓について横になっている者と奉仕している者では,どちらが偉いのですか。それは,食卓について横になっている者ではありませんか。しかしわたしは,奉仕する者としてあなた方の中にいるのです。

28 「しかし,あなた方はわたしの試練の間わたしに堅く付き従ってきた者たちです。29 それでわたしは,わたしの父がわたしに約束してくださったように、わたしはあなたたちに王国の約束を与えます。30 あなた方がわたしの王国でわたしの食卓について食べたり飲んだりし,また座に着いてイスラエルの十二部族を裁くようにします。

31 「シモン,シモン,見よ,サタンは,あなた方を小麦のようにふるいにかけるため,あなた方を手に入れることを要求しました。32 しかしわたしは,あなたの信仰が尽きないように,あなたのために祈願をしたのです。それであなたは,ひとたび立ち直ったなら,あなたの兄弟たちを強めなさい」。

33 すると彼は言った,「主よ,わたしはあなたと共に獄に入ることも死ぬことも覚悟しているのです」。34 しかし[イエス]は言われた,「ペテロ,あなたに言いますが,あなたがわたしを知っていることを三度否定するまで,今日,おんどりは鳴かないでしょう」。

35 [イエス]はまた彼らにこう言われた。「わたしが,財布も食物袋もサンダルも持たせずに遣わした時,あなた方は何にも不足しなかったのではありませんか」。彼らは,「はい,何にも!」と言った。36 すると[イエス]はこう言われた。「しかし今,財布のある者はそれを持ち,食物袋も同じようにしなさい。そして,剣を持っていない者は,自分の外衣を売ってそれを買いなさい。

37 あなた方に言いますが,書かれているこのこと,すなわち,『そして彼は不法な者たちと共に数えられた』ということは,わたしに成し遂げられねばならないからです。わたしに関することは成し遂げられてゆくのです」。(イエスは律法と預言で定められたすべてのことを成し遂げました。) 38 すると彼らは言った,「主よ,ご覧ください,ここに剣が二振りあります」。[イエス]は彼らに言われた,「それで十分です」。

39 外に出ると,[イエス]はいつものようにオリーブ山に行かれた。そして弟子たちもそのあとに従った。40 その場所に来ると,[イエス]は彼らにこう言われた。「誘惑に陥らないよう,祈っていなさい」。41 そしてご自身は,彼らから石を投げれば届くほどの所に離れ,ひざをかがめて祈りはじめ,42 こう言われた。「父よ,もしあなたの望まれることでしたら,この杯をわたしから取り除いてください。しかしやはり,わたしの意志ではなく,あなたの[ご意志]がなされますように」。

43 その時,ひとりのみ使いが天から現われて彼を強めた。44 しかし彼はもだえはじめ,いよいよ切に祈られた。そして,汗が血の滴りのようになって地面に落ちた。

45 やがて[イエス]は祈りを終えて立ち上がり,弟子たちのところに行かれたが,彼らが悲嘆の末にまどろんでいるのをご覧になった。46 それで彼らにこう言われた。「なぜあなた方は眠っているのですか。誘惑に陥らないよう,身を起こして祈っていなさい」。

47 [イエス]がまだ話しておられるうちに,見よ,群衆が,そして,十二人の一人でユダと呼ばれる者がその先頭に立って[やって来た]。そして彼は口づけをしようとしてイエスに近づいた。48 しかしイエスは彼に言われた,「ユダ,あなたは人の子を口づけして裏切るのですか」。

49 彼のまわりにいた者たちは,起ころうとする事を見て,「主よ,剣で撃ちましょうか」と言った。50 そのうちのある者は実際に大祭司の奴隷に撃ちかかり,その右の耳を切り落とした。

51 しかしイエスはそれにこたえて,「それまでにしなさい」と言われた。そして,その耳に触れて,おいやしになった。52 それからイエスは,自分のところにやって来た祭司長・神殿の指揮官・年長者たちにこう言われた。「あなた方は,強盗に対するように,剣やこん棒を持って出て来たのですか。53 わたしが日々あなた方と共に神殿にいた時には,あなた方はわたしに向かって手を出しませんでした。しかし,今はあなた方の時,闇の権威なのです」。

54 その時,彼らは[イエス]を捕縛し,引いて大祭司の家の中に連れて来た。しかし,ペテロはやや離れてあとに付いて行った。55 人々が中庭の中央に火をたいて一緒に座った時,ペテロもその中に座っていた。56 しかしある下女は,彼が明るい火のそばに座っているのを見,彼をじっと見つめてこう言った。「この人も彼と一緒にいました」。57 しかし彼はそれを否定して,「女よ,わたしはあの人を知らない」と言った。58 それからしばらくして,別の者が彼を見て言った,「あなたも彼らの一人だ」。しかしペテロは,「人よ,わたしはそうではない」と言った。59 それから一時間ほどたった後,ほかのある[人]が強く言い張るのであった,「確かにこの[人]も彼と一緒にいた。現に,ガリラヤ人ではないか!」60 しかしペテロは言った,「人よ,わたしはあなたの言うことが分からない」。するとすぐ,彼がまだ話しているうちに,おんどりが鳴いた。

61 そして,主は振り向いてペテロをご覧になった。ペテロは,「今日,おんどりが鳴く前 (ニサン14日の夜明け前) に,あなたはわたしのことを三度否認するでしょう」と言われた主のことばを思い浮かべた。62 そして,外に出て,激しく泣いた。

63 さて,[イエス]を拘引した人々は彼を殴って愚弄しはじめた。64 そして,彼にすっぽり物をかぶせて,「預言せよ,お前を打ったのはだれか」などと言うのであった。65 そして,彼に対して冒とくとなるほかの多くのことを言った。

66 やがて夜が明けた時 (ニサン14日) ,民の年長者会が,つまり祭司長と書士たちとが共に集まった。そして,彼を自分たちのサンヘドリン広間の中に引き出して,こう言った。67 「もしあなたがキリストであるなら,わたしたちに言いなさい」。しかし[イエス]は彼らに言われた,「たとえわたしが言ったとしても,あなた方は少しも信じないでしょう。68 また,わたしが質問したとしても,あなた方は少しも答えないでしょう。

69 しかし,今からのち,人の子は神の強力な右に座ることになります」。70 すると,彼らはみな言った,「それでは,あなたは神の子なのか」。[イエス]は彼らに言われた,「あなた方自身,わたしがそうだと言っています」。71 彼らは言った,「どうしてこのうえ証しが必要だろうか。わたしたち自身が,彼の口から[それを]聞いたのだ」。

ルカ23章
1 こうして大勢の者はこぞって立ち上がり,彼をピラトのもとに引いて行った。2 そして,彼のことを訴え始めてこう言った。「わたしたちは,この男がわたしたちの国民をかく乱し,カエサルに税を払うことを禁じ,自分は王キリストだと言っているのを見ました」。

3 そこでピラトは彼に質問して言った,「あなたはユダヤ人の王なのか」。[イエス]は答えて言われた,「あなた自身が[そう]言っています」。

4 それからピラトは祭司長たちと群衆に言った,「わたしはこの男に何の犯罪も見いだせない」。5 しかし彼らは執ように迫るようになり,「彼はユダヤじゅうを教え回って民をあおり,しかもガリラヤから始めてここまで来たのです」と言った。6 それを聞くと,ピラトは,この者がガリラヤ人なのかどうかを尋ね,7 彼がヘロデの管轄区から来ていることを確かめたのち,彼をヘロデのもとに送った。[ヘロデ]自身もそのころエルサレムにいたのである。

8 イエスを見ると,ヘロデは大そう歓んだ。彼のことを聞いていたので,かなり前から一度会ってみたいと思っていたからであり,また彼の行なうしるしを多少でも見たいと希望してもいたのである。9 そこで[ヘロデ]はかなり多くの言葉で質問をはじめた。しかし[イエス]は何もお答えにならなかった。

10 しかしながら,祭司長と書士たちは次々に立ち上がり,彼のことを激しく訴えるのであった。11 そこでヘロデは自分の衛兵たちと一緒になって彼をけなし,色鮮やかな衣を着せて愚弄し,それからピラトのもとに送り返した。12 実にその日,ヘロデもピラトも互いに親しい仲になった。それまで彼らは互いに反目を続けていたのである。

13 そこでピラトは祭司長と支配者たち,そして民を呼び集めて,14 こう言った。「あなた方は,民を駆り立てて反乱を起こさせる者としてこの男をわたしのところに連れて来た。それで,見よ,わたしはあなた方の前で取り調べたが,あなた方の挙げる罪状の根拠となるようなものを何らこの男に見いだせなかった。

15 事実,ヘロデもそうであった。彼をわたしたちのところに送り返してきたからだ。見よ,彼は死に価するようなことを何も犯していない。16 それゆえわたしは,彼を打ち懲らしてから釈放することにする」。

17 ―― 18 しかし彼らはいっせいに叫んで言った,「この者を取り除け。我々にはバラバを釈放せよ!」19 (この[男]は市内で起きたある暴動と殺人のかどで獄に入れられていたのである。)

20 ピラトは再び彼らに呼ばわった。イエスを釈放することを望んでいたからである。21 そのとき彼らは,「杭につけろ! 彼を杭につけろ!」とわめきたてた。

22 [ピラト]は三たび彼らに言った,「この[男]がどんな悪事をしたというのか。わたしは,死に価するようなことを何も彼に見いださなかった。それゆえ,わたしは彼を打ち懲らしてから釈放することにする」。23 すると,彼らはしつこく迫るようになり,大声を上げて,彼を杭につけるようにと要求した。そして,彼らの声がうち勝つようになったのである。

24 それでピラトは,彼らの要求に合うような宣告を下した。25 つまり,暴動と殺人のかどで獄に入れられていた男,彼らの要求していたほうの者を釈放し,イエスのほうは彼らの意向にゆだねたのである。

26 さて,[イエス]を引いて行くさい,彼らは,キレネ生まれで,田舎から来たシモンという者を捕まえて苦しみの杭を負わせ,イエスの後ろからそれを運ばせた。

27 しかし,非常に大勢の民と女たちが,悲嘆のあまり身を打ちたたき,彼のことを嘆き悲しみながらそのあとに付いて行った。28 イエスは女たちのほうを向いて,こう言われた。「エルサレムの娘たちよ,わたしのために泣くのをやめなさい。むしろ,自分と自分の子供たちのために泣きなさい。29 見よ,人々が,『うまずめは,そして子を産まなかった胎と乳を飲ませなかった乳房とは幸いだ!』と言う日が来るからです。30 そのとき彼らは,山に向かって,『我々の上に倒れかかれ!』と言い,丘に向かって,『我々を覆ってくれ!』と[言い]始めるでしょう。31 というのは,木に水気のある時に彼らがこうしたことを行なうのであれば,それが枯れた時にはどんなことが起こるでしょうか」。

32 しかし,ほかに二人の悪行者が,彼と共に処刑されるため,やはり引かれて行った。33 そして,“どくろ”と呼ばれる所に着いた時,彼らはそこで[イエス]を杭につけ,そしてその悪行者たちを,一人をその右に,一人をその左にして[杭につけた]。(ニサン14日 9:00 am)

34 [[しかしイエスはこう言われるのであった。「父よ,彼らをお許しください。自分たちが何をしているのか知らないのですから」。]] さらに,彼の衣を分配しようとして,彼らはくじを引いた。35 そして,民は立ってじっと見ていた。しかし支配者たちは冷笑しながらこう言うのであった。「ほかの者は救ったのだ。この者が神のキリスト,選ばれた者であるのなら,自分を救うがよい」。36 兵士たちまでが彼を愚弄し,すぐ近くに来て酸いぶどう酒を差し出しながら,37 こう言った。「もしお前がユダヤ人の王なら,自分を救ってみろ」。

38 また,彼の上方には,「これはユダヤ人の王」と書き記したものがあった。
39 ところで,[杭に]掛けられた悪行者の一人は彼のことをあしざまに言いはじめた,「あなたはキリストではないのか。自分とわたしたちを救え」。

40 他方の者はそれに答え,彼を叱ってこう言った。「お前は少しも神を恐れないのか。同じ裁きを受けているのに。41 しかも,我々がこうなるのは全く当然だ。自分のした事に対する相応の報いを受けているのだから。しかしこの[人]は道に外れたことは何もしていないのだ」。42 そして彼はさらに言った,「イエスよ,あなたがご自分の王国に入られる時には,わたしのことを思い出してください」。

43 すると[イエス]は彼に言われた,「今日あなたに真実に言いますが,あなたはわたしと共にパラダイスにいるでしょう」。

44 ところで,すでに第六時 (ニサン14日 12:00 正午) ごろになっていたのに,闇が全地に垂れこめて,第九時 (ニサン14日 15:00 pm) にまで及んだ。45 日の光がなくなってしまったのである。その時,聖なる所の垂れ幕が真ん中で引き裂けた。

46 そしてイエスは大声で呼ばわって言われた,「父よ,わたしの霊をみ手に託します」。こう言ってから,[イエス]は息を引き取られた。

47 士官は起きた事柄を見て神の栄光をたたえるようになり,「ほんとうにこの人は義人であった」と言った。

48 そして,この光景のためにそこに集まっていた群衆は皆,起きた事柄を見て胸をたたきながら帰って行った。49 また,彼を親しく知っていた者たちは皆,やや離れた所に立っていた。それに,共にガリラヤから彼に付いて来た女たちも,これらのことを見つめて立っていたのである。

50 さて,見よ,ヨセフという名の人がいた。議会の一員であり,善良で義にかなった人であった― 51 この[人]は彼らの謀りごとや行動を支持する投票をしなかったのである―彼はユダ人の都市アリマタヤの人であり,神の王国を待っていた。

52 この人がピラトのもとに行き,イエスの体を頂きたいと願い出た。53 そして彼はそれを下ろして上等の亜麻布に包み,岩に掘り込んだ墓の中に横たえた。それは,まだだれも横たえられたことのないものであった。54 さて,それは準備の日 (ニサン14日, 過ぎ越しの子羊を屠り、その血を戸柱に跳ねかける日) であり,安息日 (ニサン15日, 過ぎ越しの食事で始まる無酵母パンの祭りの初日) の夕暮れの光も近づいていた。

55 しかし,彼と共にガリラヤから来ていた女たちは,あとに付いて行ってその記念の墓を見,またその体がどのように横たえられたかを[見た]。56 それから彼女たちは,香料と香油を準備するために戻って行った。しかし,言うまでもなく,安息日 (ニサン15日) にはおきてにしたがって休んだ。

ルカ24章
1 しかしながら,週の最初の日 (ニサン16日),彼女たちは,自分たちの準備した香料を携えて,朝とても早くから墓に行った。

2 ところが彼女たちは,石が記念の墓から転がしのけられているのを見たのである。3 そして,中に入ってみると,主イエスの体は見あたらなかった。4 彼女たちがこのことで当惑していると,見よ,まばゆいばかりの衣服を着た二人の人がそばに立った。5 [女たち]が恐れ驚いて顔を地面に伏せていると,その[人たち]が言った,「なぜあなた方は,生きている者を,死人の中に捜しているのですか。6 [[彼はここにはいません。よみがえらされたのです。]] 彼がまだガリラヤにいた時,あなた方にどのように話したかを思い起こしなさい。7 人の子は必ず,罪深い人々の手に渡されて杭につけられ,三日目によみがえる,と言いました」。

8 それで彼女たちは[イエス]の言われたことを思い出し,9 記念の墓から帰って,十一人とほかの者たちすべてにこれらの事をことごとく報告した。10 それは,マグダレネ・マリア,およびヨハンナ,そしてヤコブの[母]マリアであった。また,彼女たちと一緒にいたほかの女たちも,これらの事について使徒たちに告げるのであった。11 しかし,こうして話されることは彼らにとってはたわ言のように思え,彼らはその[女たち]を信じようとしなかった。

12 [[しかしペテロは,立って記念の墓に走って行き,前方にかがんでのぞいたが,ただ巻き布が見えるだけであった。それで彼は,起きた事を不思議に思いながら去って行った。]]

13 しかし,見よ,その同じ日 (ニサン16日),彼らのうちの二人が,エルサレムから七マイルほど離れた,エマオという村へ旅をしていた。14 そして,これら生じた事柄すべてについて互いに語り合っていた。

15 さて,彼らが語り合い,論じ合っていると,当のイエスが近づいて来て,一緒に歩きはじめた。16 ところが,彼らの目は[イエス]を見てもそれとは見分けられずにいた。17 [イエス]は彼らに言われた,「あなた方が歩きながら互いに討論しているそれらの事はいったい何ですか」。すると,彼らは悲しげな顔で立ち止まった。18 クレオパという名の者が答えて言った,「あなたは,外国人として自分ひとりでエルサレムに住んでいるために,近ごろそこで起きたいろんな事を知らないのですか」。

19 すると彼は言われた,「どんな事ですか」。彼らは言った,「ナザレ人イエスに関する事です。その人は神と民すべての前にあって,業と言葉において強力な預言者となりました。20 そして,わたしたちの祭司長や支配者たちがいかに彼を死の宣告に渡して杭につけたかを。21 しかしわたしたちは,この[人]がイスラエルを救出するように定められた方だと希望をかけていたのです。しかも,こうした事すべてに加えて,これらの事が起きてからこれで三日目 (ニサン14-16日) になります。

22 そのうえ,わたしたちのうちのある女たちも,わたしたちを大そう驚かせました。彼女たちは朝早く記念の墓に行ったのですが,23 彼の体が見つからず,またみ使いたちの超自然的な光景を見たと言いに来たからです。その[み使い]たちが,彼は生きていると言ったというのです。24 さらに,わたしたちと一緒にいる者のうち幾人かが記念の墓に出かけて行きました。そして,それがそのとおり,まさに女たちが言ったとおりなのを見たのですが,彼[の姿]は見ませんでした」。

25 すると[イエス]は彼らに言われた,「ああ,無分別で,預言者たちの語ったすべてのことを信じるのに心の鈍い人たちよ。26 キリストはこうした苦しみを経て自分の栄光に入ることが必要だったのではありませんか」。(実体であるキリストは、律法と預言者に書かれているすべてのことを成就しなければなりませんでした。)

27 そして,モーセとすべての預言者たちから始めて,聖書全巻にある,ご自分に関連した事柄を彼らに解き明かされた。

28 ついに彼らは,行こうとしている村のすぐ近くに来た。すると彼は,さらに遠くへ旅を続けるような様子を示された。29 しかし彼らは,「わたしたちのところにお泊まりください。夕方になるところですし,日はすでに傾いていますから」と言って強いて勧めた。そこで[イエス]は彼らのところに泊まるため中に入られた。30 そして,彼らと一緒に横になって食事をしておられた際,[イエス]はパンを取って祝福を述べ,それを割いて彼らに渡しはじめられた。31 それを見て彼らの目はすっかり開け,それがだれであるかが分かった。それから,[イエス]は彼らから見えなくなった。(ニサンの17日。)

32 そこでふたりは互いに言った,「あの方が道でわたしたちに話してくださった時,わたしたちのために聖書をすっかり解いてくださった時,わたしたちの心は燃えていなかっただろうか」。33 そして彼らはすぐさま立ち上がってエルサレムに帰った。すると,十一人およびそれと共にいる者たちが集合して,34 「主はほんとうによみがえらされて,シモンに現われたのだ!」と言っているところであった。35 そこでふたりも,道中での[できごと] (ニサンの16日),そして,パンを割かれた際に彼のことがどのように分かったかを細かに話した。(ニサンの17日)

36 彼らがこうした事について話していたところ,[イエス]ご自身が彼らの真ん中にお立ちになり,[[「あなた方に平安があるように」と言われた。]] 37 しかし彼らはおびえ,また恐れ驚いていたので,自分たちは霊を眺めているのだろうと思っていた。38 それで[イエス]は彼らに言われた,「なぜあなた方は騒ぐのですか。あなた方の心に疑いが起きるのはどうしてですか。39 わたしの手と足を見なさい。これはわたしです。わたしに触り,また見なさい。霊には,あなた方がわたしに見るような肉や骨はないのです」。

40 [[そして,このように言いながら,自分の手と足を彼らにお見せになった。]] 41 しかし,全くの喜びのあまり彼らがなお信じられず,ただ不思議に思っていると,[イエス]は,「そこに何か食べる物がありますか」と言われた。42 それで彼らは焼いた魚一切れを渡した。43 すると彼はそれを受け取り,彼らの目の前でそれを食べた。

44 それから彼らにこう言われた。「まだあなた方と共にいた時に,わたしが話した言葉はこうでした。つまり,モーセの律法の中,そして預言者たちと詩編の中にわたしについて書いてあることはみな必ず成就するということです」。

45 そして,聖書の意味をつかむよう彼らの思いを十分に開いてから,46 こう言われた。「このように書いてあります。すなわち,キリストは苦しみを受け,三日目に死人の中からよみがえり (ニサン16日),

47 その名によって罪の許しのための悔い改めがあらゆる国民の中で宣べ伝えられる―エルサレムから始めて,48 あなた方はこれらの事の証人となるのです。49 そして,見よ,わたしはあなた方の上に,わたしの父によって約束されているものを送ります。しかしあなた方は,高い所からの力を授けられるまでは,市内に滞在していなさい」。(イエスの罪のない死と復活により、ニサン16日から50日後のシワン6日のペンテコステで、新しい国家、人類の初穂、王国の子たちの会衆を生み出すための新しい契約が有効になりました。それ以来、神はすべての人類を扱い、神の摂理によってクリスチャンと呼ばれた、王国の子たち、人類の初穂を集めてきました。)

50 しかし[イエス]は彼らをベタニヤまで連れて行き,両手を上げて彼らを祝福された。51 彼らを祝福しておられるうちに,[イエス]は彼らから離され,天に上げられていった。52 それで彼らは[イエス]に敬意をささげ,大いなる喜びを抱いてエルサレムに帰った。53 そして,絶えず神殿にいて,神をたたえていた。


ヨハネ12章
1 それに対して,イエスは過ぎ越し (ニサン14-15日) の六日前にベタニヤに到着された。そこには,イエスが死人の中からよみがえらせたラザロがいた。2 それで人々は[イエス]のためにそこで晩さんを設けた。そして,マルタは給仕していたが,ラザロのほうは彼と一緒に食卓について横になっている者の一人であった。3 そこでマリアは,香油一ポンド,本物のナルドで非常に高価なものを取り,[それを]イエスの両足に塗り,ついで自分の髪の毛で彼の両足をふいて乾かした。家は香油の香りでいっぱいになった。

4 しかし,弟子の一人で,彼をまさに裏切ろうとしていたユダ・イスカリオテが,5 「どうしてこの香油を三百デナリで売って,貧しい人々に施さなかったのか」と言った。6 だが,彼がそう言ったのは,貧しい人たちのことを気にかけていたためではなく,彼が盗人であり,金箱を持っていたが,そこに入れられる金を常々くすねていたからであった。7 そこでイエスは言われた,「彼女をそのままにしておきなさい。わたしの埋葬の日 (ニサン14日) を見越して彼女がこの習わしを守れるようにするためです。8 あなた方にとって,貧しい人たちは常にいますが,わたしは常にはいないからです」。

9 そのため,ユダヤ人の大群衆は,[イエス]がそこにいることを知ってやって来たが,それは単にイエスのためだけではなく,彼が死人の中からよみがえらせたラザロを見るためでもあった。10 祭司長たちは今やラザロをも殺そうと相談した。11 彼のために,大勢のユダヤ人がそこへ行き,イエスに信仰を持つようになったからである。

12 次の日,祭り (ニサン14-21日, 過ぎ越し-無酵母パンの祭り) に来ていた大群衆は,イエスがエルサレムに来られることを聞くと,13 やしの木の枝を取って彼を迎えに出て行った。そして,大声でこう叫びはじめた。「救いたまえ! YHWHのみ名によって来たる者,イスラエルの王こそ祝福された者!」14 しかしイエスは,若いろばを見つけてから,その上に座された。まさにこう書いてあるとおりである。15 「シオンの娘よ,恐れてはならない。見よ,あなたの王が来る。ろばの子に座って」。16 弟子たちは初めこれらの事を気に留めなかったが,イエスが栄光を受けられたその時になってから,彼についてこうしたことが書かれており,また自分たちが[イエス]に対してこれらの事を行なったということを思い出したのである。(イエスは、ヘブライ語聖書に書かれてあるメシアに関するすべての予言を成就しました。)

17 それで,[イエス]がラザロを記念の墓から呼び出して死人の中からよみがえらせた時に一緒にいた群衆は,証しをしつづけた。18 そのためさらに群衆が,彼がこのしるしを行なったことを聞いて,彼を出迎えた。

19 それゆえパリサイ人たちは互いにこう言った。「あなた方の見るとおり,何一つうまくいっていない。見なさい,世は彼に付いて行ってしまった」。

20 さて,祭りに出て崇拝するために上って来た人々の中に数人のギリシャ人がいた。21 それで,それらの者たちが,ガリラヤのベツサイダから来ていたフィリポに近づき,「わたしどもはイエスにお会いしたいのですが」と頼みはじめた。22 フィリポはやって来て,アンデレに告げた。アンデレとフィリポは来て,イエスに告げた。

23 しかしイエスは彼らに答えて言われた,
「人の子が栄光を受けるべき時が来ました。24 きわめて真実にあなた方に言いますが,一粒の小麦は地面に落ちて死なないかぎり,それはただ一[粒]のままです。しかし,死ぬならば,そのときには多くの実を結びます。(やがて起こるイエスの罪のない犠牲の死は、全人類のために多くの祝福を生み出すことになっていました。)

25 自分の魂を慈しむ者はそれを滅ぼしますが,この世において自分の魂を憎む者は,それを永遠の命のために保護することになります。26 だれでもわたしに仕えようとするなら,その人はわたしの後に従いなさい。そうすれば,わたしのいる所,そこに,わたしに仕える者もいることになります。だれでもわたしに仕えようとするなら,父はその人を尊ばれます。

27 今わたしの魂は騒ぎます。何と言えばよいのでしょう。父よ,わたしをこの時から救い出してください。しかしやはり,わたしはこのゆえにこの時に至ったのです。28 父よ,み名の栄光をお示しください」。すると,天から声があった,「わたしはすでに[その]栄光を示し,さらにまた[その]栄光を示す」。

29 このため,周りに立ってそれを聞いた群衆は,雷が鳴ったのだと言いだした。ほかの者たちは,「み使いが彼に話しかけたのだ」と言いはじめた。30 それに答えてイエスは言われた,「この声は,わたしのためではなく,あなた方のために生じたのです。

31 今,この世の裁きがなされています。今やこの世の支配者は追い出されるのです。

32 しかしわたしは,自分が地から挙げられたなら,あらゆる人をわたしのもとに引き寄せます (イエスの復活により新し契約が発効すると、神は全人類を扱うようになります。)」。33 彼は実際のところ,自分がどんな死を遂げようとしているかを示すために,こう言っておられたのである。

34 それゆえ,群衆は彼に答えた,「わたしたちは律法から,キリストが永久にとどまることを聞きました。それなのに,人の子は挙げられねばならないとあなたが言うのはどうしてですか。この人の子とはだれのことなのですか」。

35 それゆえイエスは彼らに言われた,「光はもうしばらくあなた方の間にあることでしょう。光のあるうちに歩きなさい。闇があなた方に打ち勝つことのないためです。そして,闇の中を歩く人は,自分がどこへ行くのかを知りません。36 光のあるうちに光に信仰を働かせなさい。光の子らとなるためです」。

イエスはこれらのことを話して去って行き,彼らから身を隠された。

37 しかし,彼らの前で非常に多くのしるしを行なってこられたのに,彼らが[イエス]に信仰を持たなかったので,38 預言者イザヤの言ったこの言葉が成就した。「YHWHよ,わたしたちの聞いたことにだれが信仰を置いたでしょうか。そして,YHWHのみ腕は,だれに表わし示されたでしょうか」。39 彼らが信じることのできなかった理由については,イザヤがまたこう言った。40 「彼は彼らの目を盲目にし,彼らの心をかたくなにした。彼らが自分の目で見,心で考えをつかみ,身を転じ,そしてわたしが彼らをいやす,ということがないためである」。41 イザヤは彼の栄光を見たのでこれらのことを述べ,彼について語ったのである。(神は人の造りを徹頭徹尾知り尽くしているので、罪人が真理に対しどのように反応するかを正確に告げることができます。)

42 とはいえ,実際には,支配者たちでさえその多くの者が彼に信仰を持ったのである。しかしパリサイ人たちのてまえ,[彼について]告白しようとはしなかった。それは,会堂から追放されないようにするためであった。43 彼らは,神の栄光よりも人の栄光を愛したのである。(罪人は、自分の生活を真理より優先させます。すべての人は脅しや同調圧力に屈する傾向を持っています。自分に不利になっても真理や真実を擁護する人は稀です。)

44 しかしながら,イエスは叫んで言われた,「わたしに信仰を持つ者は,わたし[だけ]でなく,わたしを遣わした方に[も]信仰を持つのです。45 また,わたしを見る者は,わたしを遣わした方を[も]見るのです。46 わたしは光として世に来ました。それは,わたしに信仰を持つ者が,だれも闇の中にとどまることがないためです。

47 しかし,わたしのことばを聞いてそれを守らない人がいても,わたしはその人を裁きません。わたしが来たのは,世を裁くためではなく,世を救うためだからです。

48 わたしを無視し,わたしのことばを受け入れない人には,その人を裁く者がいます。わたしの話した言葉が,終わりの日にその人を裁くのです。

49 わたしは自分の衝動で話したのではなく,わたしを遣わした父ご自身が,何を告げ何を話すべきかについて,わたしにおきてをお与えになったからです。50 またわたしは,[父]のおきてが永遠の命を意味していることを知っています。それゆえ,わたしの話すこと,[それは,]父がわたしにお告げになったとおりに話している[事柄]なのです」。(イエスの生き方は、神の霊と神のことば、真理に完全に調和していました。)

ヨハネ13章
1 さてイエスは,過ぎ越しの祭り (ニサン14日, 過ぎ越しの子羊を屠り、その血を戸柱に跳ねかける) の前に,自分がこの世を出て父のもとに行くべき時が来たことを知ったので,[それまでも]世にあるご自分の者たちを愛してこられたのであるが,彼らを最後まで愛された。

2 それで,晩さん (このニサン14日の晩餐はニサン15日の無酵母パンの初日の無酵母パンと焼いた子羊の肉の過ぎ越しの食事ではありません。) が進んでいる間に,悪魔はそのときすでにシモンの子ユダ・イスカリオテの心に彼を裏切る[考え]を入れていたのであるが,

3 [イエス]は,父がすべてのものを[自分の]手中にお与えになったこと,そして自分が神のもとから来て,神のもとに行こうとしていることを知って,4 晩さん (ニサン14日) [の席]から立ち,自分の外衣をわきに置かれた。そして,ふき布を取って身に帯びられた。5 それから,たらいに水を入れて弟子たちの足を洗い,身に帯びたふき布でふき始められた。6 このようにしてシモン・ペテロのところまで来られた。[ペテロ]は彼に言った,「主よ,あなたがわたしの足をお洗いになるのですか」。7 それに答えてイエスは彼に言われた,「わたしのしている事を,あなたは今は理解していませんが,これらの事の後に理解するようになるでしょう」。8 ペテロは彼に言った,「わたしの足をお洗いになることなど,決してあってはなりません」。イエスは彼に答えられた,「わたしが洗わないなら,あなたはわたしと何の関係もありません」。9 シモン・ペテロは彼に言った,「主よ,足だけでなく,手も頭も」。10 イエスは彼に言われた,「水浴びした者は,足を洗ってもらう必要があるほかは,全身清いのです。それであなた方は清いのです。しかし,すべての者がそうではありません」。11 実に[イエス]は,ご自分を裏切ろうとしている者を知っておられた。そのために,「あなた方のすべてが清いのではない」と言われたのである。

12 さて,彼らの足を洗い,外衣を身に着け,再び食卓について身を横にしてから,[イエス]は彼らに言われた,「わたしがあなた方にしたことが分かりますか。13 あなた方はわたしを,『師』,また『主』と呼びます。そう言うのは正しいことです。わたしはそのような者だからです。14 それで,わたしが,主また師でありながらあなた方の足を洗ったのであれば,あなた方も互いに足を洗い合うべきです。15 わたしはあなた方のために模範を示しました。あなた方も,わたしがあなた方にしたと同じようにするためです。

16 きわめて真実にあなた方に言いますが,奴隷はその主人より偉くはなく,また,遣わされた者はそれを遣わした者より偉くはありません。17 これらのことを知っているなら,それを行なうときに,あなた方は幸福です。

18 わたしはあなた方のすべてについて語っているのではありません。わたしは自分が選んだ者たちを知っています。しかしそれは,『常々わたしのパンを食していた者が,わたしに向かってかかとを挙げた』と[述べる]聖書が成就するためなのです。(神はサタンの策略を非常によく知っておられるので、サタンが女の胤に何をするかを正確に予言されました。イエスもそのことを承知していました。だれでも、誘惑に屈する可能性をもっています。) 19 わたしは今この時から,それが起きる前にあなた方に告げておきます。それが実際に起きる時,わたしが[その者]であることをあなた方が信じるためです。20 きわめて真実にあなた方に言いますが,わたしが遣わした者を迎える人はわたしを[も]迎えるのです。また,わたしを迎える人はわたしを遣わした方を[も]迎えるのです」。

21 これらのことを言ったのち,イエスは霊において苦しまれ,証しをして言われた,「きわめて真実にあなた方に言いますが,あなた方のうちの一人がわたしを裏切るでしょう」。

22 弟子たちは,だれについて[そう]言っておられるのかと戸惑いながら互いを見まわした。23 イエスの懐の前に弟子の一人が横になっており,イエスはこれを愛しておられた。24 それゆえ,シモン・ペテロはこの者にうなずいて合図をしながら言った,「だれのことを言っておられるのか話しなさい」。25 それで,その者はイエスの胸もとにそり返って言った,「主よ,それはだれですか」。

26 それゆえイエスは答えられた,「わたしが一口の食物を浸して与えるのがその人です」。そうして彼は,一口の食物を浸してから,それを取ってシモン・イスカリオテの子ユダに与えた。27 すると,その一口の食物[を受けた]あとすぐ,サタンがその者に入った。そこで,イエスは彼に言われた,「あなたのしている事をもっと早く済ませなさい」。

28 しかしながら,食卓について横になっていた者のだれも,何のために彼にこう言われたのか分からなかった。29 事実,ある者たちは,ユダが金箱を保管していたので,イエスが彼に,「祭り (ニサン15-21日の無酵母パンの祭り) のためにわたしたちが必要とするものを買いなさい」とか,貧しい人たちに何か与えるようにと命じておられるものと思っていた。30 そこで,その一口の食物を受けたあと,彼はすぐに出て行った。それはであった。(ニサン14日)

31 こうして彼が出て行ってから,イエスは言われた,「今や人の子は栄光を受け,神は彼に関連して栄光を受けておられます。32 また神は自ら彼に栄光をお与えになり,しかもすぐに栄光をお与えになるのです。

33 小さな子供らよ,わたしはあと少しの間あなた方と共にいます。あなた方はわたしを捜すようになるでしょう。そしてわたしは,『わたしの行く所にあなた方は来ることができない』とユダヤ人たちに言いましたが,今はあなた方にも同じように言います。34 わたしはあなた方に新しいおきてを与えます。それは,あなた方が互いに愛し合うことです。つまり,わたしがあなた方を愛したとおりに,あなた方も互いを愛することです。35 あなた方の間に愛があれば,それによってすべての人は,あなた方がわたしの弟子であることを知るのです」。

36 シモン・ペテロが彼に言った,「主よ,どこへおいでになるのですか」。イエスは答えられた,「わたしが行こうとしている所へあなたは今は付いて来ることはできません。後になって付いて来ることになるでしょう」。37 ペテロは彼に言った,「主よ,どうして今はあなたに付いて行けないのですか。わたしは,あなたのためには自分の魂もなげうちます」。38 イエスは答えられた,「わたしのために自分の魂もなげうつというのですか。きわめて真実にあなたに言いますが,あなたがわたしのことを三度否認するまで,決しておんどりは鳴かないでしょう」。

ヨハネ14章
1 「あなた方の心を騒がせてはなりません。神に信仰を働かせ,またわたしにも信仰を働かせなさい。2 わたしの父の家には住むところがたくさんあります。そうでなかったなら,わたしはあなた方に告げたことでしょう。わたしはあなた方のために場所を準備しに行こうとしているのですから。3 そしてまた,わたしが行ってあなた方のために場所を準備したなら,わたしは再び来て,あなた方をわたしのところに迎えます。わたしのいる所にあなた方もまたいるためです。4 そして,わたしが行こうとしている所への道をあなた方は知っています」。

5 トマスが彼に言った,「主よ,わたしたちは,あなたがどこへ行こうとしておられるのか分からないのです。どうしてその道が分かるでしょうか」。

6 イエスは彼に言われた,「わたしは道であり,真理であり,命です。わたしを通してでなければ,だれひとり父のもとに来ることはありません。7 あなた方がわたしを知っていたなら,わたしの父をも知っていたでしょう。今この時から,あなた方は[父]を知っており,また見たのです」。

8 フィリポが彼に言った,「主よ,わたしたちに父をお示しください。それで十分です」。
9 イエスは彼に言われた,「わたしはこれほど長い間あなた方と過ごしてきたのに,フィリポ,あなたはまだわたしを知らないのですか。わたしを見た者は,父を[も]見たのです。どうしてあなたは,『わたしたちに父を示してください』と言うのですか。10 わたしが父と結びついており,父がわたしと結びついておられることを,あなたは信じていないのですか。わたしがあなた方に言う事柄は,独自の考えで話しているのではありません。わたしとずっと結びついておられる父が,ご自分の業を行なっておられるのです。

11 わたしは父と結びついており,父はわたしと結びついておられると[言う]わたしを信じなさい。そうでなければ,業そのもののゆえに信じなさい。12 きわめて真実にあなた方に言いますが,わたしに信仰を働かせる者は,その者もまたわたしの行なっている業をするでしょう。しかも,それより大きな業をするのです。わたしが父のもとに行くからです。13 また,あなた方がわたしの名によって求めることが何であっても,わたしはそれを行ないます。父が子との関連において栄光をお受けになるためです。14 あなた方がわたしの名によって何か求めるなら,わたしはそれを行ないます。

15 「もしわたしを愛するなら,あなた方はわたしのおきてを守り行なうでしょう。16 そしてわたしは父にお願いし,[父]は別の助け手を与えて,それがあなた方のもとに永久にあるようにしてくださいます。17 それは真理の霊であり,世はそれを受けることができません。それを見ず,また知らないからです。あなた方はそれを知っています。それはあなた方のもとにとどまり,あなた方のうちにあるからです。

18 わたしはあなた方を取り残されたままにはしておきません。わたしはあなた方のもとに来るのです。19 あとしばらくすれば,世はもはやわたしを見ないでしょう。しかしあなた方はわたしを見ます。わたしは生きており,あなた方も生きるからです。20 その日にあなた方は,わたしが父と結びついており,あなた方がわたしと結びついており,わたしがあなた方と結びついていることを知るでしょう。

21 わたしのおきてを持ってそれを守り行なう人,その人はわたしを愛する人です。さらに,わたしを愛する人はわたしの父に愛されます。そしてわたしはその人を愛して,自分をはっきり示します」。

22 イスカリオテでないユダが彼に言った,「主よ,あなたはわたしたちにはご自分をはっきり示そうとされ,世に対してはそのようにされない,これは何が起きたのですか」。

23 それに答えてイエスは彼に言われた,「だれでもわたしを愛するなら,その人はわたしの言葉を守り行ない,わたしの父はその人を愛し,わたしたちはその人のところに来て住まうのです。24 わたしを愛さない者はわたしの言葉を守り行ないません。そして,あなた方が聞いている言葉はわたしの[言葉]ではなく,わたしを遣わされた父に属するものなのです。

25 「あなた方のもとにとどまっている間に,わたしはこれらのことを話しました。26 しかし,父がわたしの名によって遣わしてくださる助け手,つまり聖霊のことですが,その者はあなた方にすべてのことを教え,わたしが告げたすべての事柄を思い起こさせるでしょう。(王国の子たちは、YHWH神とキリストから教えを受けます。宗教指導者たちや宗教組織からではありません。)

27 わたしはあなた方に平安を残し,わたしの平安を与えます。わたしはそれを,世が与えるような仕方であなた方に与えるのではありません。あなた方の心を騒がせてはならず,恐れのためにひるませてもなりません。

28 わたしは去って行き,そしてまたあなた方のもとに[戻って]来る,とわたしが言ったのを,あなた方は聞きました。もしわたしを愛するなら,わたしが父のもとに行こうとしていることを歓ぶはずです。父はわたしより偉大な方だからです。

29 それで今,それが起こる前にわたしはあなた方に告げました。実際に起こる時にあなた方が信じるためです。30 わたしはもう,あなた方と多くは語らないでしょう。世の支配者が来ようとしているからです。そして,彼はわたしに対して何の力もありません。31 しかし,わたしが父を愛していることを世が知るために,わたしは,父がおきてを与えてくださったとおりに行なっているのです。立ちなさい。ここから行きましょう。

ヨハネ15章
1 「わたしは真のぶどうの木,わたしの父は耕作者です。2 [父]は,わたしにあって実を結んでいない枝をみな取り去り,実を結んでいるものをみな清めて,さらに実を結ぶようにされます。

3 あなた方は,わたしが話した言葉のゆえにすでに清いのです。4 わたしと結びついたままでいなさい。そしてわたしはあなた方と結びついた[ままでいます]。枝がぶどうの木にとどまっていないなら,それだけでは実を結ぶことができないのと同じように,あなた方もわたしと結びついたままでいないなら,[実を結ぶことが]できません。5 わたしはぶどうの木,あなた方はその枝です。わたしと結びついたままでおり,わたしが結びついた[ままでいる]人,その人は多くの実を結びます。わたしから離れては,あなた方は何も行なえないからです。

6 わたしと結びついたままでいないなら,その人は枝のようにほうり出されて枯れてしまいます。そして人々はそうした枝を寄せ集めて火の中に投げ込み,それは焼かれてしまいます。7 あなた方がわたしと結びついたままでおり,わたしの言ったことがあなた方のうちにとどまっているのであれば,どんなことでも自分の願うことを求めなさい。そうすれば,それはあなた方のためにそのとおりになります。

8 あなた方が多くの実を結びつづけてわたしの弟子であることを示すこと,これによってわたしの父は栄光をお受けになるのです。9 父がわたしを愛され,わたしがあなた方を愛したとおり,わたしの愛のうちにとどまっていなさい。10 わたしのおきてを守り行なうなら,あなた方はわたしの愛のうちにとどまることになります。わたしが父のおきてを守り行なってその愛のうちにとどまっているのと同じです。

11 「わたしがこれらのことをあなた方に話したのは,わたしの喜びがあなた方のうちにあり,あなた方の喜びが満ちるためです。12 わたしがあなた方を愛したとおりにあなた方が互いを愛すること,これがわたしのおきてです。13 友のために自分の魂をなげうつこと,これより大きな愛を持つ者はいません。

14 わたしが命令していることを行なうなら,あなた方はわたしの友です。15 わたしはもはやあなた方を奴隷とは呼びません。奴隷は自分の主人の行なうことを知らないからです。しかしわたしはあなた方を友と呼びました。自分の父から聞いた事柄をみなあなた方に知らせたからです。

16 あなた方がわたしを選んだのではありません。わたしがあなた方を選び,あなた方が進んで行って実を結びつづけ,しかもその実が残るようにと,わたしがあなた方を任命したのです。それは,あなた方がわたしの名によって父に何を求めても,[父]がそれをあなた方に与えてくださるためです。

17 「わたしがこれらのことを命じるのは,あなた方が互いに愛し合うためです。18 もし世があなた方を憎むなら,あなた方を憎むより前にわたしを憎んだのだ,ということをあなた方は知るのです。19 あなた方が世のものであったなら,世は自らのものを好むことでしょう。ところが,あなた方は世のものではなく,わたしが世から選び出したので,そのために世はあなた方を憎むのです。

20 奴隷はその主人より偉くはないと,わたしがあなた方に言った言葉を覚えておきなさい。彼らがわたしを迫害したのであれば,あなた方をも迫害するでしょう。彼らがわたしの言葉を守り行なったのであれば,あなた方の[言葉]をも守り行なうでしょう。

21 しかし彼らは,わたしの名のゆえにこれらすべてのことをあなた方に敵して行なうでしょう。わたしを遣わした方を知らないからです。22 もしわたしが来て彼らに話していなかったなら,彼らには何の罪もなかったことでしょう。しかし今,彼らは自分たちの罪に対して何の言い訳もできません。23 わたしを憎む者は,わたしの父をも憎むのです。24 もしわたしが,ほかのだれも行なわなかった業を彼らの間で行なっていなかったなら,彼らには何の罪もなかったことでしょう。しかし今,彼らはわたしもわたしの父をも見,そのうえ憎んだのです。

25 しかしそれは,彼らの律法の中に書かれているこの言葉が成就するためなのです。『彼らはいわれなくわたしを憎んだ』。26 わたしが父のもとからあなた方に遣わす助け手,すなわち父から出る真理の霊が到来するとき,その者がわたしについて証しするでしょう。27 そして今度はあなた方が証しをするのです。あなた方はわたしが始めた時から共にいるからです。

ヨハネ16章
1 「あなた方がつまずかないために,わたしはこれらのことを話しました。2 人々はあなた方を会堂から追放するでしょう。事実,あなた方を殺す者がみな,自分は神に神聖な奉仕をささげたのだと思う時が来ようとしています。

3 しかし彼らは,父をもわたしをも知っていないので,そうした事をするのです。4 でもやはり,わたしはこれらのことをあなた方に話しました。その時が到来するとき,わたしがそれについて告げたということをあなた方が思い出すためです。 「しかしながら,わたしはこれらのことを初めにはあなた方に告げませんでした。あなた方と共にいたからです。

5 しかし今,わたしは自分を遣わした方のもとに行こうとしています。それでも,あなた方のうち一人も,『どこに行くのですか』とは尋ねません。6 むしろ,わたしがこれらのことを話したために,悲嘆があなた方の心を満たしています。7 しかしやはり,わたしはあなた方に真実を告げます。わたしが去って行くことはあなた方の益になるのです。わたしが去って行かなければ,助け手は決してあなた方のもとに来ないからです。しかし,去って行けば,わたしは彼をあなた方に遣わします。

8 そして,その者が到来すれば,罪に関し,義に関し,裁きに関して,納得させる証拠を世に与えるでしょう。(「罪, 義, 裁き」はキリスト教の中心の教えです。)

9 まず,罪に関してとは,彼らがわたしに信仰を働かせていないからです。10 次いで,義に関してとは,わたしが父のもとに行き,あなた方がもうわたしを見ないからです。11 さらに,裁きに関してとは,この世の支配者が裁かれたからです。

12 「わたしにはまだあなた方に言うべきことがたくさんありますが,あなた方は今はそれに耐えることができません。13 しかし,その者,すなわち真理の霊が到来するとき,あなた方を真理の全体へと案内するでしょう。彼は自分の衝動で話すのではなく,すべて自分が聞く事柄を話し,来たらんとする事柄をあなた方に告げ知らせるからです。

14 その者はわたしの栄光を表わすでしょう。彼はわたしのものから受けて,それをあなた方に告げ知らせるからです。15 父が持っておられるものは皆わたしのものです。そのためわたしは,彼はわたしのものから受けて,[それ]をあなた方に告げ知らせると言ったのです。16 しばらくすれば,あなた方はもうわたしを見ません。そしてまた,しばらくすれば,あなた方はわたしを見るのです」。

17 このため,弟子の幾人かが互いに言った,「『しばらくすればあなた方はわたしを見ない,そしてまた,しばらくすればあなた方はわたしを見る』,そして,『わたしが父のもとに行くからだ』と言われるのはどういう意味なのか」。

18 こうして彼らは,「『しばらく』と言われるのはどういう意味なのだろう。何について語っておられるのかわたしたちには分からない」と言うのであった。19 イエスは彼らが自分に質問したがっているのを知って,こう言われた。「しばらくすればあなた方はわたしを見ない,そしてまた,しばらくすればあなた方はわたしを見る,とわたしが言ったので,そのことについて互いに尋ね合っているのですか。

20 きわめて真実にあなた方に言いますが,あなた方は泣き悲しみ,泣き叫びますが,世は歓ぶでしょう。あなた方は悲嘆しますが,あなた方の悲嘆は喜びに変えられるのです。21 女は出産に臨んで嘆きを抱きます。彼女の時が到来したからです。しかし,その幼子を産んでしまうと,ひとりの人が世に生まれた喜びのために,もうその患難を覚えていません。

22 それで,あなた方も今は確かに悲嘆を抱いています。しかし,わたしは再びあなた方に会うので,あなた方の心は歓ぶことでしょう。そして,だれもあなた方からその喜びを奪う者はありません。23 またその日には,あなた方はわたしに何の質問もしないでしょう。きわめて真実にあなた方に言いますが,あなた方が父に何か求めるなら,[父]はそれをわたしの名によって与えてくださるのです。24 今この時まで,あなた方は何一つわたしの名によって求めたことはありません。求めなさい。そうすれば受けます。あなた方の喜びが満ちるためです。

25 「わたしはこれらのことをあなた方に比喩で話しました。わたしがあなた方にもう比喩で話さず,父に関してはっきり知らせる時が来ようとしています。26 その日,あなた方はわたしの名によって求めるでしょう。そしてわたしは,あなた方に関して父にお願いするとは言いません。27 父ご自身があなた方に愛情を持っておられるからです。それは,あなた方がわたしに愛情を持ち,わたしが父の代理者として来たことを信じているからです。28 わたしは父のもとから出て世に来ました。そしてまた,世を去って父のもとに行こうとしています」。

29 弟子たちは言った,「ご覧ください,今あなたははっきりと話し,少しも比喩を語られません。30 今こそわたしたちは,あなたがすべてのことを知っておられ,だれからも質問される必要のないことが分かりました。これによってわたしたちは,あなたが神のもとから来られたことを信じます」。

31 イエスは彼らに答えられた,「あなた方は今のところ信じているのですか。32 見よ,あなた方がそれぞれ自分の家に散らされてわたしを独りだけにする時が来ます。そうです,現に来ているのです。それでも,わたしは独りではありません。父が共にいてくださるからです。33 あなた方がわたしによって平安を得るために,わたしはこれらのことを言いました。世にあってあなた方には患難がありますが,勇気を出しなさい! わたしは世を征服したのです」。

ヨハネ17章
1 イエスはこれらのことを話し,それから目を天に向けて,こう言われた。「父よ,時は来ました。あなたの子の栄光を表わしてください。子があなたの栄光を表わすためです。2 それは,あなたがすべての肉なるものに対する権威を[子]に与え,そのお与えになった者すべてについて,[子]がそれらの者に永遠の命を与えるようにされたことに応じてです。

3 彼らが,唯一まことの神であるあなたと,あなたがお遣わしになったイエス・キリストについての知識を取り入れること,これが永遠の命を意味しています。

4 わたしは,わたしにさせるために与えてくださった業をなし終えて,地上であなたの栄光を表わしました。5 それで,父よ,世がある前にわたしがみそばで持っていた栄光で,わたしを今ご自身の傍らにあって栄光ある者としてください。

6 「わたしは,あなたが世から与えてくださった人々にみ名を明らかにしました。彼らはあなたのものでしたが,わたしに与えてくださったのであり,彼らはあなたのみ言葉を守り行ないました。7 彼らは今,あなたがわたしに与えてくださったものが皆あなたからのものであることを知るようになりました。8 わたしに与えてくださったことばをわたしは彼らに与えたからです。彼らはそれを受け入れて,わたしがあなたの代理者として来たことを確かに知り,あなたがわたしをお遣わしになったことを信じたのです。9 わたしは彼らに関してお願いいたします。世に関してではなく,わたしに与えてくださった者たちに関してお願いするのです。彼らはあなたのものだからであり,10 わたしのものはみなあなたのもの,あなたのものはわたしのものなのです。そしてわたしは彼らの間で栄光を受けたのです。

11 「そしてまた,わたしはもう世におりませんが,彼らは世におり,わたしはみもとに参ります。聖なる父よ,わたしに与えてくださったご自身のみ名のために彼らを見守ってください。わたしたちと同じように,彼らも一つとなるためです。12 わたしは,彼らと共におりました時,わたしに与えてくださったあなたご自身のみ名のために,いつも彼らを見守りました。そしてわたしは彼らを守り,滅びの子のほかには,そのうちだれも滅びていません。それは聖句が成就するためでした。(この言葉は、イエスがメシアに関する事柄を成就することを意識していたことを示しています。) 13 しかし今,わたしはみもとに参ります。そして,彼らがわたしの喜びを自分のうちに存分に持つために,わたしは世にあってこれらのことを話しています。14 わたしはあなたのみ言葉を彼らに与えましたが,世は彼らを憎みました。わたしが世のものでないのと同じように,彼らも世のものではないからです。

15 「わたしは,彼らを世から取り去ることではなく,邪悪な者のゆえに彼らを見守ってくださるようにお願いいたします。16 わたしが世のものではないのと同じように,彼らも世のものではありません。

17 真理によって彼らを神聖なものとしてください。あなたのみ言葉は真理です。18 あなたがわたしを世にお遣わしになったと同じように,わたしも彼らを世に遣わしました。19 そして,わたしは彼らのために自分を神聖なものとしています。彼らもまた真理によって神聖なものとされるためです。

20 「わたしは,これらの者だけでなく,彼らの言葉によってわたしに信仰を持つ者たちについてもお願いいたします。21 それは,彼らがみな一つになり,父よ,あなたがわたしと結びついておられ,わたしがあなたと結びついているように,彼らもまたわたしたちと結びついていて,あなたがわたしをお遣わしになったことを世が信じるためです。

22 またわたしは,わたしに与えてくださった栄光を彼らに与えました。わたしたちが一つであるように,彼らも一つになるためです。23 わたしは彼らと結びついており,あなたはわたしと結びついておられます。それは,彼らが完全にされて一つになり,あなたがわたしを遣わされたこと,そして,わたしを愛してくださったと同じように彼らを愛されたことを世が知るためです。

24 父よ,わたしに与えてくださったものについては,わたしのいる所に彼らも共にいて,わたしに与えてくださった栄光を見るようにと願います。あなたは世の基の置かれる前にわたしを愛してくださったからです。25 義なる父よ,確かに世はあなたを知っていませんが,わたしはあなたを知っており,これらの者たちも,あなたがわたしをお遣わしになったことを知っております。26 そしてわたしはみ名を彼らに知らせました。また[これからも]知らせます。それは,わたしを愛してくださった愛が彼らのうちにあり,わたしが彼らと結びついているためです」。

ヨハネ18章
1 これらのことを言われてから,イエスは弟子たちと共に外に出,キデロンの冬の奔流を渡って園のある所に行き,彼も弟子たちもその中に入った。2 さて,彼を裏切る者であるユダもその場所を知っていた。イエスはそこで弟子たちと何度も会合しておられたからである。3 それゆえユダは,兵士の一隊と,祭司長やパリサイ人の下役たちを連れ,たいまつやともしびや武器を携えてそこにやって来た。4 それゆえイエスは,自分に臨もうとするすべての事柄を知り,進み出て彼らに言われた,「あなた方はだれを捜しているのですか」。5 彼らは,「ナザレ人のイエスを」と答えた。[イエス]は彼らに言われた,「わたしが[その者]です」。さて,[イエス]を裏切る者であるユダも彼らと共に立っていた。

6 しかしながら,「わたしが[その者]です」と[イエス]が言われた時,彼らは後ずさりして地面に倒れた。7 それゆえ,[イエス]は彼らに再びお尋ねになった,「あなた方はだれを捜しているのですか」。彼らは,「ナザレ人のイエスを」と言った。8 イエスは答えられた,「わたしが[その者]ですと告げたではありませんか。それゆえ,あなた方の捜しているのがわたしであれば,これらの者たちは去らせなさい」。9 これは,「わたしに与えてくださった者のうち,わたしはその一人をも失いませんでした」と言われた言葉が成就するためであった。(イエスは聖書に書かれていることを成就するために行動していました。)

10 その時シモン・ペテロは,剣を携えていたので,それを抜いて大祭司の奴隷に撃ちかかり,その右の耳を切り落とした。その奴隷の名はマルコスといった。11 しかしイエスはペテロに言われた,「剣をさやに納めなさい。父がわたしにお与えになった杯,わたしはそれをぜひとも飲むべきではありませんか」。

12 その時,兵士の一隊と軍司令官,そしてユダヤ人の下役たちはイエスを捕らえて縛り,13 まずアンナスのところに引いて行った。彼はカヤファのしゅうとであり,[カヤファ]はその年に大祭司だったのである。14 このカヤファこそ,一人の人が民のために死ぬのがみんなの益になる,とユダヤ人たちに忠言した者であった。

15 さて,シモン・ペテロ,それにもうひとりの弟子がイエスのあとに付いて行った。その弟子は大祭司に知られており,イエスと共に大祭司[の家]の中庭に入って行ったが,16 ペテロは外で戸口のところに立っていた。それで,大祭司に知られていたほうの弟子は,出て行って戸口番に話し,ペテロを中に入れた。

17 その戸口番である下女がその際ペテロに言った,「あなたもこの人の弟子の一人ではないでしょうね」。彼は,「違います」と言った。18 さて,奴隷や下役たちは,寒かったので炭火をおこし,まわりに立って身を暖めていた。ペテロも彼らと一緒に立って身を暖めていた。

19 それから,祭司長はイエスに,その弟子たちや教えについて質問した。20 イエスは彼に答えられた,「わたしは世に対して公に話してきました。わたしはいつも会堂や神殿で教えました。そこはすべてのユダヤ人が集まるところであり,何事もひそかには話しませんでした。21 なぜわたしに質問するのですか。わたしの話したことを聞いた人たちに質問しなさい。ご覧なさい,これらの人たちが,わたしの言ったことを知っています」。

22 彼がこれらのことを言うと,そばに立っていた下役の一人がイエスの顔に平手打ちを加え,「祭司長に向かってそんな答え方をするのか」と言った。23 イエスは彼に答えられた,「わたしの話したことが間違いであるなら,その間違いについて証ししなさい。しかし,正しいのであれば,なぜわたしを打つのですか」。

24 それからアンナスは,彼を縛ったまま大祭司カヤファのもとに送った。 25 さて,シモン・ペテロは立って身を暖めていた。すると人々が彼に言った,「あなたも彼の弟子の一人ではないだろうな」。彼はそれを否定して,「違います」と言った。26 大祭司の奴隷の一人,それはペテロが耳を切り落とした男の親族であったが,[その者が]こう言った。「わたしはあなたが園で彼と一緒にいるのを見たではないか」。27 しかし,ペテロは再びそれを否定した。すると,すぐにおんどりが鳴いた。(ニサン14日の夜明け近く)

28 そこで彼らはイエスをカヤファのところから総督の官邸に引いて行った。それはもう早朝 (ニサン14日, Mr 15:1) であった。しかし彼ら自身は総督の官邸内に入らなかった。身を汚さずに過ぎ越しの食事 (ニサン15日, 無酵母パンの祭り初日の無酵母パンと焼いた子羊の肉の過ぎ越しの食事) をしようとしてであった。

29 それで,ピラトは彼らのいる外に出て来て,こう言った。「あなた方はこの人に対してどんな告訴をするのか」。30 それに答えて彼らは言った,「この男が悪を行なう者でなかったなら,わたしたちはあなたに引き渡したりはしなかったでしょう」。31 そこでピラトは彼らに言った,「あなた方が自分で彼を連れて行き,自分たちの律法にしたがって裁くがよい」。ユダヤ人たちは彼に言った,「わたしたちが人を殺すことは許されていません」。32 これは,イエスがどんな死を遂げることになっているかを示して言われた言葉が成就するためであった。(神が定めたことは必ず成就します。蛇の胤と女の胤の間には敵意が定められてあります。)

33 それで,ピラトは再び総督の官邸内に入り,イエスを呼んで,こう言った。「あなたはユダヤ人の王なのか」。34 イエスは答えられた,「あなたがそう言うのは,あなた自身の考えからですか。それとも,ほかの者がわたしについて告げたからですか」。35 ピラトは答えた,「わたしはユダヤ人ではないではないか。あなた自身の国民と祭司長たちが,あなたをわたしに引き渡したのだ。あなたは何をしたのか」。

36 イエスは答えられた,「わたしの王国はこの世のものではありません。わたしの王国がこの世のものであったなら,わたしに付き添う者たちは,わたしをユダヤ人たちに渡さないようにと戦ったことでしょう。しかし実際のところ,わたしの王国はそのようなところからのものではありません」。(ここで示されているように、イエスは政治的、宗教的を問わず、いかなる地上の組織や国家権力も持っていません。)

37 それでピラトは彼に言った,「それでは,あなたは王なのだな」。イエスは答えられた,「あなた自身が,わたしが王であると言っています。真理について証しすること,このためにわたしは生まれ,このためにわたしは世に来ました。真理の側にいる者はみなわたしの声を聴きます」。38 ピラトは彼に言った,「真理とは何か」。

そして,こう言ってから,彼は再びユダヤ人たちのところに出て行って,こう言った。「わたしは彼に何の過失も見いださない。39 それに,あなた方には,過ぎ越しの際 (ニサン15日, 過ぎ越しの食事にあずかる無酵母パン祭りの初日。そしてニサン15日はニサン14日の日没から始まります。) わたしが一人の者を釈放する習慣がある。それであなた方は,わたしがユダヤ人の王を釈放するように願うのか」。40 すると彼らは再び叫びたてて言った,「この男ではない,バラバを!」 バラバというのは強盗であった。

ヨハネ19章
1 こうしてその時,ピラトはイエスを捕らえてむち打った。2 そして,兵士たちはいばらで冠を編んで彼の頭に載せ,紫の外衣をその身にまとわせた。3 それから彼のもとに寄って来て,「こんにちは,ユダヤ人の王よ!」と言うのであった。また,彼の顔に平手打ちを加えたりした。

4 それからピラトは再び外へ行って,彼らにこう言った。「見なさい。わたしがこの者に何の過失も見いださないことを知らせるため,わたしはこの者をあなた方のところに連れ出す」。5 こうしてイエスは,とげのついた冠と紫の外衣を身に着けて外に出て来た。そして[ピラト]は彼らに言った,「見よ,この人だ!」

6 しかし,彼を見ると,祭司長や下役たちは叫びたてて言った,「杭につけろ! 杭につけろ!」 ピラトは彼らに言った,「あなた方が自分たちで連れて行って杭につけるがよい。わたしは彼に何の過失も見いださないのだ」。7 ユダヤ人たちは彼に答えた,「わたしたちには律法がありますが,その律法によれば,彼は死に当たる者です。自分を神の子としたからです」。

8 それで,このことばを聞いて,ピラトはいっそう怖くなった。9 そして,再び総督の官邸内に入って,イエスに言った,「あなたはどこから来ているのか」。しかしイエスは彼に何の答えもされなかった。10 ゆえにピラトは言った,「あなたはわたしに話さないのか。わたしにはあなたを釈放する権限があり,また杭につける権限もあることを知らないのか」。11 イエスは彼に答えられた,「上から与えられたのでない限り,あなたはわたしに対して何の権限もないでしょう。このゆえに,わたしをあなたに引き渡した人にはさらに大きな罪があります」。

12 こういうわけで,ピラトは彼を釈放する方法をいろいろと求めた。しかしユダヤ人たちは叫びたてて言った,「この[男]を釈放するなら,あなたはカエサルの友ではありません。自分を王とする者は皆,カエサルに反対を唱えているのです」。

13 それでピラトは,こうした言葉を聞いてから,イエスを外へ連れ出し,自分は“石の舗装”,ヘブライ語でガバタと呼ばれる場所にある裁きの座に着いた。14 さて,それは過ぎ越しの準備[の日] (ニサン14日, 過ぎ越しの子羊を屠り、その血を戸柱に跳ねかける日) であり,第六時 (ローマ時間 6:00 am, ユダヤ時間 12:00 正午 , マルコ 15:25) ごろであった。それから彼はユダヤ人たちに言った,「見なさい。あなた方の王だ!」

15 しかし彼らは,「取り除け! 取り除け! 杭につけろ!」と叫びたてた。ピラトは彼らに言った,「わたしがあなた方の王を杭につけるのか」。祭司長たちは答えた,「わたしたちにはカエサルのほかに王はいません」。16 こうしてその時,[ピラト]は[イエス]を彼らに引き渡して杭につけさせることにした。

そこで彼らはイエスの身を引き取った。17 そして,[イエス]は自分で苦しみの杭を負いつつ,いわゆる“どくろの場所”へと出て行かれた。そこはヘブライ語でゴルゴタと呼ばれる所である。18 そして,その所で彼らは[イエス]を杭につけた (ニサン14日 9:00 am, マルコ 15:25)。またほかに二人の男を彼と共に[杭につけ],一人をこちら側,一人を向こう側にし,イエスを真ん中にした。

19 ピラトはまた,[罪]名を書いて,それを苦しみの杭の上につけた。それは,「ユダヤ人の王ナザレ人イエス」と書かれていた。20 そのため,大勢のユダヤ人がこの[罪]名を読んだ。イエスが杭につけられた場所は都に近かったからである。それはヘブライ語,ラテン語,ギリシャ語で書かれていた。

21 しかしながら,ユダヤ人の祭司長たちはピラトに言いだした,「『ユダヤ人の王』とではなく,この者は『ユダヤ人の王である』と言ったと書いてください」。22 ピラトは答えた,「わたしが書いたことはわたしが書いたことだ」。

23 さて,イエスを杭につけてから,兵士たちは彼の外衣を取り,四つに分けて,各兵士にその一つずつとし,また内衣を[取った]。しかし,内衣は縫い目がなく,上からそっくり織ったものであった。24 そこで彼らは互いに言った,「これは裂かずにおき,だれのものとするか,くじで決めることにしよう」。これは次の聖句が成就するためであった。「彼らはわたしの外衣を自分たちの間で配分し,わたしの着衣の上でくじを引いた」。こうして兵士たちはほんとうにこれらの事を行なったのである。(この出来事は、神が事前に計画したことは何でも実現できることを示しています。ですから、神がアダムの子孫に約束したすべての祝福は、サタンの敵意の中でも必ず実現すると確信できます。)

25 しかしながら,イエスの苦しみの杭のそばには,その母と,母の姉妹,[そして]クロパの妻マリアとマリア・マグダレネが立っていた。26 それでイエスは,自分の母と,自分の愛する弟子がそばに立っているのをご覧になり,母にこう言われた。「婦人よ,見なさい,あなたの子です!」27 次に,その弟子に言われた,「見なさい,あなたの母です!」 それで,その時から,その弟子は彼女を自分の家に引き取った。

28 この後,イエスは,それまでにすべての事が成し遂げられたのを知って,聖句が成し遂げられるために,「わたしは渇く」と言われた。29 そこには,酸いぶどう酒のいっぱい入った器が置いてあった。それで彼らは,その酸いぶどう酒をじゅうぶん含ませた海綿をヒソプ[の茎]に付け,それを彼の口もとに持って行った。30 さて,酸いぶどう酒を受けてから,イエスは,「成し遂げられた!」と言われた。そして,頭を垂れ,[ご自分の]霊を引き渡された。(ニサン14日 15:00 pm ごろ)

31 その後ユダヤ人たちは,それが準備[の日] (ニサン14日, 過ぎ越しの子羊を屠り、その血を戸柱に跳ねかける日) であったので,安息日に体が苦しみの杭に残ったままにならないようにと(その安息日は大いなる日だった (西暦 33 年のニサン15日は、週ごと、季節ごとの、つまり二重の安息日でした。) のである),彼らの脚を折って,[死体]を取りのけてくれるようピラトに頼んだ。

32 それゆえ兵士たちが来て,彼と一緒に杭につけられた最初の[男]の両脚,そしてもうひとりの[男]の[両脚]を折った。33 しかし,イエスのところに来てみると,彼はすでに死んでいたので,彼の脚は折らなかった。34 けれども,兵士の一人がその脇腹を槍で突き刺した。すると,すぐに血と水が出た。

35 そして,[それを]見た者が証しをしたのであり,その証しは真実である。その者は,あなた方も信じるために,自分が真実を告げていることを知っている。36 事実,これらの事は次の聖句が成就するために起きたのである。「その骨は一つも砕かれないであろう」。37 そしてまた,別の聖句は言う,「彼らは自分たちが刺し通した者を見つめるであろう」。(神は自らの意志を成就するためにすべてを動かしています)

38 さて,こうしたことの後,アリマタヤから来ているヨセフ,それはイエスの弟子でありながらユダヤ人たちに対する恐れからひそかな[弟子]となっていた者であるが,[その者が,]イエスの体を取りのけさせて欲しいとピラトに頼んだ。それでピラトは許可を与えた。そこで彼は来て,[イエス]の体を取りのけた。39 最初の時には夜に[イエス]のところに来たニコデモも,一巻きの没薬とじん香,百ポンドほどのものを持ってやって来た。40 こうして彼らはイエスの体を取り,埋葬に備えて行なうユダヤ人の習慣どおり,それを香料と一緒に巻き布で巻いた。41 ところで,彼が杭につけられた場所には園があり,園の中には新しい記念の墓があった。それはまだだれをも横たえたことのないものであった。42 そこで,ユダヤ人の準備[の日] (ニサン14日, 過ぎ越しの子羊を屠り、その血を門柱にい跳ねかける日, すぐ続くニサン15日の過ぎ越しの食事の準備の日) であった都合で,彼らはイエスをそこに横たえた。その記念の墓が近かったからである。

ヨハネ20章
1 週の最初の日 (ニサン16日),マリア・マグダレネは,朝早くまだ暗いうちに記念の墓に来た。そして,石がすでに記念の墓から取りのけられているのを見た。2 それで彼女は,シモン・ペテロ,そしてもう一方の弟子でイエスが愛情を持っておられた者のところに走って来て,こう言った。「人々が主を記念の墓から取り去ってしまい,どこに置いたのか分かりません」。

3 そこで,ペテロともう一方の弟子は出て行って記念の墓に向かった。4 そして,二人は一緒に走りだした。しかし,もう一方の弟子のほうが速く走ってペテロより先になり,最初に記念の墓に着いた。5 そして,前方にかがんでみると,巻き布の置いてあるのが見えたが,中には入らなかった。

6 次いでシモン・ペテロが彼のあとから来たが,彼は記念の墓の中に入った。そして,巻き布が置いてあり,7 また,彼の頭にのせてあった布が巻き布と一緒には置いてなく,一つの場所に別にして巻いてあるのを目にした。

8 こうしてその時,記念の墓に最初に着いたもう一方の弟子も中に入り,彼も見て,信じた。

9 彼らはまだ,[イエス]が必ず死人の中からよみがえるという聖句を悟っていなかった。10 それで弟子たちは自分の家に戻って行った。(いくつかの聖典の理解は、出来事が起こる前ではなく、起こった後に与えられます。)

11 しかしながら,マリアは外で,記念の墓の近くに立ったまま泣いていた。そして,泣きながら,記念の墓の中をのぞこうとして前方にかがむと,12 白衣の二人のみ使いが,イエスの体の置いてあった所に,一人は頭のところ,一人は足のところに座っているのが目にとまった。

13 すると彼らが言った,「婦人よ,なぜ泣いているのですか」。彼女は言った,「人々がわたしの主を取り去ってしまい,どこに置いたのか分からないのです」。14 こう言ったあと,彼女が振り返ると,イエスの立っておられるのが目にとまったが,彼女はそれがイエスであることを悟らなかった。

15 イエスは彼女に言われた,「婦人よ,なぜ泣いているのですか。だれを捜しているのですか」。彼女は,それが園丁であると思って,こう言った。「だんな様,もしあなたが[主]を運び去ったのでしたら,どこに置いたのかおっしゃってください。わたしが引き取りますから」。

16 イエスは彼女に言われた,「マリア!」 彼女は向き直ると,ヘブライ語で,「ラボニ!」と言った。(これは「師よ!」という意味である。)

17 イエスは彼女に言われた,「わたしにすがり付くのはやめなさい。わたしはまだ父のもとへ上っていないからです。しかし,わたしの兄弟たちのところに行って,『わたしは,わたしの父またあなた方の父のもとへ,わたしの神またあなた方の神のもとへ上る』と言いなさい」。

18 マリア・マグダレネはやって来て,「わたしは主を見ました!」,そしてこのことをわたしに言われました,と弟子たちに伝えた。

19 それから,週の最初であるその日遅く (ニサン16日),しかも,弟子たちのいた所はユダヤ人たちに対する恐れのため戸に錠がかけてあったのに,イエスは来て彼らの真ん中に立ち,「あなた方に平安があるように」と言われた。

20 そして,そう言われたあとで,自分の両手と脇腹を共に彼らにお見せになった。こうして弟子たちは主を見て歓んだ。21 それでイエスは彼らに再び言われた,「あなた方に平安があるように。父がわたしをお遣わしになったと同じように,わたしもあなた方を遣わします」。22 そしてこう言われたあとで,彼らに[息を]吹きかけて言われた,「聖霊を受けなさい。23 あなた方が人の罪を許すなら,それは許されています。あなた方が人の[罪]をとどめておくなら,それはとどめておかれます」。

24 しかし,十二人の一人で,“双子”と呼ばれるトマスは,イエスが来られた時,彼らと一緒にいなかった。25 そのためほかの弟子たちは,「わたしたちは主を見た!」と彼に言うのであった。しかし彼は言った,「その手にくぎの跡を見,わたしの指をくぎの跡に差し入れ,手をその脇腹に差し入れない限り,わたしは決して信じない」。

26 さて,八日後,弟子たちは再び屋内におり,トマスも彼らと一緒にいた。戸には錠がかかっていたのに,イエスは来て彼らの真ん中に立ち,「あなた方に平安があるように」と言われた。27 次いで彼はトマスに言われた,「あなたの指をここに当てて,わたしの手を見,あなたの手を持って来て,わたしの脇腹に差し入れなさい。そして,信じない者ではなく,信じる者となりなさい」。28 それに答えてトマスは彼に言った,「わたしの主,そしてわたしの神!」 29 イエスは彼に言われた,「あなたはわたしを見たので信じたのですか。見なくても信じる者は幸いです」。

30 確かにイエスは,弟子たちの前でほかにも多くのしるしを行なわれたのであるが,それはこの巻き物には記されていない。31 しかし,これらのことは,イエスが神の子キリストであることをあなた方が信じるため,そして,信じるゆえにその名によって命を持つために記されたのである。

ヨハネ21章
1 こうしたことの後,イエスはティベリアの海のところで弟子たちに再びご自分を現わされた。だが,その現われはこうであった。2 シモン・ペテロ,“双子”と呼ばれるトマス,ガリラヤのカナから来たナタナエル,ゼベダイの子たち,それにあと二人の弟子が一緒にいた。3 シモン・ペテロが,「わたしは漁に行ってくる」と言った。彼らは,「わたしたちもあなたと一緒に行こう」と言った。彼らは出て行って舟に乗ったが,その夜じゅうかかって何も捕れなかった。

4 しかし,ちょうど朝になりかけたころ,イエスが浜辺に立たれた。もとより弟子たちは,それがイエスであることを悟らなかった。5 そこでイエスは彼らに言われた,「幼子たちよ,食べる物を何も持っていないのですね」。彼らは,「ありません!」と答えた。6 [イエス]は彼らに言われた,「網を舟の右側に投じなさい。そうすれば,[幾らか]見つかるでしょう」。そこで彼らは[網]を投じたが,魚があまりに多くて,もはやそれを引き寄せることができなかった。

7 それゆえ,イエスが愛しておられたかの弟子が,「主だ!」とペテロに言った。それでシモン・ペテロは,それが主だと聞くと,裸だったので自分の上っ張りをまとい,海に飛び込んだ。8 しかしほかの弟子たちは,陸からそれほど遠くなく,わずか三百フィートほどだったので,魚の入った網を引きながら,小舟でやって来た。

9 しかしながら,彼らが陸に上がった時,そこに炭火があり,その上に魚が置いてあり,またパンがあるのを見た。10 イエスは彼らに言われた,「あなた方がいま捕った魚を少し持って来なさい」。11 それゆえシモン・ペテロは[舟に]乗り,大きな魚がいっぱい,百五十三匹も入った網を陸に引き寄せた。しかし,それほど多かったのに,網は破れなかった。

12 イエスは彼らに,「さあ,朝食を取りなさい」と言われた。弟子たちのうち,「あなたはどなたですか」とあえて尋ねる者は一人もいなかった。それが主であることを知っていたからである。13 イエスは来て,パンを取って彼らに与え,魚も同じように[された]。14 イエスが,死人の中からよみがえらされたのち弟子たちに現われたのは,これで三度目であった。

15 さて,彼らが朝食を済ませた時,イエスはシモン・ペテロに言われた,「ヨハネの子シモン,あなたはこれら以上にわたしを愛していますか」。[ペテロ]は彼に言った,「はい,主よ,わたしがあなたに愛情を持っていることをあなたは知っておられます」。[イエス]は彼に言われた,「わたしの子羊たちを養いなさい」。16 再び,二度目に彼に言われた,「ヨハネの子シモンよ,あなたはわたしを愛していますか」。[ペテロ]は彼に言った,「はい,主よ,わたしがあなたに愛情を持っていることをあなたは知っておられます」。[イエス]は彼に言われた,「わたしの小さな羊たちを牧しなさい」。17 [イエス]は彼に三度目に言われた,「ヨハネの子シモンよ,あなたはわたしに愛情を持っていますか」。彼が三度目に,「わたしに愛情を持っていますか」と言ったので,ペテロは悲嘆した。そして彼に言った,「主よ,あなたはすべてのことを知っておられます。わたしがあなたに愛情を持っていることを,あなたは気づいておられます」。イエスは彼に言われた,「わたしの小さな羊たちを養いなさい。

18 きわめて真実にあなたに言いますが,もっと若かった時,あなたはいつも自分で帯をして,自分の欲する所を歩き回りました。しかし年を取ると,あなたは手を伸ばし,ほかの[人]があなたに帯をさせ,あなたの望まない所に連れて行くでしょう」。19 これは,[ペテロ]がどのような死によって神の栄光を表わすかを示すために言われたのである。それで,そう言ってから,「引き続きわたしのあとに従いなさい」と彼に言われた。

20 ペテロが振り向くと,イエスが愛しておられた弟子で,晩さんの折にもその胸もとにそり返って,「主よ,あなたを裏切るのはだれですか」と言った者があとから付いて来るのが見えた。21 そこで,彼を見た時,ペテロはイエスに言った,「主よ,この[人]は何を[する]のでしょうか」。22 イエスは彼に言われた,「わたしが来るまで彼のとどまることがわたしの意志であるとしても,それがあなたにどんな関係があるでしょうか。あなたは引き続きわたしのあとに従いなさい」。(王国の子たちは、地上のピラミッドシステム中に組織化されるのではなく、個々に主に従うことになっています。)

23 その結果,その弟子は死なない,という話が弟子たちの間に伝わった。しかしイエスは,彼は死なないと言われたのではなく,「わたしが来るまで彼のとどまることがわたしの意志であるとしても,それがあなたにどんな関係があるでしょうか」と[言われた]のである。

24 これが,これらの事について証しし,またこれらのことを書いた弟子であり,わたしたちは彼の証しが真実であることを知っている。

25 実に,イエスの行なわれた事はほかにも多くあるが,仮にそれが事細かに記されるとすれば,世界そのものといえども,その書かれた巻き物を収めることはできないであろうと思う。

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自己紹介



1972年にバプテスマを受けてクリスチャンになりました。

その後、エホバの証人として宣教活動を40年ほど行い、長老のときに「ものみの塔協会」の方針と異なる立場をとったために長老を削除されました。

長年のエホバの証人としての人生は「ものみの塔協会」の崇拝の様式とキリストの教えとの不調和を経験することになり、「ものみの塔協会」の始まりからの歴史をインターネットを用いて調査し、この団体がロスチャイルド資本によるシオニズム運動の器として始まったこと、宗教組織を利用したロスチャイルド資本の国際投資企業であること、小児性愛者の不適切な扱い、預言や教理上の破綻などの腐った実を知りました。

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